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鹿島アントラーズの新人獲得戦略を展望してみた

執筆:パダワン
サムネイル:AKIRA
編集:タケゴラ

Jリーグも折り返し。夏の移籍市場が動き出すと共に、各クラブの強化部は次年度に向けた新人のスカウトや交渉を進めているだろう。もしかしたらこの記事が出る頃には鹿島が新人選手の内定リリースを出しているかもしれない。

そこで今回は、鹿島アントラーズの新人獲得戦略について考察していこうと思う。鹿島は現在、常本佳吾を筆頭に林尚輝、早川友基らの大卒組が徐々に即戦力として組み込まれつつあり、個人的には戦略の潮目が変わりそうな予感がしている。そのため、これまでの戦略の振り返りと共に、今後の戦略を展望していく。

■ここ数年の実績

これまで鹿島は内田篤人、大迫勇也、柴崎岳、昌子源らの日本を代表する選手たちを高卒で獲得、育成してきた。もっと遡れば、小笠原満男、曽ヶ端準、中田浩二、本山雅志、柳沢敦など、キリがないくらいの輝かしい実績がある。

早速、アカデミー出身選手として東京五輪代表入りした町田浩樹の世代を起点に新人獲得実績と内訳を見ていく。(ノルテジュニアユース出身の上田綺世も選ばれている)

※特別指定加入の大卒選手に関しては、卒業年にカウント

【2016】
大学:0名
高校:0名
アカデミー:4名(現所属1名、レンタル移籍中1名、退団2名)

合計:4名
【2017】
大学:0名
高校:2名(レンタル移籍中1名、退団1名)
アカデミー:0名

合計:2名
【2018】
大学:1名(退団1名)
高校:0名
アカデミー:1名(現所属1名)

合計:2名
【2019】
大学:1名(レンタル移籍中1名)
高校:1名(現所属1名)
アカデミー:2名(レンタル移籍中2名)

合計:4名
【2020】
大学:1名
高校:3名
アカデミー:1名
※全員現在所属

合計:5名
【2021】
大学:3名
高校:2名
アカデミー:1名

合計:6名

ざっと振り返ってみたが、レンタル移籍で抱えている選手がいるとは言え、個人的にはチームに順応させ戦力化することに手こずっていると感じる。これまで鹿島はトップクラスの高卒選手を育成することに定評があったが、市場の変化と共に厳しい状況に立たされつつあるのが実情な気がするのだ。

■強化部が抱えていそうな(いる)問題

まず、新人選手を獲得する上でクラブがどのような問題を抱えていそうなのか(いるのか)整理してみよう。

・海外移籍の早期化
実際に鈴木満さんも口にしてはいるが、近年のJリーグでは有望な高卒選手を獲得して主力レベルに育てあげても、早期に海外へ引き抜かれる可能性がかなり高くなってしまっているということ。鹿島で典型的な例がバルセロナBに移籍した安部裕葵だ。彼の場合、高卒で入団し早々に鹿島の10番を背負うも、入団後わずか2年半で海を渡った。

いまや鹿島の中心選手になった、上田綺世、町田浩樹、荒木遼太郎らはまさに似たような状況。世代別代表で国際大会に出ている上田はもちろん、左利きで長身CBの町田はマーケット内での希少価値が高い。また、彼らよりも若い荒木は当時の安部よりも出来すぎぐらいのパフォーマンスを見せている。同期入団の松村優太や染野唯月も後半戦の活躍次第では海を渡る可能性も十分ある。

・日本代表エースのユウヤ・オオサコ、
・レアル、バルサからゴールを奪ったガク・シバサキ、
・複数の欧州クラブが目をつけているユウマ・スズキ(アカデミー出身)、
・無名の高校生ヒロキ・アベをバルサへ、
・チームはクラブW杯でレアルを追い込んだ、
・レジェンド「ジーコ」が在籍
…etc.

