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我が家のダジャレ王

我が家に、ダジャレ王がいる。

ダジャレ王とは、僕の嫁のことである。

女性なので、正確には、王というより女王。

嫁は僕と同い年のアラサーだが、ことダジャレにおいては、僕の倍以上の人生を歩んでいてもおかしくないくらいの貫禄を見せつけてくれる。それほどの風格が漂っているのである。


ダジャレ王のダジャレ王たる所以とは。

ダジャレを閃く速度とクオリティもさることながら、驚くべきはその手数の多さだ。

大喜利番組『IPPONグランプリ』でのバカリズムさんは、お題が出るやいなや、とんでもない速度でいくつもの回答をフリップに書き上げ、早押しボタンを連打しまくっているが、イメージとしてはあんな感じである。

我が家のダジャレ王は、何かお題さえあれば、1分あれば10個はダジャレを思いついてしまうほどの腕前なのだ。

実は僕自身も、子どもの頃にダジャレノートを作っていた程のダジャレジャンキーなのだが、嫁のダジャレ脳は、僕のそれを遥かに凌ぐ。

それでは、嫁のダジャレのうち、いくつか記憶に新しいものを発表させていただこう。


ダジャレ王の真髄、とくと見よ。


レンジでチンするとき

嫁「ご飯、昨日の残りだからすぐできるけど、もう食べる?」

僕「うん、食べる」

嫁「では、これよりちんはチンを開始する」


スーパーにて

僕「この果物、安くね?」

嫁「靖国やすくに神社」


道端で犬のフンを踏みそうになったとき

僕「あぶな!」

嫁「アブナプトラ(『ハムナプトラ』のもじり)」


ただ寒いとき

嫁「ゴールデン寒い(『ゴールデンカムイ』のもじり)」


こんな感じで紹介し続けると日が暮れてしまいそうなので、一旦このへんでストップ。

日常生活の中で繰り出されるダジャレを聞くたびに、僕は唸っている。

この女、天才か?と。

もちろん、中には駄作もあるので、そのときは無言で受け流したり、「今のはちょっと不自然すぎ」とたしなめたりしているが、総じて、嫁のダジャレは目を見張るものがある。


最後にもう一つ。

かなり前の話だが、サッカーの日本代表vsチリ代表の試合を、嫁と一緒にスタジアムに観戦しに行ったことがあった。

我々が座っていた観客席のエリアには、結構な数のチリサポーターがいた。

チリ人サポーター、これがまた熱狂的なんですわ。

そのチリ応援団がひたすら繰り返す、次のようなチャント(応援歌や応援の掛け声)があった。

Chi Chi Chi!! Le Le Le!! Viva Chile!!!
チチチ!!  レレレ!!  ビバ  チレ!!!

この声援、語感が良くて勢いがあって、聞いているだけで楽しい。

あと、チリ人はチリのことを「チレ」って発音するんですな。



そんな試合での一幕。

チリのコーナーキックになった。

チリのキッカーがコーナーからゴール付近に向けてボールを高く蹴り上げると、日本のゴールキーパーがこれを難なくキャッチ。

日本の自陣ゴール付近に、両チーム合計22選手のうち80%以上の選手達が密集していたが、コーナーキックのボールをキーパーが取ったので、一気に日本のカウンター攻撃のチャンスとなる。

カウンターに繋げるには、自陣ゴールに集まっている日本の選手達が、全速力でピッチを駆け上がる必要がある。
広いスペースを生かしながら、ボールを確実に前へと運び、相手ゴールに迫りたいところだ。

そのときだった。

「今だ!散れー!散れー!!」

嫁がそう叫んだのである。

僕はズッコケそうになりながら、冷静にツッコんだ。

「いや、日本の選手たちに『速く散らばれ』って言いたいんだろうけど、『散れー!』だと、チリの応援みたいになっちゃってるから」

嫁は、僕の指摘を受けてニヤリとした。
その表情を見て、わかった。
「散れ」と「チレ」の被りは偶然の産物ではなく、狙っていたのだと。


ダジャレ王、恐るべし。



おわり

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