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名作を訪ねる(13)

第13回

しばらく間が空きましたが、第13回です。今回は3手メイトを紹介します。

Hannemann, K. H., 1st Prize Skakbladet 6. Turnering, 1920

#3 (10+10)

3手メイトは連載内では初登場です。ちなみに、3手メイトを解くのは2手メイトに比べると格段に難しくなります。4手以上になると逆にメインラインが1つになるので簡単になると言われており、3手メイトはダイレクトメイトの中では最も難しいジャンルであると考えられます。


1. Rh5! が初手です。この手は2.Bc5#がスレットになっています(このように、スレットが設定の手の長さよりも短いものをShort Threatと呼びます。通常はあまり好ましいものとされませんが、この作品はここ以外の点で極めて珍しいtaskを実現しており、FIDE Albumにも選ばれています)。

白のBc5#を受ける手はいくつかあり、主要な手としてはc3に利かせる1…Rc3/Qc3、h5-c5のラインを止める1…Qd5/Bd5/Qf5/Rf5があります。

しかし、たとえば1…Rc3は、黒Qのb3の地点への効きが消えてしまいます(このような、同じ動きをする駒が特定の枡目を越えることで効きが減る現象をHolzhausenと言います)。よって、1…Rc3 2.Sb3+ Rxb3 3.Bc5#でメイトになります。それでは逆に1…Qc3はどうかというと、黒Rのe3の地点への効きが消えるので1…Qc3 2.Qe3+ Qxe3 3.Bc5#でメイトになります。

他の手に対しても同様に、特定の地点への駒の動きが、お互いの効きを干渉しあうことでメイトが発生してしまうことに注目ください。

1. Rh5! (2.Bc5#)
1…Rc3 2.Sb3+ Rxb3 3.Bc5#
1…Qc3 2.Qe3+ Qxe3 3.Bc5#
1…Bd5 2.Sc6+ Bxc6 3. Bc5#
1…Qd5 2.Re4+ Qxe4 3.Bc5#
1…Rf5 2.Qg7+ Rf6 3.Bc5#
1…Qf5 2.Qf4+ Qxf4 3.Bc5#
(以下はBy-playです)
1…Qc6 2.Sxc6 or Re4+
1…Bxd2 2.Qxd2+
1…g5(gxh5) 2.Qd6+

1.Rg5?が白Qのf4へのルートを遮断してしまうためメイトにならないことにも着目ください。総じて、3通りのMutual interferenceは極めて珍しく、見た目にも楽しい作品だと思います。

次回予告

次回はヘルプメイトの予定です。

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