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こんぺい糖の蕾♯1

中庭の片隅に咲くその花の蕾は
まるで開花の時を待っているようで、、、

進路指導室
「水原里桜〜(ミズハラ リオ)」
「はい」
目の前に広げられた進路希望の紙
第一志望の欄には
"雁宮先生のお嫁さん♡"
と、記載してある
目の前で困った顔で
お説教している本人が
雁宮流(カリミヤ リュウ)先生本人
担任だ
我ながら、思い切った事をした
でも、どうしたらひとりの"女"として見てもらえるか考えた
苦肉の策だった(笑笑)
「あのな、来年受験生だぞ」
「はい、ダメですか?」
「ダメです」
即答だった
そりゃそうだ
先生、どうしたら私を見てくれますか?

あれは一年の春
中庭の花壇に咲いていた
とても不思議な形をした蕾
掃除の時間見つけて、つい見入ってしまった
まるでイチゴ味のあのチョコレートみたいな面白い形をした蕾だった
そこへ赴任したての雁宮先生が現れた
雁宮先生は
黒ブチメガネがトレードマークの
数学教師で
知的で優しい印象の先生だった
「なんだ?水原、サボりか?」
「ちがいますよ!見て下さい!面白い形の蕾」
「こ、これは...!!!」
「イチゴ味のチョコレート!」
「こんぺいとう!!」
同時だった
「こんぺいとう?」
「そう、知らないか?」
「知ってる...」
言われて見れば
似てるかも
「うまそうだな、久々に食べたくなった」
そう言いながら、雁宮先生は立ち去った
私は、このおもしろい蕾が気に入ってしまった
そして、雁宮先生の事も
どんな花が咲くのかな
後に、その花の名前は
"カルミア"だと知る

授業を終え、部活動
私はクッキング部に入部していた
本日はクッキー製作だ
クッキー作りのポイントを顧問の菊咲先生が説明している
顧問であり、家庭科の菊咲先生はとても美しい 
おっとりしていて穏やかで癒される
そして、笑顔が素敵
同性の私でも、ドキドキする
私の憧れだ
いつか、菊咲先生みたいになりたい
部活で作ったクッキー、雁宮先生に持って行く 
「先生、どうぞ」
雁宮先生は、安堵した様子で
「お、うまくできたなー今日は」
さらっと、わたしの頭をポンポンした
先生がひとつ口に入れると
ガリッと言う音がした
やってしまった
きっと卵の殻だ
そそくさと逃げる
「ごめんなさい、殻入りでした」
職員室の扉を閉めて
先生が触れた頭に手を当てる
ため息
そして、実感する
好きだな、雁宮先生が

早く大人になりたい
女として見られたい

学校の帰り道
コンビニでルージュを買った
ピンクとか淡い色じゃない
思いっきり赤いやつ
背伸びしたかったんだと思う

「お、水原!」
その帰りに偶然、雁宮先生に遭遇した
雁宮先生は、片手にお弁当をぶら下げていた
「大変ですね、男の一人暮らし」
先生は苦笑いしていた

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