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一年経ったいまだから語りたい「ガンダムビルドダイバーズ」シリーズ

この記事は2021年7月に公開した記事を再投稿したものです。

ガンダムビルドダイバーズとは、ガンダムのプラモデル、通称ガンプラを用いたオンラインゲームを舞台とした物語だ。ガンプラが主役なので当然ガンダムの世界ではなく、ガンダムという作品が世界的に認知されている現代社会が舞台となっている。

ちなみにガンプラものの作品は過去にもいくつかあって、ガンダムビルドファイターズシリーズが有名で、なによりもこの路線のアニメを成功させた作品でもあると思う。

ガンプラの販促アニメでありながら、子供向けでありながら、大人が見ても、いやむしろ大人の方がハマれてしまうという不思議なシリーズだ。


しかし今回言いたいのはそこではなく、ビルドダイバーズシリーズだ。個人的にこの路線のアニメの最高傑作といっても過言ではないと思っている。今回は作品を知らない人にも興味を持ってもらえるよう、作品の魅力を損なわないよう最低限のネタバレに留めつつもこのシリーズについて語っていきたいと思う。

※ネタバレ一切なしで楽しみたいという方は読むのを注意してください

大前提としてこれだけは言いたいのだけれど、このシリーズ最大の魅力は「ガンダム」の予備知識がゼロでも楽しめます。間違いなく楽しめます。


ガンダムビルドダイバーズ

ビルドダイバーズは先述したとおり、ガンプラを用いたオンラインゲーム「GBN」を舞台としている。プレイヤーが自作したガンプラとともにログインすることで、ゲーム内でそのガンプラに乗ってバトルなどが行える。

もちろんオンラインゲームなのでアバターがあって、ミッションをクリアすることで報酬アイテムをもらったり、フォースとよばれるチーム制度も存在する。

一作目の主人公はずっと憧れていたGBNの世界へ足を踏み入れ、その世界でさまざまな人と出会う。その中でガンプラバトルの腕を磨いていき、ガンプラ制作の腕も磨いていく。オンラインゲームあるあるを表現しながらも王道の玩具バトルアニメの内容で物語は展開されていく。

しかしビルドダイバーズ最大の魅力は、ストーリーの重さだ。


前半はGBNの楽しさや魅力に触れ、出会いや成長を描きつつ、裏でGBNにはびこっている不正ツールにまつわるエピソードが描かれる。そして不正ツールを配布する元凶と主人公は以外な形で対峙することとなる。

それはGBNは元々GPDとよばれる、ガンプラを実際に動かしてバトルする遊びであったこと。そしてその時代に取り残されている世代との確執だった。これは玩具というテーマを扱った作品においては、非常に重い内容だ。

どんなコンテンツも流行りがあれば廃りがある。新しいものは次々と生まれ、自分が好きだったものに取り残されてしまうことは往々にしてある。そんな気持ちを否定することが出来るはずもなく、主人公は相容れない真剣な気持ちをぶつけられることになるのだ。


そうした決して楽しいだけじゃない物語の中で、主人公たちはさらに重い選択を迫られることになる。それは、電子の海で生まれた存在を巡る戦いだった。

物語の後半で今作のヒロインは人間がログインしているアバターではなく、GBN内で生まれた存在だということが明かされる。しかしその存在が生まれてしまったがために、GBNに重大なバグを引き起こしているというのだ。

主人公はここにきて、みんなが大好きな世界のためにヒロインの存在を抹消しなければならないという事実を突きつけられるのだ。

この作品の重さは、GBNには身体が不自由で外も満足に歩けないような人も、GBNでは自由に身体を動かすことができる。そういった人々の支えにもなっているという描写をしているところ。

オンラインゲームに熱中したことのある人ならば誰でも経験があるだろう、その世界が自分の人生の一部になっているという部分はこの作品でもまさに健在なのである。そして何よりも主人公はヒロインとさまざまな思い出をGBNで紡いできたからこそ、その現実に苦悩することとなる。

