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月刊読んだ本

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毎月読んだ本をまとめる。もっと本を読めという自分への戒め。
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#西澤保彦

月刊読んだ本【2023.12】

どろどろの聖人伝 清涼院流水 (朝日新書)  清涼院流水によるどろどろキリスト教シリーズ第3弾。  知らない話ばかりでおもしろい。ていうかすぐ処刑しすぎでしょ。それだけキリスト教が脅威的な存在だったというのもあるだろうけれど。 SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと チャールズ・ユウ/円城塔 訳 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)  メタフィクションの展開になって複雑だった。ループに囚われた母と失踪した父に思いを巡らせる自分がループしている。しかも未来の自分から届けられ

月刊読んだ本【2023.11】

なめらかな社会とその敵 鈴木健 (ちくま学芸文庫)  文庫本のふりをしているけど論文だった。著者の提案する伝播投資貨幣や伝播委任投票がどれほどうまく機能するかは実際にやってみないとわからないよなと思うし、それをやるということは、新しい価値観を受け入れることでそう簡単に浸透するとは思えない。そういう問題点がある。それが敵であり、どのように向き合っていくかは難しい。現状のパレスチナ問題やウクライナの事情等を目の当たりにして次の時代を考えなければならないのは現代を生きる我々の使

月刊読んだ本【2023.10】

人生は図で考える 後半生の時間を最大化する思考法 平井孝志 (朝日新書)  八重洲ブックセンターの八重洲本大賞ノミネート作なので読んだ。  あとは酒を喰らって死ぬだけの僕にはあまり意味のない本だった。50歳ぐらいになればなにかわかるのかな。歳を取ってから新しいことにチャレンジするという精神は素晴らしい。↑→の方向に矢印が伸びている図と↓→に伸びている図が混在していて混乱した。 ラウリ・クースクを探して 宮内悠介 (朝日新聞出版)  すごすぎる。ラウリ・クースクという天

月刊読んだ本【2023.08】

方舟は冬の国へ 西澤保彦 (双葉文庫)  超面白い。そんな展開の話だと思ってなかったけど、よく考えたら西澤さんそういうの好きじゃん。普段はそれを前提にミステリを構築するけど、今作は逆にそこをミステリにしていたのが良かった。  主人公たち三人が高額の報酬をもらって別荘で家族を演じる。その裏にはいったいどんな陰謀があるんだっていうのが話の主軸なわけだが、その着地点が意外で文庫本の裏の紹介文にあるもののとおりだった。そんな話にはならんやろとかどんなふうにそんな着地点にたどり着く

月刊読んだ本【2023.06】

▽先月分 世界の合言葉は森 アーシュラ・K・ル・グィン/小尾芙佐・小池美佐子 訳 (ハヤカワ文庫)  僕が本書のタイトルを知ったのは10数年前になる。人類史上最高のゲームである『サガ・フロンティア2』のラスボスがこの技を使ってくるのである。『世界の合言葉は森』という技を。サガシリーズでは、ディレクターである河津神の趣味なのか、武器や技の名前にSF作品の名前を引用することがある。そのひとつがこれだ。この印象的な技の名前は何だと調べてみたらSF小説のタイトルだと知った。そして

読んだ本【23.04】

13歳からの地政学 田中孝幸 (東洋経済新報社)  全人類読んだほうがいい。中学生の時にこういう話を聞きたかった。でもいま読めたのは幸運なことなんだ。世界には文字が読めない人だって大勢いる。日本人は日本語が読めて日本語の本が出版されて容易に手に取れることを大いに感謝しなければならないし誇りに思わないといけないと思った。それと同時にそうではない国のことを考えなければならない。自分はたまたま恵まれた環境や時代に生まれ育っただけだとあらためて自覚する。中学生のときに聞きたかったの

読んだ本【23.03】

祐介・字慰 尾崎世界観 (文春文庫)  才能しかなかった。彼の音楽は全然知らないから逆に新鮮な気持ちで読めた。自伝的小説、かどうかは知らないけど、かつての自分がいた世界を描くのは勇気がいることのようで一種のオナニーでもあるなと思った。やるせなさやもどかしさが寄り添っていた「祐介」だった「世界観」が痛々しくも愛おしくもある。少なくとも私にはもうそんな若さはないのかもしれない。 屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理 春日武彦 (河出文庫)  こういう本を永久に読ん

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読んだ本【2023.02】

火星の人 アンディ・ウィアー/小野田和子 訳 (ハヤカワ文庫)  最高だった。じゃがいも食べたい。 『オデッセイ』という映画の原作。映画も面白かった記憶が薄っすらとあるけれど、原作も名作だと聞いて読んだ。今年の目標はSFを読むことなのだ。  全編通してワトニーのユーモアが楽しいし、数々の困難を切り抜ける頭脳と行動力に感動する。想定しうるアクシデントを丁寧に描いていて出来うる対処をさせている作者の力量に脱帽、という感じだ。(おそらく)科学考証がしっかりしているため、引き込まれ

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読んだ本【2023.01】

悪童日記 ふたりの証拠 第三の嘘 アゴタ・クリストフ/堀茂樹 訳 (ハヤカワepi文庫) マリオネット・エンジン 西澤保彦 (講談社ノベルス)  西澤保彦のSF短編集。  文庫化していないからなかなか見つからなかった。仙台の古本屋で見つけた。  普段ミステリを書いている人だから、話の途中でミステリ的な展開に(書いていて)なったりしないんだろうかと思った。読んでいてミステリにならないから変な感じがしたけど、性的な要素を入れてくるのは西澤保彦だなぁと思った。表題作と『家の中』

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