愛の一筆書き
ひとふで書きとは、
一度も筆を紙から離さずに文章か絵を描くこと。
私はそれが上手な男。
あなたの唇にこの人差し指を突っ込んで、
たっぷりとあなたの唾液でまみれたあとに、
あなたの体の上にひとふで書きを書いてみる。
唇から始めて、頬から目元に行って眉を通り、額をめぐり、
目の間を通り高い鼻を通り、再び唇に戻る。
私が何を書いたかわかるかい?
ふたたびあなたの唾液をつけた後、
今度は顎から首筋を降りて、
耳たぶにのぼり、かわいい耳で遊んだ後、再び唇に戻る。
今度は唇からするすると顎から首筋、鎖骨をたどり、
ふくよかな頂をのぼって、
誇り高くそそりたつ乳首の頂点にたどり着いた時、
あなたの唾液が指先からなくなったから、
今度は私の唇があなたの乳首に吸い付いて、
どっぷりと唾液を垂らし、
今度は私の唾液をつけて私の人差し指は、
再び絵を描いて行く。
今度は何を書いたかわかったかい?
あなたの腹、背中、太腿と
ひとふで書きは終わらない。
あなたの太腿あたりではまた唾液が枯渇したから、
すぐそばにある壷に向かい、
唾液よりももっと濃密な墨汁を吸い取ろうとしたら、
あなたが違う筆を求めてくる。
やむなく私は、
私が持っている最も太い筆を取り出して、
あなたの溢れるほどにたっぷりと墨汁が注がれている壷に、
根元までしっかりと浸し、
ふたたびひとふで書きを書き始める。
上下左右、前後に大きく腰を使って、
大胆に、勇ましく、愛の言葉を書き続ける。
私が何を書いているかわかるかい?
あなたはわかっているから、
私の一筆一筆に、
溜息を漏らし、
水墨画の情景のように、淡く、溶けて行くような
美しさを醸し出す。
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