シャドウランGM向け簡易ノウハウとか

◆シナリオ作成どうすればいい?

 シャドウランのシナリオを作る際に、まず悩むのは「PC側の選択肢が多すぎる」事ではないだろうか。
 なにせ、ルールを見れば「壁の破壊」「空中に浮かぶ呪文」などが普通にある。それ、対応できなきゃダメなのか……?

 「企業の研究所に侵入して、新製品のサンプルを取ってくる」だけのシナリオでも、まず壁の厚さや材質を全て決めておかなければいけないのか?
 そう考えると気が重くなるよな。ハードル高くないかこれ、って。

 そう考えてしまうお前は真面目な奴だ、もっと不真面目に考えるといい。
 そもそもこれはゲームであり、現実世界の法則を全て忠実に守る必要はないし、一部だけつまみ食いしてしまっていい。
 なので、こう言ってしまえばいいのだ。「今日のセッションで壁壊すの無しね」「空飛ぶの無しね」と。
>>>慣れていないうちはサンプルキャラを使うといい……、というのは、あらかじめPCに何ができるか、GMが把握できるからでもある。

▶最初に使うルールは?
 初心者シャドウランGMにお勧めのルール使用範囲は「射撃と近接戦闘」「情報収集」(コンピューター技能での検索、現地視察、コネとの会話などのロールプレイ部分)だけ。最初はそれで充分だ。
 あと、行けそうなら戦闘系の魔法だけに絞って、あとは一切使わない。慣れてきたら増やしていくといい。
 射撃ルールについても、使うルールは絞っておく方がいい。射程距離くらいはいいかもしれないが、明るさや風の影響なんかの環境修正は一切気にしない方がいい。

 射撃の種類についても、一人のキャラが持っている武器を一つに絞って(ピストルかSMGあたりがおすすめだ)、射撃方法も二~三種類(「一発撃つ」のと、「バーストで3発」撃つか「長いバーストで6発」)くらいに制限してもいいだろう。

 使用するキャラクターは「サムライ」「フィジカルアデプト」などの戦闘系キャラクターで充分だし、そもそも前線の花形だ。
 ハッキングについては、NPCのハッカーが都合の良いところまで成功してくれて、シナリオの都合で適度に失敗してくれるとしておけばいい。

▶どんなシナリオがいいの?
 ドンパチできる奴がいい。
 それも極端だが、シャドウランのルールは戦闘ルールが多いし、キャラクターもそれを想定して作られている。
 交渉や隠密で戦闘を回避できるとスマートでかっこいいが、一度も戦闘なしだとサムライはちょっと寂しいだろうし、最初からそんなシナリオを作るのも難しい。
 なので、基本的には「警備や敵対者がいて、武力を使って突入して、敵を倒すことでミッションを達成できるシナリオ」をお勧めする。
 シャドウランは企業などからの依頼で違法行為をする事を前提にしたシステムだが、実のところそういうシナリオばかりというわけではない。
 いつの間にか世界を救うことになったりしてもいいし、豚の貯金箱を抱えてきた少女の、金にならない人助けの依頼を受けたっていい。
 「凶悪犯罪をしなければいけない」「モラルは低ければ低いほどいい」というのは、(無しとは言わないが)今となっては時代錯誤な認識だ。
<<<そもそも、他のプレイヤーを不快にするのはゲームとして論外だろう?

▶プレイヤーに提示する事
 GMであるお前のシナリオとマスタリングではどのような傾向が望ましいのか、どんなキャラを望んでいるのか。
 特にモラル面については先に話し合うか提示しておくことが大事だ。
今回はどっちかというとお人好しなキャラ、それに付き合えるキャラでお願いします」とか「今回はシビアなんで、冷酷なキャラもいたほうがいいかもしれません」など、メンバー内で認識合わせをしておくのは大事だ
>>>「俺はクールでタフなサムライだぜ。感情なんかいらない」ってキャラに対して「幼稚園バスを警護することになった」とかは、ある意味面白いがプレイヤーの心が折れるかもしれない。見たくないかといえば見てみたいが……

