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春風異音を連れて

また家の中で轟音がする。また、というのは以前もあったからだ。日記に書いたような気がしたので探した。2年前、キッチンの換気扇からだった。 https://note.com/aoaomiomochi/n/n78e95886d470 2年後の春、今度は浴室の換気扇から地響きのような音がする。音は低くもなく高くもなく、ちょうど心をざわつかせる広がり方をする。我慢できなくもないけど、気にすると気になるくらいはうるさい。異音は最近発生したように書いてしまったが、実はこの状態を半年やっ

    • 意味汁を大切に啜れ!

      ↑ 下書きに保存されていてなるほどたしかにと思った。昨今の人間社会は意味に溢れ、意味を失くしている。私は人の言葉を喋るようになった、人にわかるように喋るようになった、同時に自分だけのリズムを失った。他者とぶつかって初めて己の輪郭を意識する、思春期のそれとはまた違う、大人になってもマイノリティを誇れず、折れてきた人生にやがて蔦が伸びて雁字搦めだ。わかられた途端に古くなる。理解されなきゃ意味がないなんて思った瞬間に◯◯◯ってもう終わりかも。今まで意味わかんないって言われたとき、ど

      • 日記

        いつか絶対に殺してやると思ってきた母が終活を始め、父も病で死にかけ、兄は死を意識してダイエットに目覚め、去年より10キロ痩せた。あすけんの使い方や栄養素のうんちくを滔々と語る痩せた兄の横顔をみて、あの頃に戻ったようで思わず目を逸らした。 「あんな雑な育て方をしたのに、子供たちはみんな立派に育った。誰ひとりニートにならず、社会に迷惑をかけず、懸命に働いてくれて、正月にはこうして実家に帰って顔を見せてくれる。こんな幸せなことはない。あんなに殴って蹴って、ひどい育て方だったのに

        • 普通亜種

          私が子どもの頃、私の母はよく「どうして普通のことが普通にできないの」と泣き喚いて訴えて、私はひたすら困って、普通って知らない、何かわからないし…と、言っても火に油を注ぐことが分かりきってるから、とにかく口をつぐんだまま泣くしかできなくて。あの頃以上の不幸ってないよなと思う。母も私も、家族を思いやる語彙をひとつも持っていなかった。不貞腐れて、もうさっさと殺してくださいよみたいなことを言って、血が出るまで殴られたことも、団地の最上階の踊り場から見上げた青空も、何一つ美化されないま

        春風異音を連れて

          夢みたいだなこんな暮らしは

          仕事をサボって考え事をしたり好きな文章を書いたりするときに発揮される、とんでもない集中力を意識した時、ADHDここに極まれりと思う。たらればやパラレルワールドに想いを馳せるよりも、目の前を明るくする努力ができるようになった。一生こういうことに努めていきたい。何がなんでも、生きて、生きていてよかったと思うのをしつこく繰り返していく。料理を作り過ぎない、郵便物をこまめに確認する、発送などを、後回しにしない………暮らしの中では気をつけねばいけないことは山ほどある。 多感な時期に

          夢みたいだなこんな暮らしは

          31

          一昨日くらいに30歳になった気持ちを日記に書いた気でいたのに、今月もう31歳になってしまう。毎日やったことよりもやり残すことの方が多い。米を研ぎ忘れたり、買った本を読まなかったり、そんな負債は誰にどやって返すべきなのか。 30歳、歳を重ねるのはなんてスペシャルなんだと強く思った一年だった。 突然無敵になるんじゃなくて、傷口以外の部位で受け身を取れるようになった。それでも実際多少生きやすくなったからといって、たちまちトラウマがなくなったり、ネガティブな感情が消え失せるわけじゃな

          魂の詳細

           「生きていてよかった」と前回ブログに書いたそばから父に腫瘍が見つかった。結論から書くと骨形成線維腫という良性腫瘍で、摘出手術を行って大事には至らなかった。癌と見分けるのが非常に難しい腫瘍らしく、母は「医師に何度も癌と宣告されたのに。セカンドオピニオンまでしたのに」と電話口で泣いたり怒ったりした。実際、手術後に切除した腫瘍を組織診断に出して、結果が出るまでは全く安心できなかった。腫瘍が発見された箇所が喉のリンパ節だったから、癌なのであれば脳に転移すればすぐに死んでしまうと理解

          魂の詳細

          タイトルなし

          生きていてよかったと思う。まだ死んだことがないので、死んでみれば死んでよかったと思うのかもしれない。子ども時代は地獄だったし、20代は閃光みたいだった。まだなって日は浅いけど、30代は生きていてよかったとよく感じる。顔にシミや皺が増えて、体力も代謝も落ちて痩せにくくなって、視力も記憶力もどんどん衰えていていく。それでも、生きていてよかったと思う。苦しかった日々を振り返ったり、今ある幸せに感謝したり、おもしろくって涙が出たりする瞬間、生きていてよかったと心から思う。人を呪わなく

