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実践を通して、理論を体感する ―37期、受講真っ只中のふたりの場合

今回お話を伺ったのは、2022年度第1期(37期)のオレンジコースを受講中の富田さんと一杉さん。WSDのカリキュラムは、「基礎理論科目」「ワークショップデザイン実践科目I」「ワークショップ実践科目II」「総合科目」の4科目から構成されていますが、ちょうど折り返し地点ともいえる、ワークショップ実践科目Iを終えたタイミングで、おふたりに今まさに感じていることなどを、ざっくばらんに話してもらいました。

富田早紀 Tomita Saki
一杉元嗣 Hitosugi Mototsugu

(1)ふたりに共通するWSD受講のキーワードは、「場づくり」

普段は人事として自社の採用を担う富田さんと、お客様の人材開発・組織開発を手掛ける一杉さん。WSD受講のきっかけはそれぞれにありますが、共通するキーワードとして「場づくり」があったようです。

富田さん:受講を決めたのには、ふたつ理由があります。まず仕事の一環として、学生向けのインターンシップなどを企画するなかで、「場づくり」のスキルを高めたいというのがひとつ。それから社会人10年目になって、タイミング的にようやく何かを学ぶ余裕が出てきたというのがもうひとつです。何を学ぼうかと悩んでいるときに、会社の先輩がWSDを紹介してくれました。最初の学び直しであんまりハードすぎるのも心が折れそうだから(笑)、課題についてもかなり聞いて、イメージが鮮明になってから応募しました。

一杉さん:自分はこれまで、「生き生きする大人を増やしたい」という旗を掲げて仕事をしてきたんです。ポジティブ心理学やコーチングの勉強もしていますが、「場づくり」についても学びたいなと思ったのがWSD受講のきっかけです。修了生が友人にいて、「今まで企画してきたワークショップを理論立てて整理できて、良かったよ」と話すのを聞いて、受講を決めました。

(2)理論で学び、実践で体感した「足場かけ」「メタ認知」

理論と実践の両面からワークショップを学ぶのがWSDです。「基礎理論科目」の苅宿教授の講義で登場する理論や言葉は、その場では腹落ちしなくても、「ワークショップ実践科目I」を通じて、じわじわと頭と心に効いてきます。

一杉さん: 一番印象に残っているのは「足場かけ」の考え方です。これまでかかわってきた企業研修やコーチングの場では、YES/NOではなく自由な回答を求めるオープンクエスチョンをポンと投げて、何か気づきを促したり、考えてもらったりすることに価値をすごく感じていたんです。それはそれでいいんだけれど、制限のない問いにハードルを感じる人も確かにいて、そこに丁寧に足場をかけていく必要性については考えてこなかった。ひとりも取りこぼさない場づくりって、そこまで突き詰めて考えないとだめなんだと感じました。

富田さん:私は「メタ認知」ですね。最初の授業で苅宿先生からメタ認知の話があったのですが、「なぜ初回でメタ認知?」って不思議に思ったのもあって、すごく印象に残っています。でも1回目の実習を経て、伏線が回収されてきたというか。今は、ワークショップデザイナーにこそメタ認知が必要なんだと腑に落ちています。これまでの私自身を振り返ると、30人の学生と話をしていても、どうしても参加度合いの低いひとりに引っ張られてしまっていたなと。でもそれって、ワークショップの場を俯瞰でみると本当に一部でしかないんですよね。個に引っ張られがちな自分をメタ認知しながら、場の全体を見ることが大切なんだなって。

一杉さん:ああ、「足場かけ」と「メタ認知」は、つながっているかも。苅宿先生が「いきなりのニックネーム呼びをイヤだなと思ったら、その感覚を大事にしてください」とも言っていたじゃないですか。つい「この違和感は自分だけかも」って思いがちだけど、イヤだと感じる自分というメタ認知を大事にすると、その感覚が丁寧な足場かけにつながっていくのかなと思いました。

(3)グループワークで実際に企画、実施した「究極の自己紹介ワークショップ」

「ワークショップ実践科目I」は、5名程度でのグループワークがメインとなり、実際にワークショップを企画し、実習を行っていきます。今回各グループに企画してもらうテーマは「究極の自己紹介ワークショップ」でした。

