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後見人がつくと旅行に行けなくなる?

みなさんこんにちは。
コロナ禍ですっかり旅行に行くこともできず、欲求不満な担当職員です。
そんな時期に、この話題をするのも、なんですが、今回の良くある成年後見制度の誤解は「後見人がつくと旅行に行けなくなる?」というものです。
このテーマは過去に行われた「親あるうちの準備を考える連続講座」でも取り上げられていたものですが、今回はその内容を振り返りながら、お伝えしようと思います。
※この記事中では、読みやすさ優先のため、補助人・保佐人・後見人をまとめて「後見人」としています。ご承知おきください。

A:後見人がついても旅行に行けます!

まず、最初に結論ですが、後見人がついたからと言って、いままで行っていた旅行に行けなくなるということは基本的には(多くの場合には)ありません。では、どうしてこのような誤解が生まれてしまったのか?というお話からしていきたいと思います。

後見人が、身上監護やご本人の意思決定をどうとらえるのかが鍵!

最近でこそ、この誤解を聞く機会は減ったような印象がありますが、数年前までは、親御さんの間でもたまに出る話題だったようです。成年後見制度を利用している方で実際そのような事例があり、その話を聞いた親御さんたちが「後見人がつくと旅行に行けなくなるらしい」ということで、広まっていたのだろうと推測されます。特に福祉職以外の専門職の先生が後見人となった場合が多かったように感じられます(あくまで私個人の印象です)。
もちろん、ご本人の財産に見合わないような長期間の海外旅行などは、今後の生活が継続できないと判断され当然と思いますが、毎年1回~数回はご本人の楽しみとして旅行に行っている方も多くいらっしゃいますので、それができなくなると、ご本人の普段の生活にも影響が出る場合がありそうです。旅行の楽しみがあるから就労が続けられている、という方もいるでしょう。
普段かかわっているご家族や支援者であれば、そのことは理解されているのですが、ご本人のことを全く知らない第3者が後見人に就くと、ときに財産が減ることの心配の方が大きくなり、「行けません」という判断をされてしまうことも、ケースによっては、あるようです。

第3者の後見人が適切な身上監護を行うためにはご本人のことを知っていただくことが必要!

それでは、そのような判断をされないためには、どうしたらよいのか?ということになります。以下の3つ方法が検討できると考えられます。

  • 旅行に行く意義や、ご本人にとっての利益、効果(もしくはいかないことでの不利益・生活上の変化)などを客観的に記録し、その内容を後見人にお伝えする。

  • 第3者に後見人をお願いする前に、ご家族が後見人になっておき、後見活動の実績を積み上げておく。

  • 旅行費用をご本人の財産とは別に確保しておく。

1番目については、後見的支援室でもお勧めをしている「あんしんノート」などを使って記録しておくのもよい方法です。旅行にまつわる過去のエピソードを記録しておくと、後見人にお伝えする際に役立ちます。
後見人が選任されると「事務計画書」「収支予定表」の提出を家裁から求められます。この中に旅行費用についての記述があれば、家裁が確認することになりますから、家裁が確認した時点で後見人さんは安心して旅行費用を拠出することができるでしょう(裏を返せば、ここに書いていない支出がでると後見人さんは不安になるかもしれません…)。できるだけ早い時期に、後見人さんに情報をお伝えし、話をすることが重要です。

2番目については、まずご家族が後見人となることで、後見活動の報告を家庭裁判所にすることになります。そこで特に家庭裁判所からお金の使途について何か言われることがないのであれば、問題ないお金の使い方と考えることができますので(年数が長くなればなおさら)、後から就いた後見人さんも、安心して旅行費用を支出できるでしょう。親御さんに万一のことがあった場合でも、後見人の交代手続きでご本人の後見活動は継続されますので、その点でも安心です。

3番目についてですが、第3者の後見人さんが「旅行はダメ」と言うのは多くの場合、ご本人の支出が増えてしまうからだと考えられます。そこで、旅行費用については、本人の財産から支払うのではなく、別に用意しておくという選択肢が考えられます(ご本人の状況やご家族の財産状況によっては難しい場合はあると思います)。ただし、親御さんがその費用を支払うとして、親御さんが病気になったり、亡くなった後にはこの方法は使えなくなりますので、ご兄弟に託しておいたり、場合によっては「信託」を利用するなどの方法も考えられるでしょう。信託の話については今後触れていきたいと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回みなさんにお伝えしたいのは、後見人さんも最初はご本人のことを知らないのは当然なので、ご本人にとって適切な判断ができるよう、ご本人の状況をしっかり引き継げる準備をしておくことが重要、ということです。
今回のテーマが「旅行」だったので、旅行の話になりましたが、このことは旅行だけでなく、ご本人の生活全体で考えていく必要があるのは、言うまでもないと思います。
ほっぷでは、そんな「準備のためのお手伝い」を一緒にしていければと思いますので、今後ともよろしくお付き合いください。


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