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2023年11月25日 Candytree GardenVol.3を終えて 金属恵比須と私の歴史

2023年11月25日。
馬車道にあるまごころ居酒屋・Roundaboutの10周年を記念して横浜ランドマークホールで行われた、Candytree Garden Vol.3は、総出演バンド5バンド、4時間50分というボリュームの中、大盛況に行われた。
この日の出演アーティストはどれも大変素晴らしく、この日の出来事もまた後日noteにまとめたいと思っているが、やはりどうしても金属恵比須だけは個別に記事を書きたいと思った。
この日の金属恵比須のセットリストは、こちら。

2023年11月25日 Gandytree GardenVol.3
金属恵比須 セットリスト
1.ゴジラVSメカゴジラ・メインタイトル
2.新府城〜武田家滅亡
3.魔少女A/イントロ
4.ハリガネムシ (Guest:難波弘之)
5.邪神覚醒
6.猟奇爛漫

ワンマンではなくフェスの一枠のため若干コンパクト感はあったが、Roundabout店主セレクトのセットリストはライブでも盛り上がるハードロックな曲が多く選ばれ、この日のライブのトリに相応しい盛り上がりだったと思う。個人的には、毎回のライブで恒例だったライブオープニングの映画「八つ墓村 」メインタイトルが、この日ゴジラVSメカゴジラ・メインタイトルに変わっていたのが斬新だったし、ハリネムシで宮嶋さん、高木さん、そしてゲストの難波さんによる3人ソロ回しという貴重なシーンが見られたのが熱かった。何より、ずっと金属恵比須にはもっと広い会場でライブをやって欲しいと思っていたので、ランドマークホールの素晴らしい音響と広いステージで演奏してくれたのは嬉しかったし、稲益さんが作成されたバックスクリーンの市川崑監督風金属恵比須ロゴも渋くて最高にカッコよかった。この日から演奏参加された新メンバーの埜崎ロクロウさんは歴代ベーシストとも違うタイプの演奏者だけど、しっかり骨組みを支えていて金属恵比須の音にも合っていた。とてもライブ映えする人材なので若いファンも増えそうで期待だ。
詳細は、すでに常連ファンの方々がX(旧twitter)等に素晴らしい内容のライブレポを多数ポストされているので、そちらを参照されることを推奨したい。

ここからは、ごく個人的な、金属恵比須との歴史と思いを綴ろうと思う。

金属恵比須の存在自体は、ハリガネムシが世に出された2015年頃から知っていた。当時は、年代問わず多くのファンがあちこちで絶賛しまくっていたのが印象に残っている。その頃の自分は外国にかぶれ過ぎていたので、まだ金属恵比須の魅力を十分に理解するには早かったのかも知れない。アルバムをきちんと買って聞いたのは、数年後に知人からの推薦で買った、阿修羅のごとくが始まりだった。
冒頭からメロトロンの洪水、激しくも切ない稲益さんの歌唱、オールドな英国風Keyに載せられる昭和の角川映画のような情念込められた歌詞が心を掴んだ。ハリガネムシのライブ音源も入っており、当時の入門編としてはとても良いミニアルバムだったと思う。
そこからハリガネムシ、光の雪など代表曲を聞くうちに徐々に惹かれていった。ただ、当時はとても薄給な地方住まいだったため、往復4万円の遠征費用はポンと捻り出せるものではなかった。

そんな自分に、とっておきのチャンスが巡ってくる。2018年4月29日、神戸チキンジョージで行われるExProg×078というイベントに、金属恵比須が出演する。神戸までなら安く行けて、夜行便もあるから次の日の仕事にも間に合う。ようやく金属恵比須をライブで見ることができるのだ。
そうして初めて生で観た金属恵比須は、スタジオ盤で聴くのともまた違っていて、ラウドで迫力があって、とてもロック!和製プログレッシブ・ハードロックとは何かを体現したかのような熱いライブで、彼らの真価を体感することができた。前年に発売されたアルバムから武田家滅亡のサビ「武田家!滅亡!」を一緒に叫んだのも楽しかった。
なかなか遠征は難しいが、またいつかきっとライブに行きたいなと思っているうちに、月日は流れた。2019年は仕事が忙しくほぼライブに行けなかったので、そろそろライブに行こうかなと考え始めた2020年にコロナが流行してしまう。私はショックで、しばらくプログレを聴けなくなった。海外アーティストの来日は絶望的になり、中には永久活動停止したバンドもあった。もう二度と、ライブを観る幸せは体験できなくなってしまうのかも知れない・・・と思うと辛くて聴けなかった。
そんな状況の中でも、金属恵比須はスタジオアルバムの黒い福音をリリースし、コロナ禍という困難をPink FloydのLive at Pompeii日本版というチャンスに塗り替えて2021年8月8日に無観客配信ライヴを決行。無観客で配信ライブを行うことはきっとそれなりの赤字になったであろうが、これも大変素晴らしいライブだった。SNSでも、常に更新情報を発信し続けてファンとの繋がりを維持してきてくれた。これが、どれほどの心の支えになったか、言葉で表しきれない。例え今後海外アーティストが来日できなくなっても、国内には金属恵比須が居るという安心感があった。
2022年はまだまだコロナが怖かったので4月のライブと12月の不思議ロックフェスは配信での参加だったが、12月のワンマンは絶対に行くつもりで楽しみにしていた。メンバーの体調不良によりやむを得ず延期になってしまったけれど、こんな経緯を経てようやく参加できたのが2023年2月のシルエレでのワンマンライブだったのだ。
2023年2月4日に吉祥寺シルバーエレファントで行われたワンマンライブは、コロナ禍以降2022年4月30日の高円寺HIGH以来の有観客ライブで、稲益さんが「楽しいー!」と言ってくれたり、お客さんもみんな幸せそうだったのがとても印象的だった。虚無回答のレコ発ライブということもあり、人口実存などの数々の難曲をアルバム以上に実現してみせたのは見事だった。

