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ももこの小学校生活 ①電車通学ができるまで

ももこは通っていた幼稚園の近くにある公立小学校を選び、電車で通う事になった。

その当時、同じ区内での越境入学はそれほど厳しくなく、知り合いがいればあっさり認めてもらえた。

とはいえ小学生になったばかりのももこが一人で電車で登校するには私も相当不安があった。
当の本人はどう考えていたのか、幼稚園と同様私が登下校の付き添いをするものと思っていた節もある(本人は言わなかったけれど)。

さてどうしたものかと考えた結果、入学式の翌日から一人で電車に乗せるのは母娘どちらも不安。それならば、一人で電車通学ができるような付き添い方をしてみようと思った。

人一倍不安感の強いももこなので、いきなり崖から突き落とすような真似をすると、親子の信頼関係にもヒビが入る。
そこで、最初の1週間は見知らぬ同級生との学校生活で疲れるだろうから、自宅から校門までの送り迎えをすることにした。

通勤通学で満杯の電車の中でも、どの車両が比較的空いているか、その中でもどのあたりに隙間ができやすいかを観察させ、安全な場所を確保して電車に乗るように教えた。
そして、私に連れられて歩くのではなく、駅のホームでスムーズに歩けるようにしっかり周りを見ることも教えた(つもり)。

下校時に校門で待つ私の顔を見て少しほっとした表情を見せるももこ。
初めての学校生活で楽しい事もあるけれど、やはり気疲れするようで帰宅すると寝てしまう事も多かった。

ももこの様子を見ながら、2週間目には私は校門ではなく最寄り駅の改札口で待つことにした。
改札口で間違いなく私が待っていることを覚えてもらい、安心させるようにした。

さらに一週間ほど経ってから、改札口ではなく小学校の最寄り駅のホームまで送り、そこからは一人で行くように促した。
電車を降りて、「じゃあ行ってらっしゃい。帰りもこのホームで待っているよ」と言って学校に向かうももこをホームから見つめた。

次からのステップが少し難しかったが、ゴールデンウィークがあったのでももこにはちょうどいい中休みになったようだ。
①乗換駅まで連れて行く、②自宅最寄り駅で見送る
2段階のステップを経て電車通学に慣れさせるようにした。

①私鉄を一度乗り換えないと小学校へは行けないので、A線の電車に乗り、乗り換えるB線のホームまで連れて行き、ももこが電車に乗るのを見届けた。
少し不安そうに振り返りながら電車に乗るももこに、「ももこはできるから大丈夫だよ、心配しないで行ってらっしゃい」と声を掛けて電車に乗せた。
このステップに10日ほどかけた。

②自宅のある駅から乗換駅までももこを連れて行き、そこで見送る。
B線のホームは階段を上って線路を渡るのだけれど、階段下までももこと一緒に行って、そこで「いってらっしゃい」と送り出した。

③10日ほど経ってももこがスタスタ乗り換えられるのを見届けてから、自宅のある駅で見送ることにした。自宅から駅までは5分程度の距離だったので、少しお喋りしながら駅に向かい送り出した。

こんなことをしていたら季節は梅雨近くになっていた。
ももこは、電車の中での出来事をよく話してくれた。
ももこのランドセルを自分のバッグの置き場にするおじさんや、電車通学しないで歩いて通いなさいと言うおばさんの話に、呆れたり笑ったりの毎日だった。

本が大好きなももこは、図書室で借りた本を帰りの電車で読むのが日課だった。ある日「チロヌップのきつね」という本に夢中になり下車する駅を乗り過ごし、ももこが大慌てした事は今でも語り草となっている。
ももこは電車通学をしながら色々な事を覚え、吸収していった1年間だった。

遠くの学校に通わせている親御さんの心配はいかばかりだろうかと、私は私立の制服を着た低学年のお子さんを見るたびに思った。
ももこが通うのは遠くの私立ではないし、家から小学校まで電車に乗っても30分の距離だけれど、通勤の大人に混じってももこが無事に登下校ができるようにと、私もない知恵を絞ってそれなりに頑張ったのだなあと思う。
同じ小学校には電車通学の子が一定数いたので、電車組の子ども達が自然と仲良くなるなど、一人じゃないと思えた事も良かったのだろう。




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