科学技術は人間を豊かにする一方で人間の愚かさを増幅させる
ツイッター上での誹謗中傷により、若い女性が自ら命を絶った。
心よりご冥福を祈りたい。
本来ツイッターは、時間や空間の制限を超えて、誰でも安価に情報を発信できる、人間を豊かにする道具である。
しかし、便利な道具は、時に、人間の愚かさを増幅する装置になる。
ダイナマイトは、トンネル工事などの崩落事故で人命が失われるのを防ぐのに、大いに役立ったが、後に、戦争に使われるようになり、多くの命を奪うこととなった。
その汚名を晴らすために、ノーベルが「ノーベル賞」を創設したことはあまりに有名な話である。
飛行機も、元々は、人間をより早く、より遠くに運ぶために開発されたものであったが、やがて戦争の道具として使われるようになった。
ツイッターも同様である。
今回の悲しい事件の本質は「いじめ」であり「集団リンチ」である。
そのこと自体は昔からあり、今に始まったものではない。
しかし、たちが悪いのは、世界中からいじめっ子が集まれるようになり、世界中からいじめる標的を見つけられるようになったことである。
学校に3人のいじめっ子しかいなければ、3人からのいじめで済むが、全世界に3万人のいじめっ子がいれば、3万人から攻撃を受けることになる。
そして、一人いじめては、次から次に、WEBの世界を旅していじめる対象を探す。
もっと言うと、本来いじめる勇気のなかった者でさえも、相手が見えないことと、匿名であることを良いことに、気軽にいじめに参加する。タチの悪いことに、「いじめているという自覚」のないままに・・。
リアルのいじめであれば、目の前に、傷ついたり苦しんだりする対象が見えるため、この辺でやめておこうという制御も働くが、目に見えない世界では、言葉のナイフを使って見えないままに刺し続ける。
そこには、相手に対する想像力のかけらもない。
想像力は、経験によって獲得するものである。しかし、リアルのいじめに対する風当たりが強まるのに伴い、目の前でいじめを目撃することは減ったのだが、皮肉にも、どの程度、何をしたら、相手がどの程度傷つくのか?という想像力を全く養えなくなってしまった。
ましてや、目に見えない電脳空間での言葉のいじめである。想像力のない子は、延々と言葉のナイフで相手を刺し続ける。
本来、WEBの世界は便利で素晴らしいものである。我々は、時間や場所の制約から解き放たれ、自由に情報を仕入れ、人と交流し、世界を旅することができる。
しかし、いかなる科学技術も、未熟な人間が使えば、悲劇を増幅させる装置化す。
全ての人は、そのことを肝に銘じておいてほしい。
そして、一番危険なのは、ツイッターに誹謗中傷を書いた人間に対し「こんな奴は許せない」と思った人である。
あなたのその「正義」とやらが、またどこかで誰かを「死」に追いやるのかもしれないのだから。
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