          タイトルなし

          camelかよ、カス

          部屋中を思い切りひっくり返しての大掃除は進みが遅く、帰省までには済ませるはずだった半分の作業しか終わらなかった。寝具を洗って干したのが夕方だったから、シーツや毛布がまだ濡れていて途方に暮れた。しばらくは凍えながら寝床だった場所を見つめていたが、唐突に存在を思い出した布団乾燥機が役に立った。白湯のつもりで、ほとんど熱湯をちびちびと啜る。この布団乾燥機は、実家を出るときに無理やり母親に持たされた物だ。カップから真っ直ぐに立ちのぼる湯気を見つめながら、去年までと同様の考えが今年もあ

          camelかよ、カス

          10円

          自動販売機にはずっと舐められてると思って生きてきたけど、最近いきすぎてる。お茶が160円、水が110円になった日、自販機の前で呆然と立ち尽くしてしまった。水ですよ水。60円にしてください。でも水を日に2L-3L平気で飲む私は買わざるを得ない。水筒を持ったり、2Lのペットボトルを朝買って職場に持ち込んだり色々試したけど重くでだるいし、なにより冷たい水をごくごく飲むのが好きだから、500mlのペットボトルを1日何本も買うことになる。水のおかげで血液はサラサラだと思うけど、夏場な

          真に気高い生き方とは何か

          仕事が順調で、親も兄弟も健康で、休みの日も充実していて、好きな本を読んだりして、恋人や友人に恵まれて、人に親切にできて親切にされて、前の自分なら乗り越えられなかったような障害を乗り越えて、心も身体も健康で、なにもかもうまくいって、なにもかもうまくいって、なにかもうまくいって、なにもかもうまくいって、なにもかもうまくいって、なにもかもうまくいって、なにもかもうまくいって!?なにもかもうまくいって!?なにかも、うまく、いって!?なにもかも、うまく、いって!? ↑最近の心境 も

          真に気高い生き方とは何か

          絶対泣かない

          高校の選択科目は、楽そうという理由だけで現代文に決めた。不真面目だったので、バイト疲れは選択科目の時に寝て体力回復させるのがお決まりだった。現代文の担当教師は、寝ている生徒を叱ったり起こしたりしない人で、見た目は“ごく普通のその辺にいるくたびれたおじさん”という印象だった。生徒にも、生徒の進路にも、なんとなくだけど自分自身にも関心がなさそうな、そんなふうに見えた。この人の授業はいつも、抑揚のない口調で淡々と題材の短編小説を読み上げ、学生にも一目でわかるくらい適当に作られた小

          絶対泣かない

          君のこと全部

          最近は朝の通勤電車で小説のようなものを書く。人殺しの話なので過去の凶悪事件や殺人犯の記事を漁って読む。感情移入して心が動いたりしないし、読んでは忘れてまた検索したりする。この作業と、レッドブルの炭酸とカフェインで身体を起こす。日課になれば最悪な朝にも耐性がつく。凶器は明かしたくないなあと思うあたりで中野に到着する。自分ならどのように殺していただろうと想起しそうになると、こんなばからしい行為は2度としないと誓って、全て削除する。 中学で行われた高校受験の面接練習では、テン

          君のこと全部

          もっかい

          高校生の頃通った養成所はとっくに移転して、経堂にはもうないらしい。往復4時間と少し、電車賃3千円かけて、千葉の片田舎から毎週通った。自分で調べ、自分で写真を撮って、自分で応募してオーディションを受けた。簡単な台詞読みをして、歌の審査では椎名林檎の「本能」をアカペラで歌った。歌の審査で、ましてやアカペラで歌うような曲ではないのだが、無事歌い切った。面接の最後に、講師が私の目を見て「肝が座ってて、なんだか修羅場をたくさん掻い潜ってきてそうね」と言ってカラッと笑った。“修羅場”が

          もっかい

          臭えじゃねいか

          習慣というのはなかなか変えられない。昨日までの当たり前は、明日になっても当たり前であって欲しいと願うのが普通だ。歳を取るごとに思い込みは強固になるし、固定概念がなく自由なさまを見掛ければ経験がないからだ未熟なのだまだ青いのだと自分を落ち着かせることを最優先したい。害に見えぬよう良識的に、優しく老いて、悪意はないよと若い人達にアピールしていかなければならない。変わりたい変わりたいと燻った日々そのものを青春として美化できるようになるまで、私は私の端っこに隠れ一人で唸り続けるんだ

          臭えじゃねいか

          よだか

          小学生の頃、教科書に載ってた宮沢賢治の作品が好きだった。自分をよだかだと思った。傷つきやすく、罪悪感に苛まれやすく、繊細なのは自分だけで、現実は自分にだけいつも厳しいと感じてた。なんでうちだけ父親いないんだよとも思ってた。 当時住んでいた町には、小学生が読書をできる環境はなくて、高校生の兄が隣の隣の町まで行ってバイトして稼いだお金で買った漫画本や文庫本をパクるか、親のノートパソコンでインターネット盗み見て活字を覚えた。兄が見ていたと思しきエロサイトのページを開いてしまい、女性

          よだか