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 18:29分、この車両は東陽町を発車した。日頃の満員電車に慣れているためか、車内は随分と快適に感じられる。スーツケースを持ったまま座れるほどのゆとりがあるのだが、キャスターが少しばかり邪魔に思える。普段つけていたイヤホンを今日はつけていなかった。電車の中ではノイズキャンセルされた音がデフォルトとなっていたため、こんなに車内は音が大きいものなのかと改めて気がついた。父は毎年大晦日の前日に、オーケストラをバックにつけてのライブを六本木EXシアターで開催している。もうライブは開演しているであろうか。今日の私の役目は、終演後酔っ払った父を実家まで車で送り届けることで、そのついでに私も帰省する。つまり、私はそれまでに六本木に着けばいいのだが、さすがに全く見ないのもどうかと思い、後半くらいから会場に入れる時間帯に家を出た。日記はいつもPCで書いてるのだが、電車内でPCを広げるのも、仰々しいので仕方がなくスマートフォンで書いている。画面上のフィルムのヒビが時折入力している親指に引っかかり邪魔をする。スマホの画面が持ち主の精神状態を表すと言う人もいるが、ほんとにそうであろうか。ただ、何ヶ月もひび割れを放置していることは確かなので、少なくとも性格は現れそうである。
 今日の日付を見ると、だんだん地元に帰省する期間が短くなっていることを実感する。別に地元が嫌いとか居心地が悪いとか、そういうネガティブな感情はそこには無い。生活基盤の移行が徐々に完了に近づいているということの表れなのだろう。2023年は人生で初めて、1年を通して東京で生活した年であった。街の名前も覚え、道も覚え、空気感にも慣れつつある。けれども、富士山を見る度にそこに自分のアイデンティティを感じるし、生まれ育ったことを誇りに思う。いつまでも自分のルーツは捨てたくないし、誇って言えるようにしたいと思う。

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