シャドウラン5版のルールを解説しよう その3

ルール的なことの解説は今回で終了となる。

細かいところで結構省いたり、厳密には正確ではないルール適用をしていることもあるが、それは自分で調べて確認してくれ。一応、遊べるようにはなったはずだ。

というわけで、最後はサイバーパンクにはつきもののネットワーク……マトリクスについてだ。これも「かなり」省略して、簡易な使い方を行っている。慣れた奴らからすると話にならないレベルかもしれないが、これでも十分に覚えることは多いし、これでも遊ぶことは十分に可能だ。


【レベル3:マトリクス】
13:ワイヤレス効果を確認せよ。

 ここからはついにマトリクスの世界に足を踏み入れるぞ。とりあえずは、身近なところへの影響からだ。
 コムリンク(スマホみたいなもんだ)や都市内の乗り物、建物に服に……第六世界でマトリクスが全く関わらない領域は少ない(アストラルくらいか)。

 さて、再びウェポン・スペシャリストを見てみよう。銃を撃つときに「スマートリンクって装備の効果で+1」と書いただろう。これのことだ。
 アレス・アルファには「スマートリンク(正確にはスマートガンとスマートリンク・システム)」がくっついてる。
 これが何かというと、サイバーアイやゴーグルと銃を接続して、命中精度を上げたり(精度が2点上がってるのはスマートリンクの効果だ)サポートをしてくれる。
 もし、ネットに接続していなくても精度の+は残るが、ネットに接続していると追加で効果を得ることができるんだ。(特に記載がない限り接続してるぞ)
 スマートリンクなら、「サイバー orバイオの目にスマートリンクがあればダイス+2、ゴーグルなどの外部装置のスマートリンクなら+1」ということになる。
 ウェポン・スペシャリストはサイバーアイではなくゴーグルで使っているのでダイスは+1ってことになるんだ。

 本当はルールブックを買って、P.439にあるスマートリンクのデータを確認しないといけないが、今回だけは特別だ。当然ルールブックを持っているよな? まだなら買っておけ。

 ワイヤレス効果ってのはいろいろな装備に付いている。便利な物だが、もちろん問題もある。
 アレス・アルファはマトリクス……ネットに接続しているんだ。つまりハッキングを受ける可能性がある。場合によってはいきなり壊されるぜ。
<<<カタナ? おまえのカタナにワイヤレス効果が付いていれば何か影響はあるかもな。当然「影響が少ない」部分だってあるんだ。

14:マトリクスを知覚しろ。
 ここからは新顔「デッカー」(いわゆるハッカーだな)の出番だ。
  ところで、こいつのライフスタイルが「中流」になっているのにはしっかりとした理由がある。P.222のコラムをよく見てみろ。でもってP.235を見て公共グリッドがどのくらい不利なのか見てみるといい。ハッカーには多少まともな生活環境が必須なんだ。

 さて、ここからまたちょっと説明だ。ハッカーがマトリクスで活動するには大きく分けて二つのモードがある。
 一つは「ARモード」。
 これは現実世界(マンデイン)で動きながら、AR表示を見てハッキングをするモードだ。利点はハッカー本人が現実世界で動き回れること、欠点は「マトリクス内の行動速度が早くならない」事だ。
 もう一つは「VRモード」。
 神経を直接機械につなぎ、マトリクスでの速度が上がるかわりに、肉体は無防備になるモードだ。VRモードには多少安全なコールドシムと、有利な代わりにリスクが高いホットシムの二種類があり、ハッカーはホットシムを好む傾向がある。
 御多分に漏れず、このデッカーもたいていはホットシムで活動する。VR中の無防備な本体は、チームメイトにしっかり守ってもらうか自衛するんだぜ?

 マトリクス知覚って何か、それは「マトリクス上に存在する何か・誰かを発見する」行為だ。詳細はP.236とP.243を見ておけ。
 実は、こいつで判定するまでもなく、物理的な世界でお前の周囲100mに存在するアイコンは見えるんだが……さて、お前はそろそろ「アイコンって何だ?」と思うだろう。
 アイコンってのは「有線無線問わず、マトリクスに接続している機器をマトリクス側から見たときに見えるもの」だ。意図的に隠されて(サイレント状態になって)いなければ、無条件に見える。
<<<もちろん、多くのアイコンやスパムに紛れているかもしれないがな。視界を埋め尽くすアイコンの山の中から目的の一つを探すのは手間だ。

