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読書録「クロワさん」

クロワッサンが大好きな小林黒羽(クロワ)さんが主人公の物語。
クロワさんの11歳から81歳までを不思議なタッチの文章で描く。
かたいかたいコッペパンしか知らなかった子どものクロワさん。
はじめて食べたクロワッサンは香ばしくふわふわでやわらかで、クロワさんはまたたくまに平らげる。
その晩は夜空に輝く三日月を食べる夢を見る。
そして年月は流れ、宇宙飛行士として月へ行くことになる。
ファンタジーのような、近未来SFのような。
物語全体が夢のように美しくきらめいている。

著者 いしいしんじ 発行 進々堂(2023.12.15)

京都の老舗ベーカリーが作る、パンにまつわる小冊子シリーズ。
フリーペーパーとは思えない!
素敵な企画をありがとうございます。
パン愛あふれる物語。
クロワッサンが無性に食べたくなる。今日はクロワッサンを買おう。

本文より

夢の三日月をたらふくつめこんだおなかは、まんまるで、透明な感触をかえしてきます。

「宇宙は、数字じゃありません。自然ですよ。ネイサンが血糖値のかたまりじゃないのと同じく」

「ときどき、わたし、こんな風に思うんですよ。クロワッサンのかたちって、いつか、宇宙のたいせつな謎をとく、ささやかなカギになるんじゃないかって」

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