父の叙勲が発表された日に、広告の神様も微笑んでくれたというお話。

本日11月3日、信濃毎日新聞の朝刊に、プランニングとコピーを担当した長野県葬祭事業協同組合様の一面広告が掲載されました。

タイトルは「葬儀での褒め言葉は、遠慮なきよう」。来るべき自分の葬儀でたくさんの人に人生を讃えてもらうため、日々を頑張っている。だからその日が来たら遠慮なく褒め讃えてください―。短く言えば、そんな文章が添えられています。縮小の一途をたどる葬儀の在り方を、もう一度考えるきっかけをつくりたい。そんなクライアントの要望をかたちにしました。

掲載日は、軽いノリで決まりました。クライアントの「『葬儀は文化です。』を入れたい」という要望を受けて、「では、文化の日にしましょう」と提案しただけのことでした。しかし、少し尖った表現が採用されたこともあって、この広告のクリエイティブに対する思い入れはとても強く、11月3日は待ち遠しい特別な日になりました。

一方、11月3日は、実はまったく別の特別な日でした。すっかり忘れていましたが、父の叙勲が発表になる日です。

地元で離れて暮らす父は40年ほど消防団の活動を続けていて、幹部職も引き受けていました。それが評価されたとのこと。

頼まれたら断れない、人のよさだけで人生を乗り切ってきた父は、僕にとっては対極で、見ていてもどかしい反面、頼られる存在であることに誇らしい思いもありました。父が叙勲を受けると聞いたときは、「おめでとう」の声を詰まらせてしまいました。

しかし、発表日のことは忘れていました。通常、毎回の叙勲受章者名は新聞記事で世に知らされることになっているのですが、地元を離れている僕にとって、叙勲発表の紙面は見ることができません。だから、11月、と聞いた気はするのですが、正確な日付はすっかり忘れていました。

そして、本日11月3日。広告の色を確認するため新聞を開くと、叙勲受章者のインタビュー記事が目に飛び込んできました。そうか、今日だったか。

父のことを思い浮かべながら、受章者の笑顔が並ぶページをめくると、叙勲発表日にぴったりの広告。364日、他のどの日よりも、今日掲載すべきであろう広告が、本当に当たり前のようにそこにありました。

39歳で広告業界に入って5年目。いい仕事ができるたび「広告の神様は、きっとそのへんにいる。」と感じるのですが、今日は間違いなくそこにいて、父と自分に微笑んでくれた日だと思います。

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