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男と女のたとえ話

あなたを抱いている最中、
私は無意識にあなたを何かにたとえている。

舌を絡ませて、唾液を交換するほどの
濃厚なくちづけを交わしているときには、
たとえば濃密な蜂蜜のどろりとした滴。

あなたが私のものを美味しそうに口にして、
時折私の方を上目遣いに見る様は、
たとえば捕らえた獲物を貪っている女豹。

あなたを貫きながら荒々しくその乳房を揉み、
じわりと汗が肌ににじみ出る光景は、
たとえば雨上がりの露に濡れ風に揺れる果実。

あなたを後ろから激しく攻めていると、
その尻が私の動きに会わせて揺れる情景は、
たとえばそよ風が突然強く吹いて波立つ湖面。

あなたがついに我慢しきれずに、
私がその口を塞ぎたくなるほどの大きなその喘ぎは、
たとえばまさに夜空をつんざく雷鳴。

あなたが必死になって私の体にしがみつき、
両手両脚を私の体に絡み付かせて果てようとする姿は、
たとえが玩具を欲しがってだだをこね親の体にしがみつく幼児。


「たとえ」、
つまり比喩が優れた文章が、
その味わいを深くしてくれるように、
あなたとの情交も、
私にこんなふうに深みをもたらしてくれる。

そのたとえは常に同じではなく、
その時々のお互いの感情と風情によって異なるから、
あなたを抱くたびに、
私はその脳裏にいつも違う物語をこしらえている。

だから、
たとえ
時間がなくて抱けなくとも、
会えるだけでも私は幸せで、

たとえ
あなたと会えない時がしばし続いても、
その情事の様が常によみがえり、

たとえ
あなたがいつか私の前からいなくなったとしても、
私は絶対にあなたを忘れる事はない。

たとえ
この世では結ばれることが出来なくとも、
きっと生まれ変わったらまた会えるだろう。

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