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ただ歩く、ということ

読書メーターの企画、「第7回 覆面お題小説」に参加しました。

私はこの記事のタイトルにもなっている「ただ歩く、ということ」という作品を書きました。
https://ncode.syosetu.com/n0322ib/16/
この作品がどのように生まれたのかという裏話も含めて、自分なりの「ただ歩く、ということ」について書いていきます。
(※一部、作品のネタバレを含みます)

構想を考えていた頃

年明けにイベントページとお題が発表されました。今回のお題は「バレンタインデーのエピソードを含む恋愛物語」。
自分の中で「恋愛小説」といえばやはり一番好きな市川拓司さんというイメージがあったので、そのような雰囲気の作品を書いてみたいと思いました。そこで設定を考えたものの、いまいちしっくりくる感覚がありませんでした。

歩きに出かけた

そんなある日、覆面小説のアイデアを考えようとふらっと歩きに出かけてみました。
大学時代も街歩きをするサークルに入っており、元々歩くのは好き。コロナ禍もあり、最近は「人の少なさそうな場所を歩く」ことがマイブームです。
歩くルートを決めることもありますが、降りた駅から適当に歩いてみる場合も多いです。この日は郊外のとある駅で降り、大体の方向だけ決めて歩くことにしました。

駅からしばらくは住宅地が広がっていましたが、15分くらい歩くと川に出ました。川沿いは家も少なく、空が広く感じられます。
しばらく川沿いに歩くことにして、ぼんやりと小説のアイデアを考えていたとき、この「歩くこと」自体を題材にしてみるのはどうだろうか、とふと思いつきました。

その後歩きながら、そして帰り道でストーリーのプロットを考え、ある程度まとまったところで参加表明をしました。完成した物語は結局、この時のプロットからあまり外れていません。

執筆中のこと

執筆は時間に追われました。
プロットを細かく作ってしまった上にあまり削れるシーンがなかったので、書き上げるだけで精一杯。特に後半は心理描写を入れる余裕がなく、状況描写の羅列のようになってしまったのは少し悔やまれます。(それでも文字数が「最大1万字程度」のところ、実は12,000字くらいあります。すみません…)
これまでは投稿期間の前半に出すことも多かったですが、今回は完成したのが最終日の21時くらい。一度入浴してからざっと推敲して、23時過ぎのギリギリの投稿になりました。

それでも、書くのはとても楽しかったです。特に、村川くんと鳥井さんがふたりでただ歩いているシーンを書いていると、自分まで心がじんわり温かくなりました。市川拓司さんもエッセイで「自己治癒のための執筆」と書かれていたのですが、まさしくそんな感じ。
その中でも一番お気に入りのシーンは、大学生になって再会したふたりが歩きに行くところ。

離れていた時間の埋め合わせをするように、僕たちは色々な所を一緒に歩いた。
休みの日には、地図を見て行ってみたいと思った場所に出かけた。観光地ではない、人の少なさそうな場所。
鳥が鳴く青空。心地よいせせらぎの音が感じられる清流。爽やかな風が吹き抜ける森の中。ゆっくりと波が寄せては返す穏やかな海。
何も話すことはなくても。一緒に自然が織りなす景色を見て、自然が生み出す音を聞いているだけで、心は満たされた。
世間一般のデートからは外れているだろう。それでも僕たちふたりにとっては、最高に幸せな、とびきりのデートだった。

「ただ歩く、ということ」本文より

自分にとっての「ただ歩く、ということ」

主人公の男の子である村川くんには、ある程度自分を重ねています。
「敏感」とまではいかなくても、自分も視覚優位な部分があるなと感じています。○ンキに行くと視覚情報で脳がキャパオーバーになる感覚があるのは実体験です。

人の少ない、自然の多い場所を歩いている時の自分の気持ちは、本文にも書いた通りです。「ただ歩くこと」は、自分にとっても心がほどける時間です。
コロナ禍がなかったら、「人の少なさそうな場所を歩く」という趣味を見つけられておらず、この物語も生まれていなかったかもしれません。そういう意味では、コロナ禍も悪いことばかりではなかったな、とも思います。

なお、作中ではふたりで歩いていますが、実際はほとんど自分一人で歩いています。長いと1日で20kmくらい歩くこともありますし、景色を見ながら気ままに歩くのが好きです。
そのうち、今までに歩いた中で印象に残っているコースを紹介したいなと思っています。気長に記事をお待ちください。

P.S.
ちなみに、もうひとりの主人公である鳥井さんもイメージにした人物はいます。もし気になる方は直接会った際に聞いてください。

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