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20200217

今日は貧血がおさまったので外に出て近所の梅園に行った。いつも満開の梅と人とで賑わいを見せるのに、ひっそりと静かだった。
おばあちゃまが亡くなる前、杖で歩けた最後の時期に一緒に行った梅園。
お茶の先生だったから、部屋に花をたやさず季節の変わり目にはお香を焚いていて楽しんでいたから
満開の梅とその香りをきいたら
元気になるかもしれないと思い、連れて行ったのだ。

梅の薫りは、ほのかでささやかな可憐さと、どこか神妙で夢幻へ誘う力がある。
御伽噺で梅薫る霧の中、幼女と老婆が手毬をついているような、そんなイメージ

花の中で薔薇は見た目も香りも華やかで神聖で特別な花だけど
私は花の香りといえば梅や日本水仙、沈丁花が好きだ。
ヒヤシンスとスイトピーの香りも好きだ。
あとは紫陽花や桔梗、竜胆、青い花が好き。青が好き。


梅園は小高い山になっており、充満した香りは空に立ち昇っていこうとする。あわせるように階段があり、香りと一緒になって梅林を浮遊できるかのようで、段差を上がるたびにふわっと寄せてくる風にうっとりする。
そして頂上には富士見台がある。

おばあちゃまは足腰が弱っていて絶対に階段をあがれないというのに、
どうしてもどうしても頂上に上がりたいって言って
いつになく我がままに断固に、主張した。
私は親戚一同に叱られるかもしれないと思いながら、また、転んじゃったり、へたすると死ぬかもしれないと緊張しながら
でも願いを叶えようと
後ろから抱えるように一歩一歩、あの日階段を亀の速度で一緒に登った。
そんなことを思い出した。
おばあちゃまの顔や声
頂上に行けた時の喜びよう忘れられない。
今でもあの時よく登れて降りられたものだなと信じられない思いでいる。見えないだれかが見守って助けてくれていたように思う。

今日、見かけた子が可愛かった。
お母さんから、「来年になるまでまた咲かないのよ、それまで見られないのだから、今ちゃんと見ようね」って言われ
「もうみられなくなるから、ちゃんとみなきゃね もうみられなくなるからちゃんとみなきゃね」とずっと言いあっていて
満開の梅の中に居合わせた大人たちがみんな、ニコニコしていた。
大変なことが沢山だけど、今こうして梅を見に来れて、花が咲いているのに出会えて幸せじゃないか
亡くなったけど大切な人との思い出とも会えて、知らない子だけど小梅みたいな可愛い子とも会えて
梅の花の命といろんなものが重なって、
わたしはそういうのが感じられることが幸せだと思う。
本当はそれがすべてで、それだけでいい。

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