 意図的に隠れていなければ、サイレント状態のアイコンも「マトリクス知覚」で1ヒットすれば発見できる。隠れている奴とは対抗判定になる。これは現実世界(マンデイン)であっても、マトリクス内に入り込んだ状態でも同じだな。
 というわけで、お前の近くに強盗でも始めそうなやつがいる。マトリクス知覚で見ると、そいつの所持品でマトリクスにつながっているものが見えるだろう。
 まぁ、ゲーム的に意味があるものとしてはコムリンク、銃器のスマートリンクあたりか。具体的に言うと「マトリクスに接続する機器(コムリンク、サイバーデッキ、ヴィークル、ドローン)」か「ワイヤレス効果が記載されているすべての道具」の二種類だ。
 銃器にスマートリンクをつけなければいい……っていうのはその通りだが、最初からスマートリンクやレーザーサイトが標準装備の銃は結構あるんだ。それに、命中判定のダイスが増えるワイヤレスの利点は大きいぜ?
<<<【20200326修正】スマートリンクをサイレント状態にしたい? できるかどうかは明記されていないが、コムリンクのスレーブ(要はコムリンクの下位に繋いどけってことだ)にして、コムリンクをサイレント状態にすればいいだろう。サイレント状態だとマトリクス動作に-2ダイスだが、スマートリンクの動作は含まれないだろう。(参照はP,236「サイレント状態」だ)

※(ルール用語としてのマトリクス動作はハッキング関連だからな)

15:マトリクスから殴れ
 さて、この強盗は「スマートガン・リンクシステムの付いたSMG」を持っていた。お前をターゲットにしそうなんで、自衛として相手のSMGを使えなくしてみよう。

「データスパイク」で殴ろう。
 データスパイクは「サイバー戦闘+論理力」で行う。リミットは当然おまえのサイバーデッキの「アタック」になる。ダメージの値もアタック準拠になるから、このときはアタックを高くしておけ。
 通常の相手側の防御は「直観力+機器レート(コムリンクとか以外、大抵は2だ)」なので、直観に優れたサムライのスマートガンなんかでも、防御ダイスは大抵6〜7位のことが多い。鈍い奴ならお察しだ。

 「通常の」と書いてあるって事は、当然通常じゃない場合もある。敵さんのお仲間のデッカーが、その機器を「スレーブ」にしている……まぁ、デッカーの保護下に置いて防衛している場合があるんだ。
 ハッカーが守っている場合、防御の判定はハッカーの「FW(サイバーデッキかコムリンク)+直観力」になる。たいていの場合は、前より手強くなっているだろう。
<<<つまり、おまえがサムライなら「できるだけ機器レートの高いコムリンクを買う」のがお勧めだ。コムリンクってのは、要するに現代で言うスマホだと思っとけ。

 この強盗氏の直観力は3、機器レートは2で、防御に振れるのは5Dしかない。結果ヒット数は1。一方デッカーの判定はARモードでも12D。データスパイクを行って4ヒットを出し、純ヒットは3となる。
 サイバーデッキの能力値配列は組み換えが可能なので、攻撃前にアタックを一番高くしておいて5。純ヒットが3。加えて、こいつのサイバーデッキに入れてあるとあるソフトのおかげでダメージに+2。合計10点のマトリクスダメージが飛んでいく。
 このダメージを減らすために、強盗氏は「機器のファイアウォール+機器レート」で判定する。雑に言うと大抵は機器レートの2倍であり、結果は4d振って1ヒット。9点のマトリクスダメージがスマートガン(と、それを付けたSMG)に与えられる。
 ちなみに機器レート2の機器のマトリクスコンディションモニターは9点だ、一発でぶっ壊せたな。

 おまえがハッカーなら、P.234をよく読んでメンバーのコムリンクや装備を守ってやれ。スレーブにできる機器の数は決まっているが、そこはうまいこと選ぶことだ。
 運良くハッカーに守られていない機器だったか、ハッカーの守りを崩せたなら、次はダメージだ。これはマトリクスダメージとなって、相手のマトリクスコンディションモニターを削っていく。
 壊したらどうなるか?
 相手機器のマトリクスコンディションモニターを0にできたら、その機器は故障する。
 ただ、古い作りのリボルバーや、そもそもマトリクスに関係なく使える古典的な近接武器をハッキングしても意味がない事はわかるよな。
 そいつは壊して有効なのか、それともあまり意味がないのか。あらかじめおまえのGMに確認しておくことだ。
 一応、ルールブックでは「アサルトライフルは撃てなくなるだろう」位のことは書いているし、せっかく手数を使ったんだから少しくらいは得したいがな。
 データスパイクの詳細に関してはP.240を見ておけ。ダメージを増やすことができたりもするので、他のところも探してみると良い。
<<<なんで詳しく教えてくれないんだって? いやいや、しっかり教えてるぜ、これは「自分でルールブックを読んで調べる方法」って奴だ。そろそろ、一人でお使いができるくらいにはなって来ただろう? それに、ルールブック不要で遊べるようにしたいわけじゃないからな。