◆キャラクターの強さの目安

 初心者GMやランナーの心配事の一つは「敵の強さはどうすればいいか、初期キャラクターはどれくらい強いのか」だろう。
 まず、データ的な強さから見てみるとしよう。
 この世界の平均的な能力値は3、多少優れていて4、技能も適切な訓練を受けて3、並のプロが4、腕のいいプロで6だ。
(種族によってばらつきがあるが、大雑把にまとめさせてもらう)

 つまり、訓練を受けた普通の奴は6DP(ダイスプール:判定に使えるダイスの数のことだ)で、そこそこ才能あってようやく8DPの判定ダイスになる。判定に10DP使えればもうプロなんだ。
>>>調整なしで使用する警備ドローンなんかは6DP位の事が多いな。要するにドローンでも「並の仕事」はできる。銃器は比較的ダイスを増やしやすいが、世界中の全員がそうするわけではないんだ。

 いわゆる雑魚敵(グラント)の中で、数多く居るだろうギャング(プロ意識1)や警備員(プロ意識2)が攻撃で判定に使うダイスは8個前後。
 つまり、世界的にはこいつらは「一応の戦闘訓練を受けている」扱いで、一般人に比べると十分に強い。
 プロ意識3〜4だと、判定のダイス数は8〜10となり、こいつらは明確に訓練を受けた暴力のプロとだわかる。
 ちなみに、ここまでは基本ルールブックのエネミーだとイニシアティブが跳ね上がっている敵は居ない。反応力を強化している例はあるし、そういう敵が居てもいいだろうが、少なくともイニシアティブが20を超えるような奴はいないと思っていいだろう。

 プロ意識5からは、明らかにここまでと一線を画した戦闘マシーンが出てくる。ルールブック掲載のサンプルデータの判定数はいきなり五割増しになり、単純に言えばサンプルのサムライよりも少し強いくらいになる。
 だが、これらは企業や軍隊の秘蔵っ子であり、その辺にあふれている訳ではない。こいつらはレアで、気軽に投入される戦力じゃないんだ。

 さて、基本ルールブックのサンプルキャラを見てみよう。
 諸々含めて戦闘に特化したストリートサムライ等は13DP以上、普通の戦闘系キャラでも10DP以上のダイスを攻撃に使える。
 雑に言えば最初からプロ意識4と5の間くらいに居るとみて良いだろう。初期作成キャラであっても、相当に強いのだ。

 また、技能レベルの高さからもわかるように、初期作成のランナーは新人ではなく「プロとして活動してきて、故あって影の世界に身を投じた」ベテランとして扱う方が話が早い。
>>>もちろん、敢えてルーキーを遊んでもいいし、チンピラムーブも楽しいぜ。

 このゲームのプレイヤーは別にプロのシャドウランナーでも、本物の軍人や傭兵でも忍者でもない。だが、キャラクターはその道のプロなのだ。たとえプレイヤーは気がつかなくても、GMは「そのキャラならば気がつくだろう事」は気軽に教えてたり、技能テストでヒントを出して良いだろう。
>>>依頼人の裏取りやら、執拗に仕組まれた罠など、そういう十重二十重の仕掛けを読み解いて切り抜けるのも面白いことだとは思うが、プレイヤーの知識量やひらめきだけに頼るのは、時間がかかることこの上ないし、新規参入者のハードルを上げちまうからな。
>>>「“この依頼を受けたのが失敗でしたね”だって? お前と卓を囲んだことが失敗だよ!」って言われたい奴はかなりレアだな。

 長々書いたが、シャドウランのGMをすることを怖がる必要はない。
 リアルにこだわらず、B級でもZ級でもいいからプレイヤーと一緒に楽しめる派手なドンパチを楽しめるといいんじゃないかな。
 ちょっといい話や世界の奥深さに触れる話は、もうちょっと慣れてからでもいいだろう。

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