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あと、半年。(6)

 1月。

 新たな年に浮かれた街の空気がしんと消え、ピンと張った空気が肌に痛い日だった。



 「玲」

 俺が手を握ると、彼女は辛そうな顔を笑顔で誤魔化しながら、こっちを向いた。
 
 「ん……」
 彼女は指で俺の手の甲を触って、手を握り返してきた。


 「寂しくなかった…?」
 
 「大丈夫…」
 彼女は微笑んで言う。


 「これ…こないだの写真」
 俺は河原で撮った写真をポケットから取り出し、彼女に渡した。

 「ありがと……やった〜…」
 彼女はゆっくりとそれを受け取り、嬉しそうにそれを指先で揺らして見つめた。きゅっと俺の手が握られる。

 窓辺には、俺との写真や、俺が持ってきた花、本が大事そうに並べられている。彼女の枕元にも、沢山の写真の束が並んでいた。

 その光景はもう見慣れたはずだった。なのに、いつにも増して、ずるずると彼女との思い出が記憶から引っ張り出される。ひとつ、またひとつと思い出すたびに、喉の奥がつんと痛くなった。
 彼女の病室に向かう途中、1人の看護師が医者を伴って俺を呼び止めた。


 『できるだけ、一緒にいてあげてもらえませんか』
 『ええもちろん…います……けど…』
 『……残念ですが…もう長くは』
 
 
 頭の中で、雑音が鳴り止まなかった。自分で読みきれないほど多くの言葉が浮かび、巨大なノイズとなって俺の中を突き抜けていった。

 いや、大丈夫。玲は大丈夫。玲はまたすぐ、元気になるよ。でしょ?


 そんな甘えた希望、言えるはずがなかった。




 1番伝えなきゃいけないことも、まだ彼女に言えずにいるのに。


 それが、運命を無抵抗に受け入れてしまうようで。




 「…なあ玲、」



 ありがとう。



 また言えなかった。もう、時間はない。




 「ありがとね…」


 突然、玲が言った。

 俺はきっと、間抜けな顔をしていたんだろう。彼女が少し笑った。

 「えへへ…言えないんでしょ」

 「っ……」
 


 「私は大丈夫だよ」

 俺の喉は情けなく震え、次第にそれは全身に広がっていく。

 「だから、変に我慢しないで…?」











 「…………ありがとう…」


 ほとんど、声は出せなかった。情けなく掠れた声を絞り出すのが、精一杯だった。








 俺はもうぐしゃぐしゃになっているであろう自分の顔を隠すように、彼女の体に伏せた。少しでも、彼女のことを感じたかった。俺は彼女の手をひたすらに握り続けた。

 
 

 「でも俺……まだ……まだまだ一緒にいるから」


 「うん…これからも、よろしくおねがいします」




 彼女の手を強く握ったまま体に顔を伏せた俺の頭を、彼女は反対の手でそっと撫でてくれた。

 「えへへ…」
 










 あと、

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