16:ハッキン!
 いよいよハッカーの本領発揮だ。ここでいうハッキングってのは、「どこかに侵入する際に、その建物のマトリクス上のセキュリティを掌握する」とか「誰かのコムリンクに侵入して、情報を抜き出す」ことを指す。シャドウランに役立つことだけ教えるが、他にもいろいろあるだろう。

建物のセキュリティ
 小規模な研究所に侵入するとして、どんなセキュリティがあるだろうか?
 ありがちなのは「閉ざされた門」「警備員」「警備ドローン」「警備クリッター」「監視カメラ」「施錠されたドア」あたりか。生物はマトリクスにつながっているわけではないので、ハッキングで直接どうこうすることはできないだろう。
しかし、コンピューター制御であろう「監視カメラ」「施錠されたドア(南京錠は別だ)」「警備ドローン」あたりは、ハッキングが可能だろう。
 これらのマトリクスに接続されたセキュリティはたいていその建物の「ホスト」に管理されている。ドローンの場合は、ドローンリガーのRCC(リガ―コマンドコンソール)の場合もあるが、今回はまとめておく。
 ホストについてはP.249を参照だが、初期作成のランナーが挑むならホストのレーティングは3〜4くらいがいいところだろう。

 まず試しに、簡単なホストを攻略してみよう。小規模な企業クラス……そうだな、ちょっとしたギャングがたまり場にするナイトクラブのような場所で、ホストレートはそこそこの3だ。
<<<「現実はこんな単純じゃない」「こんなのリアルじゃない」なんていう言葉は忘れろ。現実のすべてをシミュレートしたいなら、そもそもフィクションを遊ぶべきではないぜ。

マトリクス認証キー
 最初にやるべきことは「マーク(マトリクス認証キー)を付ける」事だ。マークについてはP.237を参照しておけ。
 マークっていうのは要するに権限だ。マーク1つで一般、2つでもう少し上、3つで全ての管理権限を持てると思っておくといい。主によく使うのはマーク1か3だ。
 マークがいくつあれば何ができるのかについては、P.238から順に読んでいくしかないんだが、これがまた面倒くさい。
 そうそう、前にやった「データスパイク」で殴るにはマークは必要ないぜ。外部からぶっ壊すようなもんだからな。

 ここでは雑に「どこかの建物に潜入するときに、セキュリティを黙らせる」ための方法だけ、二種類書いていこう。

 一つは「すべてマーク1あればいい」というやり方だ。
 簡単に言うと、マーク3が必要なのは「ホストの再起動やシャットアウト」なんかの致命的なものだけで、ドアを開ける、ファイルを盗み見る、警備員のシフトを記録したファイルを書き換える……なんて基本的な事は、すべてマーク1あれば判定が可能になる。だから、マークは1あればいいって考え方だ。
 利点は手早く次の行動に行けることで、欠点は疑われた時に多少ばれやすいことと、逐一判定が必要な事……とは言え、ルールを全部使うとマーク3でも手間は変わらない。

 もう一つは「マーク3をつけて、管理ユーザーとして掌握する」事だ。
 最初の手間は増えるが、管理権限を持った以上(正規の管理者がお前のマークを疑いだすまでの間は)ある程度好き勝手にホスト内を動き回ることができるだろう。
 ここからはGM次第になるが、目的ドアの管理をするアイコンを逐一探して開けたりする判定を何回も何回もするのが面倒な場合、マーク3あれば「重要ではない部分はすべて掌握したから、判定なしでOK」としてしまう方が楽だ。
 目的地に達するまでに、最短でもロックされたドアを五か所通る必要があるときに、全部判定をしていると面倒だろう?
<<<これは公式のルールではないんだが、初心者GMが逐一ホストの内容と、管理している機器を決めるのは正直面倒くさい。マークを3つ付けたらあとはすっ飛ばして、敵のハッカーが来た時だけ判定するとか、盗むファイルにデータ爆弾が仕込まれているとか、重要な時だけ判定するようにしてもいいんだ。ルールをハックしてもいいのさ。

