春風異音を連れて

また家の中で轟音がする。また、というのは以前もあったからだ。日記に書いたような気がしたので探した。2年前、キッチンの換気扇からだった。

https://note.com/aoaomiomochi/n/n78e95886d470

2年後の春、今度は浴室の換気扇から地響きのような音がする。音は低くもなく高くもなく、ちょうど心をざわつかせる広がり方をする。我慢できなくもないけど、気にすると気になるくらいはうるさい。異音は最近発生したように書いてしまったが、実はこの状態を半年やった。私はこういった生活の留め具が緩んでいるとき、なにがなんでも着手を後回しにし、だらだら過ごすうちになんとなく解消された気がしてくるのをひたすらに待つような人間なのだ。いつのまにか留め具新品になってたらいいな。そう祈りながら、取り返しつかなくなった頃に新品の留め具を発注する。泣きながら。

屑なりに困っていた。本を読む時、在宅仕事をする時、眠る時、ごおおおおおおおという地響きの中、集中力は削がれ、睡眠の質が落ちているのを自覚していた。どうしてもの夜は、換気扇のスイッチを切って眠った。こんなこと続けていちゃだめだと決意した2週間後、私はサポートセンターへ電話した。

3/27、すでに深夜になっていた。(サポートセンターは24時間体制のようです。)

名前と住所を告げ、換気扇の、と言ったところで「おや?またですか?」とせっかちなサポーターが私の言葉を切った。

「いえ、以前はキッチンで、今度は浴室です」

「ははぁ そうですかぁ、どうしてでしょうね換気扇ばかり」
私が聞きたい。

なぜサポートの方がへらへら笑っているのかも合わせて回答していただきたい気持ちをこらえ、業者への連絡を依頼した。2.3日で業者から私へ連絡が入る為、都合を合わせて点検するようにとのことだった。へらへら笑われても私は大人で向こうは仕事、ありがとうございましたと締めて電話は終わった。
その後2週間まったく連絡はこなかった。地響きはどんどん大きくなった。

4/10、痺れを切らしてもう一度サポートセンターへ電話する。記憶が正しければ、前回と同じ人がでた。
「あの、業者さんから連絡こない…んですけど…」

かけておいてなんだが、人に文句を言うのはかなり気まずい。半年間異音を放置してきた自身を棚に上げて怒ってしまえる程は図々しくない。屑にもルールがある。

「あー?はーい?調べますね〜。はいはい、こちらから業者には連絡してるみたいですけどねー。もう一度催促してみますねー?」

「はい、よろしくお願いします」

「はいはーい!ありがとうございました〜」

通話は切れた。これ怒ってよかったと思います。
どうしてそちらの仕事なのに伝聞みたいな話し方なのか、とか、2週間待たせた人にはいはーいって返事ありますかとか、コンビニ退店する時に後ろから聞こえるみたいなありがとうございましたとか、全部全部。
換気扇の羽は苛立ちと愚痴を私の体内で混ぜる。轟音を鳴らしながら。

数日後、業者から連絡がきた。曰く、住宅が古くて換気扇を特定できない。大家とも連絡がつかないため、自分で換気扇を調べ、型を特定して、また連絡してください、とのこと。無理。この家に関わるみんなまともじゃない。今年の春もかなりうるさい。