顔に泥を塗るが完結した
完結した……60話で!私は常に最速シーモア配信で連載を追いかけてきました。完結したから最終話関連ネタバレ感想いきます。
普通にCP的な萌え~の話しなので既読済のひとしかわからない内容。
はる美紅ちゃん
第一話では(世間や他人にとって)正解の色を探してる美紅ちゃん。はるくんによしといわれれば安心し、ケバいといわれればやめよ……となるシーンから開始。モラハラ彼氏として最初期から登場していたはるくんは徐々に変化していく美紅ちゃんに別れを告げられ、彼女のなかで恋は情となり、ふたりは「既に終わった関係」として最後に顔を合わせます。
はるくんは美紅ちゃんを様々な手段で追い詰めましたが、その根柢にあるのは愛情だけだったと私は解釈しています。
美紅ちゃんとの関係が修復不可能な段階にあっても縋り付いたのははるくんだし、根柢にはいつも「美紅に帰ってきてほしい。ずっと一緒にいてほしいだけ」が透けてみえる。はるくんは美紅ちゃんに対してだけ感情がずっと動いてて笑ったり泣いたり拗ねたりしてみせたのはなにも常に打算ではなくて彼の真実の心だったとおもいます。支配的なはるくんだけど根柢は美紅ちゃんを愛していただけ、ということがわかるところがいい。
はるくんが美紅ちゃんと関係を清算すべく、最後に顔を合わせたシーンも、素っ気ない態度なのにずっと傷ついてます剥き出しの表情で死ぬほどよかった。気を緩めたら泣いてしまうから冷たくなってしまう必死の硬度が輝いてて、ダイヤモンドってすごく硬いけどある角度からなら砕けやすいらしいじゃないですか、ダイヤモンドなんだよはるくんは。美紅ちゃんを操り人形にしてみえたかもしれないけれど。そうじゃなくて血肉の通った人間として、愛する女性が離れていくのを必死で引き留めていたのだと全話読了済みの今だとひしひし感じます。彼は最初から美紅ちゃんの変化に聡くて、殆どはるくんの考えた最悪の予想通りに事は運び(イヴくんという新しい恋敵に彼女を奪われる)喪ってしまったのがつらい。
このように美紅ちゃんを心底から愛している男が(しかし手段がどうしても歪んでしまう、という軋轢を彼自身抱えており、それは世間でいうところの愛じゃ無いっていうならそうかもね…と本人もいってる。でも世間どうでもええなの気持ちもありそうなので美紅ちゃんに認めてもらえない一点でしょぼ…してるのかなっておもいます。おい~;;;;一生一緒にいてほしかったが別れてよかったという特殊な感情に陥る読者、涙)決定的な、本当の別れのあと、美紅ちゃんと自分の関係を言い表すんですけど、尺度がゼロか百しか持てないひとの、無か全力か二者択一過ぎるはるくんらしい結論で、本当に素晴らしかったです。二度と人を愛さずに生きてほしい(そんな感情をはるくんに求めるな)
イヴ美紅ちゃん
公式CPです。はるくんにいれあげたこの私もさすがに別れてよかったといわざるを得ない。いや、別れて……というよりもふたりが付き合ってくれたのがすごく嬉しい。イヴくんと美紅ちゃんは「彼氏がすでにいる」状態から知り合ったので、ただの友達として割り切っているつもりが徐々にモラハラ彼氏の無体をみていられずイヴくんが声をあげてくれて、以降美紅ちゃんも彼に惹かれていきます。
っていうかどの地点から恋したとかないんですよ。
イヴくんといると美紅ちゃんは自由な精神でいられる。はるくんの愛情は安全性が保障されてるけど閉塞的で核シェルターかよみたいな状態なのでふつうに外の空気吸って色々な景色をみたい!って美紅ちゃんもなるんですよ。色々な世界をイヴくんはしっているし、コスメの魅力に気付いて本当は色々試したい、もっと沢山楽しみたい!とおもっていた美紅ちゃんに、どんな色も自由に使っていいんだよと教えてくれたのが彼です。この美紅ちゃんの外向きの感情ははるくんの傍にいる限り(彼はコスメトラウマ偏見があり、口紅を塗った女は浮気するとおもってて…いや…いや…いうな。当たり前にド偏見だよ!でもこれはるくんの人生だと二回おきてるから!はるくんの人生ではかなり強力なジンクスです。コスメに関わるとはるくんは家庭崩壊する)
メイクを好きともいえなかった美紅ちゃんに好きに楽しんだらいいし、理不尽には怒ってもいいんだということを教えてくれます。人権をね~!?取り戻させてくれる。
イヴくんも「彼氏がいる女性」に男性の自分が近づいたり、モラハラ彼氏から庇うとはいえふたりで会うとか、徐々に惹かれている心に気付く事への葛藤があるんですけど、まず美紅ちゃんの窮状に寄り添ってくれました。
はるくんと付き合っている間に不貞があったわけではないが、その嫌疑をはるくんがかけるのは当然の成り行き。でも正直付き合って別れてって人が変わるのは別にぜんぜんいいことで、制限をかけることはできない。美紅ちゃんは自分の言葉でしっかりはるくんと絶縁しました。