一杉さん:「究極の自己紹介」って考えたとき、新しいことでなくても「あ、俺ってこういう奴だな」みたいな、ちょっとした気づきを得ることを目標にしたんです。それで行きついたのが、「海と山、どっちが好き?」くらいの単純な二択から、他者との対話を通して自身を紐解いていくプログラム。例えば、「山が好き」と一口に言っても、緑の山に癒されたいのか、雪山でスキーをしたいのかで、結構違うじゃないですか。他者と対話しながら、山が好きというその背後にあるものへの気づきを目指したんです。ある程度できていたとは思うんですけれど、講師のフィードバックでは、自己紹介としてストレートなプログラムだと。「思わず夢中になってワークにのめり込んでいたら、結果として自己紹介ができちゃっていた」というような仕掛け、「ずらしの要素」を入れ込むことにチャレンジしてほしいと言われましたね。

「海」と「山」どっちが好き?と単純な二択から自分自身を紐解いていくプログラム

富田さん:私たちのグループが企画したワークショップも、やろうとしていることは似ていたと思います。他者の視点を通して、自分に気づくというか。属性とか肩書じゃなくて、人となりを知ることを目指して、まず個人で「心が震えるほど楽しい体験」を考えてもらって、それを別の人が他己紹介し、どの人の紹介かを当てるみたいなゲーム性を持たせたワークをデザインしました。想像以上に参加者がのめり込んで、グループメンバーも一緒に楽しくやれたので、良かったと思っています。

一杉さん:あのゲーム性は確かに面白かった! こっちは企業人ばっかりのグループだったこともあって、そういう遊びの要素とか仕掛けに向き合おうとしてなかったんですよね。目的までの最短距離を合理的に考えてしまうというか。ただ、それもまるっきり悪いとは思っていないんです。ゲーム的な仕掛けに対して「何のためにやるの? なんかイヤ」という感覚になってしまう恐れもあるから。参加者を見ながら、バランスをちゃんと考えないといけないのかなとは思っています。

富田さん:最短距離を求める感覚、よく分かります。私たちのグループは、もう前提が全然違って、そもそもの「自己紹介ってなんだ?」っていう目線合わせにすごい時間を使いましたね。

一杉さん:そこに時間をちゃんと割いたんだ! でもうちのグループもバラバラで、前提は本当に合わなかったよ(笑)

富田さん:「こんなに合わないもの?」ってね(笑)。所属している組織、社風もあるし、それぞれにこだわりもあるから。でも、大変だったけど、その分楽しかった!

大変だったけど楽しさを共有したグループメンバー

(4)「ワークショップ実践科目II」で見つけたい、自身の違う役割・チャネル

WSDもいよいよ後半戦。「ワークショップ実践科目II」では、もう一度、別グループでのワークショップ企画~実習を繰り返していきます。ワークショップ実践科目IIに向けて、一杉さん、富田さんそれぞれ、チャレンジしてみたいことがあるようです。

一杉さん:やっぱりグループとしての合意形成を丁寧にしたいです。ちゃんとグループ全員のWILLがこもったワークショップをつくりたいし、なにかしらの貢献をしたいなって思いますね。あ、ふと思ったのは、ちょっと前回と違う役割を担ってみたいかな。

富田さん:それ、私も思いました! 素の私はアイデアメーカーではないので、実践IIではそこにチャレンジしてみるのもありかなと思っています。今回、実践Iを振り返ってみると、一連のグループワークがまさに合意形成のワークショップだったなと思って。「違いがある。だから対立する」じゃなくて、共通項を見つけて納得解を探っていく。実践Iでは無意識にやっていたことだけれど、きちんと意識して、違う役割・違うチャネルを見つけられるといいかなって思います。

一杉さん:うん、実践IIも面白くなりそうだ!

「ワークショップをワークショップで学ぶ」というWSDの醍醐味を体感してくれたようで、とてもうれしく思います! サキさん、もっちゃん、ワークショップ実践科目IIも楽しみながら学んでいきましょう!