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シリーズ「新型コロナ」その29:成功例・台湾(蔡英文総統)

■コロナ抑え込みに成功している女性元首たち

5月も後半に入り、緊急事態宣言が全面解除か、それとも一部継続か、という瀬戸際にきているが、日本のコロナ対策は成功しているのだろうか、それともここまでのところは、対策ではないまったく別の何かが功を奏しているのだろうか。
一方、世界には早々にウイルスの抑え込みに成功し、終息宣言を出している国々もある。しかも、そのほとんどが女性の元首が率いる国々である。
調べてみると、彼女たちの政策やものの考え方、政治信条、成功の秘訣にはいくつもの共通点がありそうだ。そうした国々と日本とは、どこがどう違うのだろうか。

そこで今回から、何回かに分けて、ウイルス対策成功例の国々の対策や女性元首の共通点をひとつひとつ見ていき、さらに日本との比較をしてみようと思う。
取り上げる国と女性元首は次の通り。

〇台湾(蔡英文総統)
〇ニュージーランド(アーダーン首相)
〇ドイツ(メルケル首相)
〇フィンランド(マリン首相)
〇デンマーク(フレデリクセン首相)
〇アイスランド(ヤコブスドッティル首相)
〇ノルウェー(ソルベルグ首相)

■台湾の蔡英文総統

今回取り上げるのは、台湾(中華民国)。率いるのは蔡英文総統(63歳)。

https://news.yahoo.co.jp/byline/nishiokashoji/20200312-00167344/
https://precious.jp/articles/-/18886
https://forbesjapan.com/articles/detail/33831/1/1/1
https://encount.press/archives/40296/
https://www.vogue.co.jp/change/article/female-leaders-fighting-covid19
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00838/
https://www.roc-taiwan.org/jp_ja/post/70763.html
https://president.jp/articles/-/33332

2016年の中華民国総統選挙にて当選した蔡英文は、台湾初の女性総統となった。 彼女は法学博士(専門は国際経済法)でもある。
彼女は、WHOとは異なる独自の政策を早急に押し進め、世界各国が拡大防止に追われるなか、医学やITに長けた適材適所の閣僚の活躍で、4月中旬には死亡者ゼロという快挙を成し遂げた。
台湾は2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)感染拡大の際、多くの犠牲者を出した。その教訓により、2004年にはすでに防疫の司令塔機関である「国家衛生センター」(NHCC)が設置されるなど、緊急事態に即応できる体制が整えられていた。
このNHCCは、アメリカ疾病対策センター(CDC)を参考に、移民署・衛生署・交通部など部署を越えて作られた分野横断型の組織である。

■台湾の具体的対策

〇2019年12月の流行初期(国内初感染者が出る前)の時点で渡航制限や国境管理に関連する124もの新たな対策を世界最速で実施。結果的に他国のような封鎖措置を回避した。
〇最新の科学技術を入国者の検疫電子システムに導入。
〇重度の感染地域から戻った旅客は、たとえ症状がなくても14日間、強制的な自宅検疫下に置かれる。当局はスマートフォンを配布し、位置情報を共有して行動を監視する。従わない場合には罰金が科せられる。
〇1月20日には、陳時中衛生福利部長(衛生相)が率いる中央感染症指揮センターが立ち上げられた。
〇学校は、春休みが開ける9日前の2月2日に始業日を2週間延期すると発表。発表の数日前から、国会で始業延期に伴うトラブルについて多くの議論が行われ、その内容を一般公開。開校日までの間に、政府、衛生福利部、教育部、各自治体、教育機関が連携して必要な対策を策定し、実行。2月25日には予定通り開校。
〇2月25日には、ウイルスの感染拡大により打撃を受けた産業を救済するための特別法が可決され、600億元(約2200億円)を上限とする予算が組まれた。
〇「先決め・後補償」で、まず大事な方向性を決めて即時対応してから、補償などについてはゆっくり決めるという方法論に、国民も慣れている。
〇製造業者によるマスク輸出を1カ月間禁止、マスク工場の買収、配給制の導入、一定価格に管理、実名によるマスク購入などを求め、生産ライン拡大のため数億ドルを投資し、国防省は民間マスク工場を支援するために軍隊を派遣。
〇全国民に一流の医療制度を提供
〇適材適所の人事が奏功。「マスク配布システム」など実用的で簡便なプログラムを次々と打ち出し、脚光を浴びたIT担当政務委員(閣僚級)の唐鳳(オードリー・タン)や、不眠不休の活躍で「鉄人大臣」と呼ばれる陳時中衛生福利部長など。
〇省庁や地方政府と協力して、予算の割り当てから人員の動員、学校の消毒に関するアドバイスに至るまで、台湾全体の対応を調整。
〇「情報に透明性があり、住民に十分な医学的知識がある場合にのみ、国民は正しく恐れることができる」の認識のもと、テレビ・ラジオ局に対し、ウイルスの感染状況や正しい手洗いの重要性、マスク着用のタイミングなどを一定時間ごとに放送するよう求めた。
〇ツイッターやフェイスブックも有効活用して、民衆に直接メッセージを伝えた。蔡英文総統のツイッターは、人目を引く画像と分かりやすいキャッチフレーズで、外国人にも伝わるように工夫されている。
〇欧米諸国に1000万枚のマスクを提供。
〇人口約2400万人に対し、4月26日時点での死者数6人。
〇今年1月に再選を決めたばかりの蔡政権のその後の支持率は54%、防疫対応満足度は83%。

■蔡英文総統の成功の秘訣

〇とにかく迅速(後の展開に関する予備知識があるので、早手回しできる)。
〇最初はきんちゃく袋の紐をきつく締め、徐々に慎重に緩める方策。
〇能力と人間性の両方を評価した適材適所の閣僚人事。
〇過去の苦い経験を活かし、徹底した防疫体制がすでに整えられていた。
〇最新のIT技術を効果的に導入。
〇国民への親しみやすい語りかけ。
〇「国民の命が最優先、経済は二の次」の価値観が徹底しているが、政策が全方位的で、透明性が高いので、国民の理解が得られている。
〇専門性が重視され、エンパワーメント(権限移譲)がなされながらも、分野横断的な柔軟な組織体制がとられている。
〇中央行政と地方行政の連携がとられている。
〇政治的・歴史的背景によって、政府も国民も民主主義を形骸化させない気概を持っている。


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