イヴくんも「彼氏がいる美紅さん」に遠慮しつつ、傷つけないように、でもちょっとアプローチして…という絶妙な距離を神経質に保っていただけに、ふたりのわだかまりがとけて正式に恋人になれた瞬間はまぎれもなく「これからは自分らしくいよう」のスタートだと想い、カタルシスがあり……長かったよ~;;;✨になりました。イヴくんの隣にいる美紅ちゃんは萎縮してなくて、むしろ彼氏イヴくん側の細々とした失敗があるんですが、美紅ちゃんはぜんぜん気付いてないんですよね。(美紅ちゃんのまえで見栄をはってみたり、独占欲だしちゃったり、から回ってしまうタイミングがあって年下彼氏のエキスですぎて泣いた。年下彼氏からみた年上彼女美紅ちゃん像もはるくんとの間にはみえない一面ですごいよかった…)
格好つけたいイヴくんと致しましては格好悪いところを見逃してもらうとか、おおらかに受け止めてあげるとかじゃなくて「そもそも気付いてない」のが大正解なんだとおもいます。凹凸がぴったりはまり込むように、相応しい時期に出会って関係を成熟させていった結論がこれなのだと。
彼の隣にいると美紅ちゃんは新しい自分に沢山出会えるし、イヴくんも彼女の素直さに感銘をうけ、お互いの精神をますます輝かせていける組み合わせ。本作は印象的な場面で赤リップが登場しますが、最後もとても素敵だった。イヴくんと美紅ちゃんは多くの体験、そして人生を共有していくことでしょう。
はじまりの美紅ちゃんは色を探すひとでしたが、これからは転職の兼ね合いもあって、色を他人に与えていく人になるのだろうとも思います。
高倉家
イヴくんは高倉利人くんといいます。彼のご両親が劇中登場し、母はオランダ人、父は日本人で呉服屋の主人。国際結婚でお母様のアンジェラさんは日本に住んでいたけれど、のちにオランダへ夫婦で移住。
日本での暮らしがストレスだったアンジェラさんは自殺未遂をし、気丈な母を尊敬してやまないイヴくんはこのことにショックを受けます。母が笑顔の裏で隠していた苦しみに気付いてあげられなかった、という傷が残る。
だから夫婦がそのうち離婚するだろうと思っているわけですが、パパ曰く、ママが離婚しないのは「(経済的な意味でも)女性は強かだから」といってのける。
読者には長らくアンジェラさんの心境がわからず、何故離婚しないのか、そもそも妻は離婚を望んでいるのか?ということが謎めいていましたが最終回で解けました。めっちゃ可愛かったので……この結論が好きで……つまり夫婦が離婚しなかったことは転じてパパの人柄をも示してくれたと感じました。お父さんは利己的な人物であり実際そのように生きているのだけれど、常に例外がアンジェラさんなんですね。このひとに対しては一生懸命機嫌をとるけれど息子にはそれをしない凄まじく差別的な態度をとっています。だから父子の仲は険悪で、悪い意味でもいい意味でも対等な争いを繰り返しており、イヴ君は夫婦は離婚しちゃってもいいんんじゃないかとおもうわけですが、パパは離婚したくない。妻を愛しているから。そういうことなんだろうと思います。すごい事情がアンジェラさん側にあって離婚したくても…できない!?とかじゃなく、普通に嫌なことあったら夫をしばいててよかったです。アンジェラさんが自分らしくいられるようになってきた、オランダで回復できているのだろうと思います。
顔泥はあらゆる角度から人は変われること、変わろうとする人々に熱心な応援を送りながらも、はるくんのように変化することの出来ない人間性にも焦点をあて、美紅ちゃん、イヴくん、それからはるくんまでを含めた「人生」を描いてくれたと感じています。イヴくんと美紅ちゃんの物語から最後まで(再序盤から悪役ポジで緊張感を与えてくれた)はるくんを追い出すことなく描かれていたことで、人間全体に寄り添ったストーリーだったな、としみじみと感じました。
新刊発売するたびにシーモアに駆け込んで追いかけ回していた日々が終わってしまうことは寂しいのですが、イヴくんと美紅ちゃんの未来は明るく、愛情を貫き通したはるくんの傍にも結城一家の親しさがあり、救いを感じています。
でもはるみくルートほしい!はるくんがコスメトラウマ打ち明けてじゃあはるくんは私のリップバームでうるうるした唇だけ一生吸って生きてくんだよね!!?って美紅ちゃんにいわれて幸せなキスする2人みたい。無理!別れたから。はるくんは打ち明けられなかったんだ……どうしても化粧トラウマを……というはるみく軸(無い)の夢を見るほど付き合いたてに「美紅は弁護士の彼氏とサラリーマンの彼氏どっちが良い?」と訊ね、美紅ちゃん中心で人生きめて「弁護士してる美紅ちゃんの彼氏」してた彼が好きです。美紅ちゃんがいてくれてコスメがなければ彼はスーパーマン一生やる気だったんですよ、美紅ちゃんのためだけに……ありがとう顔泥。イヴ美紅ちゃんとはる美紅ちゃんどっちも好きです;;