見出し画像

読んでほっとするかも「天才たちの日課」

「天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」
メイソン・カリー著 金原瑞人・石田文子訳
(フィルムアート社 2014年)

161人の作家や学者、芸術家たちのその偉大な成果ではなく、日常的習慣だけにスポットを当てた本書。お茶やコーヒーを飲んだり、気分転換をしたりと、彼らのなかなか仕事に取り掛かることができない様子までも垣間見るようだが、実は皆が、仕事をしていない時にも仕事のためのコンディションを整えていたようにも思えてくる。

しかし、なかには明らかに他とは一線を画す日常を持つ人物が登場する。忙しい忙しいと言い続けていたモーツァルト。豆60粒を正確に数えてコーヒーを淹れ、変わった手洗い習慣のために周囲と衝突していたベートーベン。鍋や釜におはようとあいさつをするユング。
一方、クリエイティブよりも日常を重視していた人物もいる。自らの職業を主婦とし、寝室の洗面化粧台や食事の合間の食卓を執筆場所にしていたというアガサ・クリスティーだ。

161人161通りのクリエイティブでないほうの日課。短い文章が連なる構成の本書は、前から順番に読むこともできるし、好きな人物のページから読んでもいい。これまで遠い存在のように感じていた人物も、少し近くに感じることができるかもしれない。

天才たちの日常は、シンプルだ。遠くまで出かけることもない。厳密なスケジュールを守るようなことも稀だ。意外と家の周りで、手軽な息抜きをして満足している。

本書が、これからきわめて異例なGWを過ごす私たちにとって、読んでほっとするものになるといいのだけれど。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?