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「隣人が気持ち悪い」第1話


ことの発端はお風呂にお湯を溜めていたところから始まっていた。私がお湯を溜め始めると隣人の方から「ジャー」と同じようにお湯を溜める音が聞こえてきたのだ。築三十五年の木造のおんぼろアパート。壁も薄いので他の部屋の住人の音も聞こえてくるのだ。今まではあまり気にしなかったが、同時にお風呂場のお湯を溜める行為が数回重なるとさすがに気持ち悪い。そして、お湯を満杯にしないで入る分私の方が先に湯船に浸かる。すると、「ガチャ」と風呂場に入ってくる音が聞こえてくる。なんでわざわざ入る時間合わせてくるの。気持ち悪い。この時間にお風呂に入ると決めていない私は時間帯がバラバラにも関わらず隣人はまるで合わせるかのように入ってくる。

『もう、お風呂に入るのは止めて、シャワーにしよう』 
すると、入ってくる気配は消えた。でも、なんだか気味が悪くなり朝方や昼間に入るようにした。隣人は数回すれ違ったことがある。男だ。四十代くらいの。ああ、気持ち悪い。
男友達にラインで話すと「それどこの住宅会社?笑えるんだけど!」と馬鹿にされたので、「だから男って気持ち悪い。変態しかいない。」と嫌味を言い返したら「そんな男と一緒にしないでよ」とケラケラ笑う。私は真剣なのに馬鹿にした態度を見せられてイラつき「だから男は気持ち悪い」ともう一度念を込めて言ってのけた。そして、その男友達のラインをブロックした。
私の周りの男は大抵変態か自己中ばかりで、クリスマスの日に待ち合わせていた時間に来ないこと二時間以上。その理由が友達と飲んでたからだとか。「ごめん」とぼそりと言われただけで終ったのでイライラして不機嫌そうにしていたら「謝っただろ!」とキレられた。そして電車の中で暴言を吐き続け終いには「終電逃して俺の家に泊めてやるんだからありがたく思えよな!」とおまえのせいだろ!と怒鳴りたくなるのを電車内なので我慢した。無論、始発で帰った。
紙に嫌味を込めた『泊めてくれてどうもありがとうございました。さようなら』の文を残して。それ以来謝罪の連絡も何も来なかった。そういう男ばかりが私の周りには多かったせいで大の男嫌いになっていた。

イケメンでかっこいいとか言う発言が理解できなかった。内面無視の何がかっこいいんだよ。顔に別段好みもなかった私は今まで付き合ってきた人ほとんど外見も趣味も異なる人で、好きだとか付き合わない?とか言われたから好きでもないけど付き合ったら好きになれるかなと思ったら、ただの淡い夢ごとで現実にはクズ男で性欲丸出しだったり、自分の好きなことしかしないような男で彼女に合わせることをしないような男だったり、、、。

だから、男友達の発言でやっぱり男はクズだ。と思ってしまった。

そして、シャワーに変えてから数か月が過ぎたころ。異変はまた起きた。夜中の二時に「うるせーな!」と大声で怒鳴り散らす声とともに壁や床を「ドンドン!ドカンドカン」と殴ったりけったりする音が聞こえてきた。『え?酔っ払いかな?』疑問に思い、このアパートが静かなのに何が五月蠅いのか理解できなかった。一時間ほどその怒鳴り声と蹴る音は続いた後に止んだ。『眠いのに起こされるし、寝れないし最悪』眠気眼でボーとした頭がくらくらして、隣人が静かになるとともに眠りについた。まさかこれがただの始まりにしか過ぎなかったなんて。

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