荒っぽくか、静かに
 さて、いよいよナイトクラブをハックする。
 ここにはレート3のホストがある。まずはホストに入るためにマーク1が必要で、そこから先はホストの中に入ってハッキングを続ける必要がある。
<<<客を呼ぶ必要がある店なんかは、一般ユーザー権限としてマーク1を配布することもある。後で足が付くかもしれないが、そこから入ることもできるぜ。

 マークをつける方法は二つ。P,238左側にも記載があるが「強制介入」か「即興ハッキング」だ。前者は必ずばれるが「データスパイク」と同じやり方で使える……つまり、技能が少なくて済む。後者はばれないようにハッキングする。今回はオーソドックスにばれない方を使う。
 何故かというと、デッカーが「即興ハッキング」に技能を専門化していて、即興ハッキングをするときにはダイスが増えるからでもある。お前の得意な方を使えってことだ。

 まず、マトリクスに入る。少しでも有利な条件で行くため、ナイトクラブの近くに車を止めて、VRモードのホットシムを指定する。
 こいつは中流のライフスタイルなので、マトリクスの判定に初期グリッドによるペナルティはかからない。論理力とハッキング技能と資質による修正を加えて15DP(VRで+2されて17DP)だ。サイバーデッキの能力値配列は、この時はスリーズを一番高く、使わないアタックを一番低くするとしよう。データ処理はイニシアティブに、ファイアウォールは防御に使うのでそこそこだ。
 即興ハッキングはスリーズ系動作なので、リミットはスリーズの値となる。こいつはソフトでスリーズを+1しているので、リミットも少し上がるな。

ホストの能力値とか
 即興ハッキングについては、もう説明はいらないかもしれないがP.242を確認しろ。
 ホストのダイスプールについては実はあまり明確ではない。管理者の能力値(直観力)を使うんだが、決めていない場合は、管理者の能力値は=機器レートで代用される。
 これはP.234の左側を読んでくれ。実はこの辺りにしれっと重要なルールが書いてある……んだが、実はこいつ、PAN(要するに個人レベル)での話なんだが、WAN(ホストとかだ)についてはルール的に明記されていないようなので、このルールを当てはめておく。
 悩むようなら「ホストレート×2+1〜2」位にてしておけばいい。ある程度はテキトーでもなんとかなるさ。
<<<ホストの中にあるICどもは、明確に「ホストレートの2倍」なんだけどな。

 さて、というわけでこのナイトクラブの管理者は直観力が3の並の奴ということになった。
 ホストの能力値はレートを基本値にして+3までを割り振るんだが、ファイアウォールを最大にするところはあまり多くない。ここでは暫定的にやや高めの5としておこう。
 つまり、このナイトクラブのホストの防御判定は8DPとなる。
 というわけで、ハッカーのヒット数は5、ホストのヒット数は2だった。対決に勝利しているので、ハッカーはナイトクラブのホストにマーク1をつけた。ここで判定に負けると、アラートは上がらないがホストがハッカーのサイバーデッキに対してマーク1をつける。管理者が常時見ていたら、即効ばれるだろうな。
 さて、こうやってマークを3つとればホストの掌握はできたことになる。あとはファイル編集で警備状況や顧客リストを見たり、機器を制御することでドアを開けたりできるぜ。

監視指数に気をつけろ
 ただし、忘れちゃいけないことがある。グリッド監視局(GOD)は常にマトリクスを監視していて、お前の犯罪を見つけようとしている。お前がハッキングに関する判定(アタック、スリーズどちらかを使う奴だ)をしている際、GMは相手側のヒット数をこっそりメモするんだ。
 これを監視指数といって、このヒット数の累積とかもろもろが40を超えるととてもよくないことが起きる。詳細はP.233「監視指数とコンバージェンス」を見ておくといい。
<<<マークを1つけた後は、攻略するホストの中に入ることを忘れるなよ。ホストの中なら、GODは直接手を出してこないからな。ホスト内からジャックアウトできればまだ安全だ。

17:それ以外のこと
 これでおまえはひとまずシャドウランナー教習を一単元終えたわけだ。もちろん、まだ教えてないことは山ほどある。情報量はやたらと多いゲームだからな。
 とはいえ、これはルールブックじゃない。これだけで遊べるわけでもない。この本を読んで最初の疑問点がある程度減ったら、付属シナリオとサンプルキャラで遊んでみれば良い。
 その後は、せっかく高い金を払って買ったルールブックをフル活用すると良い。ここまでこれたなら、多少はルールを読むこともできるようになっているだろう。


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