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シリーズ「新型コロナ」その27:続・あなたがラーメン店の経営者だったら

■緊急事態宣言解除後の飲食店の経営決断

シリーズ22で、「あなたがラーメン店の経営者だったら」というシミュレーションをしてみた。もちろんこれは「ラーメン店」を「飲食店」に言い換えても、そのまま当てはまる。また「ラーメン店」を「中小企業」と言い換えても、部分的には当てはまるだろう。
そこで今回は、この続編を考えてみた。

今回の緊急事態宣言解除に伴う雇用調整助成金の特例的拡充、賃料の負担軽減のための給付金、感染防止措置などの事業展開を支援する補助金などを活用して、何とか店を維持できる勝算があるなら、ここは踏ん張りどころだろう。
しかし、相変わらず窓口業務が混雑し、いつ現金を手にできるのか、まったく見通しが立たない。

何が何でも踏ん張るか、傷が浅いうちに潔く撤退するか・・・あなたは究極の二者択一に迫られている。しかも、結論を先送りにすればするほど、血は流れ続け、いずれ出血多量で死ぬことになる。
「明日の100万か、それとも今日の50万か」という選択になってくるかもしれない。
選択を間違えれば、あなたはコロナ感染ではない理由で死にかねない。

では、どうすればいいのか。何が正しい選択なのか。

慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授の小幡績氏が、手厳しいが的確な助言をしている。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2020/04/post-53.php

氏はまず、政府に現金給付を求める前に、経営者としてやるべきことがある、と釘を刺す。まず問われるのは、経営者の危機感だという。
「この状態がいつまで続くかわからない、先の見通しがまったく立たない。だからなるべく借金はしたくない。その結果、給付金待ちの状態になる」というのは、真の危機感がないことの表れだと、氏は指摘する。
そこで、政府からの現金給付をあてにする前に、経営者としてやるべきことは、次のことだという。
〇もし売り上げがゼロ(ないしゼロに近い状態)で、たとえ政府から支援金が下りても、その状態を長期にわたって維持できないなら、一日でも早く廃業し、止血すべし。
〇投資をかなりしていて続ける意思が強いなら、5年返済猶予の無利子無担保の融資を受けて資金繰りをしのぎ、2月半ばから5月半ばまでの3カ月の売り上げの急減による赤字を5年かけて返済する覚悟を決める。
〇賃金と家賃に関する政府の支援を全面的に活用し、従業員には休業手当で耐えてもらうか、解雇して失業手当で耐えてもらうか説得し、家主と交渉する。

「日本の飲食店の難しさは賃料の問題で、日本の不動産取引慣行は柔軟性に欠けているという問題点がある」と、氏は指摘している。
この点では、今回ようやく「賃料の負担軽減のための給付金」が用意され、さらに貸主に対する様々な減免・優遇措置も出された(下記アドレス参照)ので、それを家主との交渉材料にするしかないだろう。

「賃料減額のビル大家の税減免 コロナ対策で国交省が方針」
https://www.asahi.com/articles/ASN4K5DPKN4KULFA00D.html

■廃業も継続もあなたの未来の始まり

廃業か事業継続か、いずれにしても簡単な決断ではない。
ここから先は元コンサルタントとしての私からの助言だが、あなたが廃業を決意するなら、経営者としてのあなたがまず真っ先にやるべきことは、従業員(アルバイト含む)に自らの力量不足を謝罪し、その先の従業員の身の振り方を、誠心誠意支援することだろう。
事業継続を選ぶなら、あなたは「コロナ以後」の新しい経営スタイルを考えざるを得ない。
たとえばあなたの会社が世界的にもオンリーワンの技術や商品やサービスを持っているなら、それをいかに継続させるかを考えればいいかもしれない。
そうでないなら、まずは反省していただきたいことがある。たとえばあなたが頑固一徹のラーメン親爺で、「うちの店は、醤油ラーメンだけで勝負する。塩も味噌もやらない。餃子やチャーハンなどのサイドメニューも出さない」という経営方針だったら、コロナ以後は難しいだろう。一本の柱で屋台骨を支えるやり方は、何事もなくうまくいっているときはいいが、今回のような不測の事態が起きたときは、経営基盤としてあまりにも弱い。「一本柱」で勝負して、バブルがはじけたとたん仕事が立ちいかなくなった経験が私にもある。
もしかしたら、従業員の生活を守るため、あなたは経営基盤を完全に変える必要に迫られているかもしれない。場合によっては、業態だけでなく、業種そのものを変える必要があるかもしれない。ラーメン一本でないなら、自分にできて、複数の柱で経営が成り立ち、災害にも対処できる業種・業態とは何か? そもそも飲食業ですらないのか? あるいは実店舗ですらないのか?
そうなってくると、経営上の単なる方針転換ではすまない。業種も業態も変えるとなると、根本的な企業イノベーションを起こす、ということだ。
経営に抜本的な改革を起こし、しかもその改革を、今後不測の事態が起きてもビクともしない永続的な屋台骨にするにはどうしたらいいか。これはとても一言では語れない内容になってくるので、いずれ近いうちに取り上げよう。

とにかく、廃業するにしろ、継続するにしろ、あなたの未来はあなたが作るのであり、あなたの作る未来が世界の未来も作る。
あなたが廃業を決めたとして、そこであなたの人生が終わるわけではない。あなたが店舗と従業員の後始末をつけたとして、あなたの住居が賃貸物件なら、家賃も支払い困難になるかもしれない。そうなるとあなたは、住居も引き払い、郷里に戻る決断に迫られるかもしれない。そこであなたは、次の自分の人生として、何をどういう基準で選択するのか、それは永続可能か、生活するに充分な収入を見込めるか、災害などの不測の事態にも揺るがないか、そもそも、自分の生き甲斐となり得るかなど、あらゆる方向から検討せざるを得なくなるだろう。まさにその検討こそが、未来の世界を作る材料だ。


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