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実践者としての学びは続く―37期、修了間近のふたりの場合

前回の記事「実践を通して、理論を体感する ―37期、受講真っ只中のふたりの場合」では、約3ヶ月のWSD講座のちょうど折り返し地点を迎えた、37期オレンジコースの富田さんと一杉さんに話を聞きました。今回は、その続編。「基礎理論科目」「ワークショップ実践科目I」「ワークショップ実践科目II」を終え、通学対面授業も残り1回となったタイミングに改めて、おふたりに今、感じていることなどを聞きました。

富田早紀 Tomita Saki 
一杉元嗣 Hitosugi Mototsugu

(1)ワークショップ実践科目Iとは違う、オンラインでの企画実践

「ワークショップ実践科目I」「ワークショップ実践科目II」と2回繰り返す実践のうち、1回目を対面、2回目はオンラインで行っていくのがオレンジコースの大きな特徴です。おふたりとも「ワークショップ実践科目II」では、オンラインだからこそ、2回目だからこその学びがあったようです。

一杉さん:もともと対面好きというのはあるんですけれど、いわゆる「場の力」ってあると思うんですよ。例えばグループワークをしているとき、対面の場だとグループの垣根を越えて、何かしらの影響を受け合うみたいな。それがオンラインだと、ブレイクアウトルームに入ったとたんに世界がぶつ切りになって、化学反応的なことが起きづらいなあと思うんです。でも今回、zoomのバーチャル背景とかエフェクトなんかを使って、オンラインだからこその面白さを追求している実習参加者を目の当たりにして。どっちもありというか、目的によってだなあと思うようになりました。

富田さん:ブレイクアウトルームの分断もね、逆に良い時もあるよね。周りの悪い影響を受けない、及ぼさないって意味で。オンラインってことでいうと、ITリテラシー問題については、どのグループの企画打ち合わせでも、紛糾してたんじゃないかなと思います。タイピングにも不自由さを感じる人もいるなかで、どのリテラシーの人に合わせるか。私も一杉さんも普段からパソコンに慣れているけど、それが当り前じゃないというか、当たり前を当たり前だと思っちゃいけないってことに気づきましたね。実践科目IIの実習テーマってところでは、そうですね…「グループでの作品づくりを通して、参加者間の関係性構築を目指すオンラインワークショップ」って聞いたときどうだった? 悩まなかった?

一杉さん:“グループでの作品づくりを通して、参加者間の関係性構築を目指す”っていう、その言葉の意味付けを自分たちでやらないといけないっていうのが、もう一番のハードルだった! 作品づくりのアウトプットってどの程度なのか、関係性構築ってどの程度を求めるのか、その言語化、目線合わせにものすごいパワーがかかって、いやもう大変だった。何度も話し合いが行ったり来たりして、実践科目Iの「究極の自己紹介ワークショップ」より確実にハードルは上がったと思ったね。

富田さん:うん、私もそう思った。実践科目Iのときに、一杉さんのグループは前提の目線合わせにあまり時間を割かなかったって言っていたけど、今回はやったのね! 私たちもどのレベル感の作品、関係性づくりなのか、相当行ったり来たりしたよ。でもそこの言語化、すり合わせができてからは、企画もブレなくなったから、やっぱり大事なプロセスだったんだなと思う。

(2)映像を活用したファシリテーションの学びで見えてきたこと

「ワークショップ実践科目II」は、ファシリテーションに重きを置いたカリキュラムになります。自分たちの企画したワークショップ参加者の様子をつぶさに観察したり、実習での自身のファシリテーションを分析したりと、録画映像を活用しながら学びを深めていきます。

一杉さん:録画映像でひとりの参加者だけに集中して観察したとき、実際の現場で見ていたはずなのに、スルーしていたことがたくさんあって。普段、どれだけ意識を分散させているのかってことに驚いた。なにか言いたそうな参加者の顔もスルーしてて、「こんな顔してたのに、声かけてなかった……」とか。改めて、自分のファシリテーション映像を見たときも、言ってみればzoomって自分の顔もずっと映っているのに、まったく当日は目に入ってなかった。映像に映った自分は、ものすごい作り笑顔でした(笑)

