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夢と現実の狭間

'' こんなはずの人生じゃなかったんだけどな〜 ''

なんて苦笑いで言った彼の唇は微かに震えてたのを
覚えてる。

これは1年くらい前にご来店くださった
お兄様のおはなし。

大きくて重たいリュックを背負って
ニコニコ笑いながらお部屋に入ってきた。

愛想があり会話のテンポもよく
今日はなにをしてたのかを聞いたら仕事で必要な
資格を取りに試験を受けてたと。

一通りプレイが終わり時間が余ったから
タバコを吸いながら夢の話を聞いた。

歌うことが大好きで週末は弾き語りができるBARに
足を運びそこで何曲か歌うらしい。
他にも駅前で路上ライブをしたり、オーディションを
受けたりするけど手応えはなし。

'' 本当は歌を仕事にしたいけど普段は地下に潜って
スコップ片手に穴を掘ってるんだ
こんなはずの人生じゃなかったんだけどな〜 ''

そう言った彼に私は何も言えなかった。

叶えたい夢があるのにどうして別の仕事の試験なんて
受けてるの?って一瞬思ったけどきっと
現実が厳しすぎて理想と現実をみてどんどん冷めた目になって夢を諦めはじめて現実を生きはじめるのかな

それが悪いことなんて思わないし
そういう経験をしたことがある人も多いと思う。

'' こんなはずじゃなかった ''って言葉に私が泣きそうになった

時間になってお見送りをした後
私の報われなかった夢、無理やり丸め込んだ気持ちが
溢れてしばらく動けなかった。

あれからどうなったかは分からないけど
元気にやっていたらいいな

いつかテレビで歌ってるお兄様を観れますように

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