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【サブスクで聴くGaita Zuliana:vol.7】Melody Gaitaの初期作品

Melody Gaitaは1984年に、首都カラカスで結成されたガイタのグループである。創設者・監督は、ラジオ番組「Viva la Gaita」のパーソナリティや、「Ultimas Noticias」でのGaitaコラム連載でも知られるÁlvaro "Cuchillo" Durán。

ガイタでは、だいたいのグループに"お決まりのロゴ"が存在するが、その流れで専属のマスコット・キャラクターを設けるケースがある(Cardenales del Exitoの赤い鳥、Estrellas Del Zuliaの将軍、Happy Gaitaの犬など)。
Melody Gaitaもカエルのキャラクターが有名であり、グループ創立当初から現在まで作品のジャケットにはこのカエルが登場している。2022年もワールドカップ開催にあわせてシングルを配信しており、カエルは健在のようだ。

さて、そんなMelody Gaitaだが、サブスクで配信されているのは2010年代以降のアルバムであり、それ以前のアルバムは一見、登録がされていないように思われる。

Apple MusicのMelody Gaita配信作品

しかしながら、自分ぐらいサブスクで真剣にガイタを探していると、思わぬ発見をすることがある。今回は、サブスクで見つけたMelody Gaitaの初期2作品について記事を書いてみたい。


Melody Gaita『Melody Gaita』(1986)

サブスクには上記のように、『De Feista Con... Gaitas y Mas Gaitas』というタイトルのコンピレーションアルバムが登録されている。アーティスト名はMiguel RivasやMario Loveraなどの個人名が並んでおり、一見するとソロミュージシャンのコンピ盤かと思ってしまいそうである。

しかしこのアーティスト名、実は各楽曲のメインボーカルを指しており、実態はMelody Gaitaが1986年に発表した3rdアルバム『Melody Gaita※』なのである。なんでヴァリアス・アーティストやねん!
※セルフタイトルだから特別ということはない。ベネズエラ人特有のテキトーさで、毎年『Melody Gaita』というタイトルのアルバムを出しているだけである。

オリジナルのジャケット。カエルがFurroを弾くいつもの構図。
http://gaitaypunto.blogspot.com/2016/11/melody-gaita-1986-melody-gaita.html

さて、思わぬMelody Gaitaの初期作品を見つけた私は、意気揚々と楽曲を再生してみた。すると聴こえてきたのは、酷いノイズにまみれた1曲目「La Loteria」であった……。
まあサブスクにこんな登録をするくらいだから、音源にノイズが乗っているくらいは予想もついたが、それにしても凄いノイズである。ほとんど別の曲ではないか。

しかしながら、曲が進むにつれてノイズは薄れていき、このアルバムの出来の良さが明らかになっていく。3曲目「El 5 y 6」や、5曲目「Las Utidades」、7曲目「El Helado」などは佳曲と言えるだろう。

また最終11曲目には、SEが効果的な佳曲「El Beisbol」が収録されており興味深い。ベネズエラは野球がポピュラーな国(日本だとアレックス・ラミレスが有名)であり、またガイタのシーズン(9月〜12月)がちょうど野球のシーズンと被っている(らしい)。

本作がリリースされた86年は、Gran Coquivacoaも「El Beisbol」という同タイトルの楽曲をヒットさせている。それを意識しつつ、自分たちでもやってみたということなのだろうか。

Melody Gaita『Melody Gaita』(1987)

先程の1986年盤よりは難易度が下がるが、このアルバムもMelody Gaitaが1987年に発表した4thアルバム『Melody Gaita』である。

以前、Birimbaoについての記事を書いたときにも言及したが、ガイタではしばしばオリジナルではない画像がサブスクのジャケットに登録されることがある。
このアルバムを登録しているKorta Record'sもオリジナルではないジャケットで登録するタイプのレーベルで、Melody Gaita以外にもいくつかの「被害作品」を確認することができる。やれやれ、なんとかしてほしいものだ。。。

オリジナルのジャケット。結構好き。
https://www.discogs.com/ja/release/15722204-Melody-Gaita-Melody-Gaita

さて、こちらもサブスクで再生してみると、恐ろしくハイが痩せた音源を確認することができる。
絶対に本来はもっとハイが出ていたはずなのに、音盤をデータ化する時に何らかのミスでハイが落ちたタイプの痩せ方である。せっかく登録するなら、もう少し音源に対して意識を払ってもらいたいものだ…。

そんなハイ落ち状態でも、楽曲のクオリティは伝わってくるから音楽というのは面白い。3曲目「Pasión」や5曲目「Tradición」の郷愁を誘うメロディ、9曲目「El Profesor」と10曲目「Fantasía」という良曲でアルバムが終わる感じなど、ありきたりなガイタのアルバムには無いピンと来る感じがある。


さて、ここまで「サブスクにある音源、音質悪すぎ話」を書いてきたわけだが、今回この記事を書くにあたってMelody Gaitaの公式YouTubeチャンネルを見ていたところ、1年前から過去作の音源配信をしていることに気がついた。

おお、サブスクとは打って変わって、ノイズのないキレイな音源ではないか。わざわざコンピ盤から推理するようなことをしなくても、YouTubeを見れば一発で解決だったのである。トホホ…。
ちなみに権利の関係からか、1987年の4thは公式チャンネルでも配信されていない(一部、ファンがアップロードしている音質の良い音源もあるが、全曲は揃っていない)。こっちも全曲、良い音質で聴けるようになってほしいものだ。

昔のアルバムが、昔の姿、昔の音質のままに届くということ……日本にいると当たり前のように感じてしまうが、普通に様々なエンジニアやレコード会社の苦労があって過去のアルバムが今に届くわけで、決して「当たり前」のことではない。そんなことをMelody Gaita(の曲の権利を持っているレコード会社)は教えてくれるのであった。。。


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