富田さん:私は常々、人の顔を見ちゃうんですよ。気になって仕方がないタイプで。だから、参加者を観察する映像には「ああ、そうだったよね」という確認のほうが大きかったけれど、でも自分のファシリテーションを映像で振り返ったときには、私も驚いた。目がものすごく泳いで、焦ってる自分がいたから。こういう観察はなかなかできないから、ありがたかったですね。

一杉さん:人のことは見えるけど、自分のことは見えてないってケースもあるのか。仕事のときの自分もこんな感じだったら、やだなって思っちゃった。露骨に明るくて、自然さがまったくない……

富田さん: 自分ではそう見えても、周りは気づいてないかもよ(笑)

一杉さん:それならいいや(笑)

(3)丁寧な合意形成に愚直に向き合った「ワークショップ実践科目II」

「ワークショップ実践科目I」を終えたばかりのふたりは、新しいグループメンバーとの「ワークショップ実践科目II」に向けて、「合意形成を丁寧にしたい」「実践Iとは違う役割、チャネルを見つけたい」と話してくれていました。「ワークショップ実践科目II」を終えた今、どのように感じているのでしょうか。

一杉さん: 合意形成については丁寧にやろうって決めていたし、実際できたとは思うけれど、実践科目Iと比較すると各段に大変だった。与えられたワークショップテーマが難しかったというのもあるけれど、実践Iの学びを活かしたいっていうグループメンバーのこだわりがすごく強くて。自分のこだわりを机上に出す分、グループメンバーのこだわりも大事にしようって思っていたし、相手を説得するのもなんか違うなと。だから、合意形成にはめちゃくちゃ時間がかかったけど、でもそのぶん学びも大きかった。みんなが大事にしたいことを統合できた感、やりきった感はあるかも。どう?

富田さん:たしかに「もう、これでよくない?」っていう人は、私のグループにもいなかった。でも、どうなんだろう……みんなの納得解ではあったと思うのよ。でも、ものすごく感性寄りの人と、論理寄りの人がミックスされたグループだったから、全員の大事にしたいことをすべて盛り込めたかというと、悩ましいかも。もちろん、納得解ではあるのだけれど。

一杉さん:なるほどね。今の感性と論理ってところでいうと、実践Iのグループメンバーの中では、自分がちょうど真ん中あたりの立ち位置だったのね。でも、今回は一番、感性寄りな感じで、よりロジカルなメンバーの中で感覚的な発言をする役割だったかも。

富田さん:それでいうと、今回、私がちょうど真ん中だった感じ。だから、話し合いにズレがおきないように感性の人の言葉と、論理の人の言葉の通訳みたいなことをやっていた立ち位置だった。実践Iのときと基本的な役割・チャネルは変わらないんだけど、グループメンバーによって与える影響は違うっていうのはあったかも。

(4)いよいよ修了間近。目指す「ワークショップデザイナー像」とは?

WSDも「総合科目」をもって修了、晴れてワークショップデザイナーとして世に出ていくことになります。その日も間近に迫る中、最後におふたりが目指す「ワークショップデザイナー像」について聞いてみました。

富田さん:多くのインプットを整理しきれてなくて、すぐにこれと言える感じではないんですが……やっぱり「場づくり」みたいな言葉が、当初よりしっくりきてる気がします。誰かと誰かの関わり、相互作用によって生まれる何かがワークショップの魅力だなって個人的に思うので、相互作用が生み出せるワークショップデザイナーになっていたい。これからもしっかりと経験サイクルを回していくことで、将来的には相互作用の専門家にたどりつけるかな、と思います。

一杉さん:ワークショップって、もちろんスキル的な要素も必要なんだけれど、根っこの考え方というかスタンスみたいな要素も重要だなと思っていて。だからワークショップじゃない場、仕事でも日常でもワークショップデザイナーという存在でありたいかも。だれひとり取り残さないための足場架けの考え方とか、ワークショップの場づくりの考え方を自分の根っこに持ちながら、常に実践者でありたいなと思います。

修了後、それぞれの場、それぞれの日常でワークショップデザイナーとして立つ、おふたりの姿が目に浮かぶようです。サキさん、もっちゃん、3か月間、本当にお疲れ様でした! これからのご活躍を心から期待しています!