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カリンバの音が届けてくれたもの

夫が出張帰りに、カリンバを買ってきた。
カリンバとは、アフリカ・ジンバブエの楽器で、
手の中に収まるくらいの小さな木箱(もしくは木の板)に、
ピアノの鍵盤の代わりになるようなピンが付いていて、
それを指で弾くようにならすと、
とても素朴で、
透明感のある小さな音がする。

(夫はジンバブエに出張に行ったわけではない..
 前日、静岡に行くと言っていたと思う…)

早速、娘が組み立てて(そう!自分で組み立てるキットだった)、
鳴らしはじめた。

小さな音は、なんだか懐かしく響き、
説明書に付いていた楽譜の、
「アマリリス」
「アメージング グレース」
も、たどたどしくも、すぐに弾けるようになった。

夜の静かな時間に、小さく響くカリンバの音は、
なんとも言えず心地良かった。

翌朝、娘が前夜のつづきで、カリンバを弾きはじめた。
わたしは、「アメージング グレイス」をリクエストして、
何度となく弾いてもらった。
(わたしは、わたしのために弾いてもらっているつもりだったが、
 娘はわたしが昼ごはん用に包んでいた餃子の具に聴かせているつもりで
 弾いていた…なんだか高級な餃子になりそうだ...笑)

そしたら、忘れていたいろいろなことが、するすると思い出された。
「アメージング グレイス」がとても好きだった気持ちとか、
そう言えば、写真家の星野道夫さんの世界観がものすごく好きだった気持ちとか、
いつか行ってみたいと思っていた場所のことや、
その昔、夢中になって観た映画「ガイアシンフォニー」のシーンの数々など。

そして、腑に落ちたところは、
「祈り」だった。

「アメージング グレイス」が
ぐるりとまわって、
忘れていた「祈り」となって、
自分に戻ってきた、
そんな感覚になった。
すーっと何かが重なる、ぴたりとはまる、そんな感覚がした。

カリンバは、
儀式の際に、霊やスピリットと交信するために用いられた
神聖な役割を持つ楽器らしい。

なるほど。
この、なんとも言えない、魂や記憶につながるかんじ。

夫の静岡みやげのカリンバが、
娘の餃子のための「アメージング グレイス」によって、
わたしの魂の旅をつないだ。

このアンバランスのようなバランスが、なんだかいい。


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