パトロンのこと

「パトロンをつけろ」
先日の個展期間中、階下の飲み屋で常連と思しき人にそう言われた。
映画のプロデューサーと名乗るその人は、アバンギャルドやアングラの時代に生を受けており、芸術に情熱を持っているようだった。

オノヨーコについて熱く語り出した時には既にボトル一本以上は飲んでいたらしい。私も私で酔っぱらいの講釈はシラフの人間よりも嘘が少ないので適当に相槌を打つと決めていた。

で、話しは巡り巡って“パトロン”に戻る。
率直な感想は
「いつの時代の話をしているんだ」
って感じ。
金銭的な不安が払拭されれば、創作に身が入るとでもいうのか。
パトロンとやらが機能していた時代がいつまでなのか知らないけど、今と税収は違うだろう。
画家に対して、愛人契約(笑)みたいな形で生きるのが幸せだと決めつけられた感じがして、私はヘラヘラ顔の裏で「この人の話に耳を貸す必要は無いな」などと思っていた。

そもそもそんなことを捲し立てるこの人は、絵を買ったことがあるのだろうか。そんな疑問も浮かんだが、余計な失望はしたくない。結局問いかけることは無かったが、少し後悔している。

ちなみにその人は、気持ち良さげにアレコレと垂れ流したのち、階上のギャラリーに足を踏み入れることなく帰った。

なかなかに学びの多い時間だった。

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