その後、金属恵比須は3月と4月に2回ライブを行っていたが、転職活動や海外遠征等で行けなかった。正直、国内ならいつでも見れると油断していたのかも知れない。残すチャンスは、10月8日の大阪中津Vi-codeでのワンマンライブ、そして今回の11月25日の2回となった。
だが、10月の大阪ワンマンライブ開催前でBa.の栗谷さんの活動休止が発表され、続いてKeyの宮嶋さんの脱退というニュースが発表された。
私はニュースを聞いた後、大阪行きの日帰り新幹線のチケットを買い、中津Vi-codeまでワンマンライブを見に行った。
この日のライブは、1人人数が減っているにも関わらず、とてもロックで良かった。Bassist不在というイレギュラー事態にあっても、稲益さんや宮嶋さんが代わる代わるベースを弾き、いつもと違った音・アレンジで楽しむことができた。当たり前だが、やはり奏者が代わると全くベースも変わる。稲益さんは小柄ながらもかなり骨太でブリブリとしたベースを奏でていたし、宮嶋さんは元々他のバンドでベースを演奏されていたこともあり、リッケンバッカーでしまった音を奏でていた。一部の曲は栗谷さんのベース音源をテープで流して演奏。多分全部の曲をテープ音源で流して演奏しようと思えばできなくもないはずだが、それをやらずに生演奏を重視するあたり、尋常ではないプロ魂とこだわりを感じる。
そして残すは11月のライブのみとなったとき、ちょっと複雑な気持ちになる。今の会社でなんとか半年頑張れたのも、この11月のライブに行くことを糧にしていたから。でも、このライブが終われば、金属恵比須で演奏する宮嶋さんが観れなくなってしまう。

宮嶋さんは、私が金属恵比須を好きになった理由の中で大きな割合を占めていた。Keyboadプレイヤーとしての宮嶋さんももちろん好きだが、作曲家・編曲家・サウンドプロデューサーとしての宮嶋さんが特に好きだった。人間椅子きっかけで入るファンが多い中、自分はおそらく少数派であると思われる、人間椅子をあまり通っていないファンだ。過去のコテコテの人間椅子ライクなオールドなハードロックナンバーも好きだけど、そこに宮嶋さんの裁量が加わることで、より英国オールドプログレな要素が強まったり、逆に現代的な要素が加わって中和されてバランスが取れるような、化学反応が良かった(自分は勝手にこれを宮嶋マジックと呼んでいた)。巡礼のような、清涼感と切なさのある楽曲が聴けなくなるかと思うと、とても寂しい。

栗谷さんも、2024年には戻ってくると信じていたのが、脱退となってしまったのはショックだ。栗谷さんが居なければ、安土御殿の想い出のような、クラシックギターでありながらどこかスティーヴ・ハケットを感じさせる名曲は生まれなかったと思う。

だが、常に変化し続けてこそプログレッシブロックだ。
まだKeyの後続メンバーは決定していないが、来年4月には那由他計画の塚田さん、8月には烏頭の大和田さんと、どちらも著名かつ個性的な奏者がゲストに迎えられることが発表される。
これらが、新しい科学反応を起こし、きっと名演を生むに違い無い。
それに、Ba.は埜咲ロクロウさんが正式加入した。彼の参加した秋葉龍Projectの2ndアルバムは各方面で絶賛されている通りで大変素晴らしかったし、幅広いジャンルのバンドに参加されているので、彼をきっかけに新しい分野からの若いファンも増えるに違いない。プログレッシブロックを30年・40年後も存続させるためには、私たちファンも、様々な変化を受け入れて進化していかなければならない。

金属恵比須公式X(旧Twitter)

https://twitter.com/yebisjp


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