セラムン二次創作小説『分かっているから、何も言わないで』


「アイツはやめといた方がいいぜ」


相棒のアルテミスにそう言われ美奈子は悲しくなった。

まさかアルテミスまで在り来りな言葉で否定されると思ってなかったから悔しかった。


「アルテミスまでみんなと同じことを言うのね!」


応援してくれるとは思ってなかったし、して欲しいとも思ってなかった。

だけど否定されるのは辛かった。

勢い任せで捨て台詞を吐き、その場を走り去る。

アルテミスの顔は見たくなかったからだ。


「美奈!」


怒らせちまったな、とアルテミスは項垂れて反省する。

アルテミスとて、否定したかった訳では無い。

ただ、忠告しておきたかった。

不良だからダメだと言った訳では無い。

確かに相棒としてはとても心配だ。

だからと言って不良とは付き合うなとは思わない。

美奈子が幸せであればなんの文句も無い。

それでいてセーラーVを疎かにしなければなおのこと。


ただ、相手の顔を見て遠い昔の記憶が蘇ってきた。

かつて彼女がセーラーヴィーナスとしてプリンセスに仕えていた時の事を。

地球国の王子と逢うプリンセスの付き添いで知り合った王子直属の部下。

ヴィーナスと同じでリーダーをしている男、クンツァイト。その男にとても似ていると思ったから。

アルテミス自身はそこまで顔見知りではなかったが、2度ほど少し顔を合わせた程度に過ぎなかったが。


「アルテミスの、バカ……!」


心配してくれていることは伝わっていたが、つい意地を張ってしまった。

勢い任せでそのまま出会ったいちょう並木道にいつの間にか来ていた。

足が勝手にここに向いていた。美奈子自身も驚いていた。


「決めたんだから!」

「何を決めたんだ?」


喝を入れる為、叫ぶと想い人に話しかけられ驚く。


「斎藤先輩!」


偶然でもまた会えた事に運命的なものを感じる。

だけどこれもまた違うんだと分かっていた。

いつも見ていたから、気づきたくもないのに気づいてしまった。

先輩には好きな人がいるという事を。

どう頑張ったって振り向いて貰えないってことを。


「よう、美奈子!」


こちらの気持ちは何も知らず、爽やかな笑顔で挨拶をしてくる。ズルいと思った。

決心した気持ちが揺らぎそうになる。

だけど、振られると分かってはいても伝えたかった。

伝えてスッキリした気持ちで前に進みたかった。

答えがわかっていてもちゃんと気持ちを伝えておきたかった。


「斎藤先輩、あのっあたし……」

「ん、何だ?」


告白なんて実は初めてだった。

前にしようと思っていたことがあったけど、色々あって結局出来なかった。

お陰で気持ちの整理がつかず、モヤモヤしていたから。

もう同じ様な想いは真っ平御免よ!

玉砕覚悟で告ってやるわよ!


「あたし、斎藤先輩の事……好きです!」

「美奈子、ありがとう。でも……」


告白すると途端に先輩の顔が少し曇る。

ほら、ね?好きな人がいるからその気持ちには答えられないって在り来りな答えが返って来るんだよ。


「いいんです!答え、分かってて気持ち、伝えたかっただけなんで!それじゃ!」


斎藤先輩から直接“NO”の言葉を聞きたくなくて早口でそう言うと顔を見ることも無く早足でその場から立ち去った。

走ってる間中、止めどなく流れる涙に想いを乗せて。涙と共に斎藤先輩への想いを流し切る。


家に帰る頃には涙は止まっていた。

斎藤先輩への想いも過去のもの、になるにはもう少し経たないとムリだけど。

兎に角言えた事でスッキリした!


さぁて、次のいい男探すぞーー。


アルテミスにも謝んなきゃね!





おわり



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