それっぽい情報を揃えば、仮に日本のマーケットに目を向けているクラブから鹿島が国内クラブの中でも信頼が置けそうで候補リストの上位になってもおかしくない。

ただこの早期化傾向は鹿島だけでなく、Jリーグ全体の流れでもある。

>『欧州での知名度がそこまで高くなくとも、Jリーグで活躍している日本人選手はオランダ、ベルギー、ポルトガルなどの欧州5大リーグ周辺国においても活躍が期待できる』ということが証明されてきたことで、欧州中で日本人選手への認識が変わってきています。

>欧州クラブ側にも『いずれ数十億円まで価値が上がるであろう有望な若手をできるだけ安く獲得したい』という需要が高まっているのです。日本人選手側も『欧州に行きたい』というニーズが強いので、そこが合致して『日本人選手はコストパフォーマンスが良いのでオファーが殺到する流れ』ができているのが大きな理由です」

■鹿島の今後は如何に

・大卒選手獲得
まず短期的な視点で見ると、2021シーズンの新人選手の活躍で鹿島は大卒選手獲得に味を占めるだろうと思っている。常本佳吾で言えば、国内でも実績ある広瀬陸斗や小泉慶を差し置いてレギュラーを確保し、今やれっきとした主力選手である。もちろん彼のポテンシャルを忘れてはいけないが、スタメン定着までのスピード、パフォーマンスを考えるといかに大卒選手がコストパフォーマンスの高い選手だと言えるだろう。また、年齢的にも22~23歳は高卒(17~18歳)よりも欧州のスカウト網から逃れやすく、長期にわたってチームを支えてくれる選手になってくれる可能性が高い。昨年の加入内定者を見ても、各チームでレギュラー格ばかりを大学サッカーは輩出しており、安定的に即戦力を確保できる手っ取り早い手段でもある。

要は、他クラブの中堅で補う(強化する)のではなく、

1.「既存の主力選手+大卒組(割合高め)」のセットで戦力を維持
2.引き続き高卒からダイヤの原石発掘作業(これまでよりも厳選)
3.アカデミーの土壌が整う→後述

という流れに切り替えるかもしれない。

・アカデミー出身の有望株を多数輩出
次はもう少し先の話。鹿島は現在、アカデミー選手用の施設の新設などアカデミー強化にも力を入れている。有望株発掘の確率的にはユース選手にこだわるのではなく、大迫や柴崎のようなトップレベルの選手を全国からスカウトした方が当然高くはなるのだが、あくまでこれは短期的な話。

>アカデミー出身選手を積極的に海外に羽ばたかせることで『下部組織から欧州で活躍する選手を輩出した』という実績を作り、それによってまた良い素材がクラブに集まってくる好循環を作っていこうという考えです。

例えば、世代別代表常連の中学生が進路を選択するときに青森山田高校やFC東京U-18ではなく、鹿島アントラーズユースを自然と選ぶようなサイクルを作るようなものだと思う。そうなれば、ユースからトップ昇格する選手が増え、やがてはユース→欧州のルートもできるかもしれない。また、獲られる側のJリーグにおいて、欧州から「カシマナラ、イイプレーヤーイソウダヨネ」とブランド化できるメリットもある。

・育てて売る
そして、その鹿島式アカデミーの神サイクルを確立できれば、次は移籍金による恩恵を受けることができるということだ。

>ベンフィカくらいのクラブが典型だと思うんですが、国内級のビッグクラブが『育てて売る』クラブとして完全に舵を切りましたよね。試合を見ていても20代前半以下の選手が本当に多い。そこはもう割り切っている感じ

>ベンフィカのような立ち位置は未来のJクラブが狙い得る一つの理想ではあるのかなとも思うんですよね。『踏み台』『通過点』になることに違和感を覚えるのは当然なんだけど、あえて割り切ってプレーヤーの市場価値を高めて次のステップでの成功率を上げる『良き通過点』となることでサッカー界におけるプレゼンスと莫大な富を手にしている。最近の動きを見ていると、もしかすると鹿島アントラーズはそこを狙ってる、というか『狙うしかない』と思い始めているのかなとも思いますし

■まとめ

僕は移籍市場に精通するものでもなく、全くの素人なのであくまでこれは仮説や理想の話でしかない。ただ、間違いなく言えるのは今シーズンの大卒組のクオリティ、昨年から続く荒木世代の活躍は希望であること。そこからクラブの未来を妄想してみる楽しみ方も面白いのでおすすめだ。

書いた人

パダワン
茨城県出身。自分は何者なのかを日々考えている自称ミステリアスの1996年生まれ。サッカー経験は10年程度。スポンサー企業の社員だった父親の影響でアントラーズを好きに。ライトサポながら2019シーズンからnoteにてアントラーズのマッチレビューを投稿中。好きなものはサウナと梅と鶏肉。
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