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あたらしい枕

 枕を買った。その枕は先日ホテルに泊まった際にレンタルして使用したもので、使い心地が良かったため、商品名を書き留めていたのだった。
 けれど実際に届いた枕は、あのとき使用したものと間違いなく同じ商品のはずなのに、使い心地がまるで異なった。あのときはこんなにぱりっとしていなかった。高さだって違う。『標準』『低め』のうち『低め』を選択したというのに、あのとき使ったものよりも断然高めに感じ、落ち着かなかった。
 それでも、新しい枕を使い始めて今日で五日。徐々に馴染んできたように思う。
 あのレンタル枕は、何人もの頭と首を受け止め続けたが為に、くたりと柔らかくなったのだろう。単純な話だ。

 ところで、私は今村夏子さんの小説『こちらあみ子』が大好きだ。改題前は『あたらしい娘』というタイトルだった。
 この記事を書き始めたとき、ふとそのことが頭に浮かんだ。
 私の新しい枕も使い続けるうちに少しずつ変容していくのだろうと思うと、楽しみになった。

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