この物語がどのような結末を迎えるのかは、ぜひ作品を視聴して確かめて欲しい。


ガンダムビルドダイバーズRe:RISE

これだけでもすでにビルドダイバーズという作品がどれだけ重いストーリーであるかを理解してもらえるのではないかと思うが、困ったことに続編であるビルドダイバーズRe:RISE(以下、リライズ)ではこれを遥かに上回る激重ストーリーが始まり、視聴者はひどい胃痛に悩まされることとなった。

リライズの物語は前作から数年後。とある別のキャラクターが主人公となっており、メインキャラクターは一新されている。偶然居合わせたプレイヤーたちが突発の隠しミッションを発見し、それに挑戦していくといった内容になっているのだが、この作品は前半の仕込みがとにかくエグい。


まず第一に、主人公はかつてGBNをかなりやり込んでいたプレイヤーだったのだが、今ではたまに顔を出す程度にしかログインしないようになってしまっている。

そんな主人公の腕を見込んで無理やり隠しミッションに連れてきたのは、目立ちたがりでリーダーシップを発揮しようとするものの的外れでむしろ周囲の足を引っ張りがちなとあるプレイヤー。

そしてそこに偶発的に居合わせた他のプレイヤーたちもさまざまな事情を抱えており、チームとしてミッションに挑戦していかなければならないにも関わらずメンバーはとにかくバラバラ。連携なんてものはなく、それぞれがワンマンプレイをしていくという状態。

それでもなんとか進めてしまうのだが、最初から感じていた隠しミッションへの違和感は徐々に恐ろしい事実と変わっていく。隠しミッションだと思ってプレイしていた場所は、実際に宇宙のどこかに存在する惑星で、そこでゲームのNPCだと思っていた現地の人々はそこに暮らしていた現実の人々だったのだ。

しかも大詰めとなる作戦を失敗してしまい、敵の攻撃によって街はまるごと消滅してしまう。大勢の現地の人々が実際にいなくなってしまった現実を目の当たりにしたところで、主人公たちはゲームから強制的にログアウトさせられてしまう。

それは敵の攻撃の余波が地球にも電磁波となって伝わり、地球全体に電波障害が起きたせいだった。自分たちが遊び感覚でプレイしていたものが、本当に存在する場所で起きていた出来事であるという事実を突きつけられ、そのタイミングでGBNにログインできなくなってしまった主人公たちは、電波障害がなおるまでの間にもう一度向き合うべきかどうかを考えさせられることとなる。

そしてもう一度、今度こそ別の惑星の世界を救うために立ち上がる。というまさにリライズというタイトルを体現したかのような物語となっている。


正直言うとリライズはあまりにも重すぎてここでは書ききれない部分が多々ある。いまざっくりとしたあらすじを書き出したにも関わらず、ここでは触れていない重大な話が他にいくつもある。

そして前作の物語とどうリンクしていくのかという点についても、リライズではこれ以上ない描写をしていくれている。しかしそれはあまりにも残酷で、あまりにも非常な現実だ。

この物語がどのような結末を迎えるのかは、ぜひ作品を視聴して確かめて欲しい。


ビルドダイバーズ一作目だけでも十二分に楽しめる作品なのだが、このシリーズはリライズへと続くことでその世界観を完璧に描ききっている。そしてそれだけ重い作品でありながらも、観てよかったと思えるエンディング、そしてガンプラへの販促として完璧な作品に仕上がっているのだ。

ガンダムというタイトルを冠しているがために入りにくい視聴者もいるのではないかと思うが、この作品こそガンダムに知識のない人でもぜひ視聴して欲しいと思う作品のひとつである。


余談だがリライズはボク個人が思う2020年アニメで頭一つ抜けて優勝だと思っている。2020年という、ものすごいアニメラッシュだった年にも関わらず、である。

ひとつだけ言えるのは、このアニメは間違いなく人生が変わる。

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