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古美術かぞえうた

6月中に時間がとれず、7月になってからになりましたが、根津美術館の「古美術かぞえうた」にいくことができました。

今回のテーマは数字。形状からくる名前に数字が入っている器や日常、あるいは仏教の道具、絵画に描かれているものから数字が入っているものなどなど、数字でくくって所蔵品をさまざまに展示するという会。

冒頭は器や道具。数歌なので1からなのだけれど、三角や四角はいいとして、1や2はどうするのだろうと思っていたら、ちゃんと描かれていたり題材となっているものから、例えば1は「青磁一葉香合」2は「染付二匹鯉香合」とちょうどあるのでした。器の形は三角から十二角、十六角と結構大きな数まで形を作れるものだなと思うものがあり、それもちょっと面白かったです。焼き物で円に近づいていく十六角などは正確に形を保ちつつ焼くのは大変だろうなと思います。

どれも模様が面白く、感じがいい。そうそう、今で言う「フチコ」さん様になっている杯の縁に人形がついている器の人形部分、「閑人」という名前で呼ばれていて例えば美しい小柄できりっとした景徳鎮の盃に人形が向かい合ってついているものは「染付二閑人盃」。確かに器の縁に腕をのせてぶら下がっている様子、顔つきを見ても、たいして意味もなく、やりたいからここにいるんだといった風で、暇そうに見える。

最近我が家でよく話題にのぼる(といっても名前だけでしかも関係ない話題)不昧公が大事にしていたという花入は竹に切り口をつけたもので、「一重切花入」。こういうの「一重切り」って言うんだと思いつつ、また不昧公大好き物を見たよ、と帰宅して家族に報告しました。

書もあって、この間行ったばかりの日田の儒学者の書もあり。後陽成帝の書もあり。帝王ともなるとこんなふうに豊かな書き振りの書も書けないといけないのか、と思いみる。素敵な字でした。日田の儒学者の人の書もさわやかさがあっていい。書は一字だけ書いて名前に「一」と入っているもの、漢詩で七言絶句や五言絶句などといった種類で数字がはいっているという扱いのものなどもあり。

絵画では三十六歌仙で「三十六」としているものや、工芸品で四君子図を描きこんだもので四(四君子は植物 梅、竹、菊、蘭)。そういえばさらりと描いて上品さと軽みを見せる酒井抱一の七夕図も良かったしです。有名な画題、瀟湘八景の巻物があったのですが、水墨ではあるものの、水墨画というより大和絵のようなタッチで、和の味わいの瀟湘八景で、漢画らしい絵も素敵ですが、私はこういう瀟湘八景の方が心が和むなと思いました。瀟湘八景らしい湿気を含んだ風景を描いているのだけれど、和の柔らかさ、優しい風景のようで、好きでした。
この書画コーナーの最後に四睡図があり、なんだか可愛い顔の豊干という禅師が虎に寄りかかって眠っています。説明によると寒山拾得のお師匠さんで、奇矯な振る舞いで知られていたとのこと。奇矯はお師匠さん譲りだったのか。寒山拾得。でも、絵は奇矯の人というより、嬉しそうに虎にもたれて寝ている可愛い人という感じです。説明では虎を乗り回していた(?)とのことで、この虎に乗ったりしてたのか。

仏教絵画コーナーも面白くて、それぞれ見応えがあるものばかり。中では今回は弁財天十五童子像が上に役行者と蔵王権現がやってきていて、ちょうどその数日前に蔵王権現特集の図録を見返していたところだったので、吉野の信仰ではやっぱりスターなんだなとじっくり見ました。
大好きな善財童子の冒険(?)物語を描く華厳顔十五箇所絵も展示がありました。

数歌ということで、数字かあと思ってみに行ったのですが、数字といいつつ、展示物はどれも面白く、こういう取り合わせもあるかといった展示でした。いいものばかりなので、みていて飽きないいい展示。

2階コーナーの「江戸ー東京ー駆け抜ける工芸」はあるとは思っていなくてふらっと寄ったのですが、柴田是真の作品が多く展示されていて、すごく良かったです。わざわざ漆で描かなくても!という絵漆とか。もうできるならなんでもいいけれども。そして、もともと絵が書いてある板戸がすごく好きなので、展示されていた「夕顔」が漆芸で表現されている板戸の美しさに打たれました。素晴らしい板戸です。配置といい・・・。他の工芸品、小柄や香合も間違いのない流石の輪郭、質感、レイアウトで全てがぴたっと決まっている品々。工芸の技が極まった江戸末期から明治の頃というのは、職人の技と芸術家の目覚めが混ざり合う奇跡の時期だったのではないか、と思います。

いつも通り、茶室展示はもともとよくわからないのでさらっと。夏季の茶の湯というので、涼しさを呼ぶ道具の組み合わせ。煙草盆には鮮やかなカワセミが付いていました。茶室展示も涼しげ。水指も清らか。いつも最後の方に展示されている懐石に使われる器が好きです。茶杓とかはうーんわからない!

全体に本展示は好みのものが多くて、きて良かったな。と思うもの。もう一度ぐらい行きたいけれど、期間が終わりそうなので、2回目には行けそうになくて残念。

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