19世紀の壊れたオルゴールのお話 その1
パリではないフランスで古物パトロールに勤しむ、銀色アンティークの蚤の市日記です。
毎週毎週蚤の市で素敵アイテムを目を皿のようにして探しておりますが、そんな私が最近心惹かれてやまない、100年以上前に流行したカルトドヴィジットと呼ばれる名刺版写真。
とそれを収納していた重厚な存在感の専用アルバムは何とも宝物感あふれていて素通りできません。
皮(風)の装丁やベルベットなど高級感あふれる素材の100年愛用されて擦り切れた風合いがたまらず手に取り、さらに豪奢に出来られた表紙に目が行きます。真鍮の飾りプレートなどでデコられており、当時のブルジョワ家庭では一家に一冊とっておきに豪奢なアルバムを所持するというのがステイタスだったみたいです。
そんな魅力あふれる名刺版写真用アルバムらしきものを目の端にとらえたある日の蚤の市で…
掘り起こし手に取ってみるとやや消耗や損傷があるものの狙った通りの古いアルバムでした。くすんだブルーのベルベットが素敵♥
表紙を装飾する真鍮プレートは、天使や羽ばたく鳥の姿が。
この手のアルバムは本当にゴージャスな装丁のものが多いのですがその中でもなかなか心惹かれるモチーフです。
表紙を開いてみると中には数枚のフォトが挟まれていました。
キャビネ版や普通の印画紙のフォトが多くカルトドヴィジットも数枚ありましたが、アルバム的には期待したほどの充実枚数ではありませんでした。
それでも当時を知る上で貴重なお品、丁重に扱いつつページをめくります。
そして、最終ページを開いたら、小さなガラス窓の小箱が裏表紙となっていました。
ガラスには亀裂が入り割れていましたが、その小窓をぱかっと開くと…中には古びたオルゴールが。
埃をかぶり、さび付き、どう見ても音を奏でる様子ではありません。
裏表紙の小箱は開くことができ、さらによくオルゴールを観察してみました。ぱっと見でバネが飛び出したり金属が裂け割れたりしているところはないようですが…何しろかなりの埃量。軽く払うくらいではきれいになりそうもありません。
裏表紙にはねじ巻き用の鍵穴が!
「鍵穴」の存在って何度もワクワクしませんか?
さらにわくわくすることに、小箱の内部にはねじ巻き用のカギがちゃんと保存されていました。ここに差し込んでねじねじするのね、とちょこっと差し込んでみたり。
ねじねじしてみたい衝動に駆られている私に、とある方から「ゼンマイが切れる可能性があるのでねじねじしない事!」との助言が。
危うく巻きそうになっていたところでしたが、それを聞いて慌てて鍵を抜きました。
ねじねじしなければもしかしたらこのオルゴールは修理により復活し、また音色を奏でる可能性があるということなのです。
古いオルゴールの修理は専門技術の必要な事でもあり、決してお安くはないみたいなのですが、どんな音を奏でるのか聞けるものなら聞いてみたい。
という事で、修理を依頼しようかと考えているところです。
さらに後日…
またもやいい感じに古物化したアルバムの残骸を発見して心躍っていたところ…ぱかっと開くとこれもまたオルゴール付きのものでした。
表紙を開くと、右側の針金が引っ張られて自動的に音楽を奏でる仕組みです。もちろんこちらも壊れていますので音は出ませんが、その部分の接続は一部残ってました。
裏表紙には同じくねじ巻き用の鍵穴が♪
ところがこちらは鍵は紛失されていて残ってませんでした。
試しに興味本位で前のビロード張りのオルゴールアルバムのカギを差し込んでみたら、ぴたっときれいにはまりました。
この手のものはどれも共通のねじで巻きあげていたのかもしれません。
というわけで、こちらもねじねじしたい気持ちをぐっとこらえて耐えました。
そんなこんなで偶然にも私の元に同時期にやってきた、二つの壊れたオルゴール。今後修理されるのか放置されるのか…
続きをおたのしみに!