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過去の悪事〜ウォーリーを探させない〜

今からするのは、世にも恐ろしい、ある破天荒男が過去にしでかした悪事の話である。

あなたや僕のような清廉潔白で成人君子的な人間には無縁であり、少々刺激の強い話であろう。

心して、聞いてほしい。


2014年の冬。あの日僕は、会社の同僚3人と居酒屋で飲んでいた。
そこで、お互いに自分が働いた過去の悪事を発表し合うことになった。
どういう経緯でそういう展開になったのかは覚えていないが、とにかくそうなった。
なんてことはない酒の席の一幕なのだが、同僚Yくんが告白する悪事に、一同度肝を抜かれることになる。

Yくんはこう言った。

「自分の過去の悪事は、子どもの頃、図書館で借りた『ウォーリーをさがせ!』の全ページのウォーリーに丸印をつけたことかな」








『ウォーリーをさがせ!』のウォーリーに◯印・・・

しかも、図書館で借りた、みんなの『ウォーリーをさがせ!』に・・・








わっる!!!!!!!







Yくんの悪事のレベルが高すぎて、僕は不覚にも少し取り乱した。
僕は恐る恐るYくんに訊いてみた。

「えっと…図書館でその『ウォーリーをさがせ!』を次に借りた人はウォーリーを探す醍醐味を全く味わえないってことだよね?」





Yくんは答えた。

「うん、そうなるね。ウォーリーはここにいますって、全ページで目立っちゃってるからね」







なんてことだ。

神様、ここにとんでもないワルがいます。

『ウォーリーをさがせ!』のウォーリーに印をつけて次の人の楽しみを奪うというのは、絵本業界史上、いや、人類の歴史上、最上級にワルいことだと言っても過言ではない。

それは、これからスターウォーズを全エピソード観ようとしている友人にダースベイダーの正体を暴露してしまうこととと同等かそれ以上の悪事と考えて差し支えない。

法律の観点から見ると、図書館の本に落書きをすることは、器物損壊罪にあたる可能性があるらしい。
ただ、ウォーリー愛読者の僕としては、この罪が器物損壊罪で裁かれるのはしっくり来ず、「ウォーリーを探す夢のひとときを奪った罪(ざい)」という罪状でYくんを裁きたい。
刑罰は、懲役や罰金だとヌルいので、「死ぬまでずっとウォーリーと同じ格好をしなければならない」という罰を課したい。
ウォーリーといえば、おなじみ、上は紅白のボーダーに下はジーンズ、そして紅白のニット帽である。丸めがねとスネ夫ヘアーもマストだ。
その格好でYくんが婚約者の父親のところに挨拶に行って「娘さんを僕にください」なんて言おうもんなら、お断りされるだけでなく出禁扱いになるだろう。
その格好はどこからどう見ても、無職で無責任な男に見えるからだ。
それが、『ウォーリーをさがせ!』のウォーリーに印をつけたことの報いである。
ただ、このウォーリーの格好は、かくれんぼに有利という利点があるので、悪いことばかりではないことも付け加えておく。


世の中の『ウォーリーをさがせ!』ファンの皆さんへ。
ドント ウォーリー。
この大悪党Yくんは僕が責任をもって叱っておきました。
Yくんは子ども時代の出来事とはいえ、大変反省しておりました。
よって、このようなYくんのイタズラは、二度と起こりません。


ちなみに、その日はつい盛り上がってお酒が進み、翌朝の二日酔いのひどさったらなかったとさ。


おわり

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