見出し画像

救急医が「こんな研修医は素敵だ」と思う瞬間 3選【スライド紹介】

救急外来や病棟で、初期・後期研修医が輝いている瞬間はたくさんあります。楽しそうに仕事をして、成長していく姿を見るとうれしくなるものです。がんばっている姿に、素敵だなと感じる場面も。

私、ゆっくり救急医は、研修医の先生を対象にスライドを作成しています。これらのスライドを題材にしながら「こんな研修医は素敵だ」と思う場面について紹介します。では、一緒に勉強していきましょう!

問診を重視する研修医は素敵だ

問診をして鑑別疾患をあげ、検査を選んで診断にたどり着く、という流れが臨床力を鍛える上で重要です。病歴聴取をきちんとおこなうと、検査を提出する前に、正しい診断に一歩近づけるといわれています。

一方で、問診をおろそかにして検査を乱発すると、検査結果に翻弄され、どんどん正解から離れていくものです。前に進んでいるように見えて、ゴールからは離れていっている迷子のようですね。

一生懸命、病歴聴取している研修医は、側から見ていて成長しそうだな!と感じます。

「研修医が救急外来で迷子になる症候はこれだ〜問診で救急迷子からの卒業〜」

このスライドでは、問診が特に大切である「意識レベルの変化」という症候を通じて、以下のような問診のポイントを解説しています。

  • 問診事項には普段のADLを含めるとよい

  • 患者が主人公のショートムービーを想像できるくらい精密に質問

  • 失神は精密な問診以外では正解にたどり着けないから特に気をつける

これら3つのポイントをおさえて、救急外来における「聞く力」を身につけましょう。

エコーを積極的に活用する研修医は素敵だ

問診の次に重要なのは、身体診察です。今や超音波検査は、身体所見の延長といってもよいくらい気軽でポピュラーな存在となっています。ベッドサイドでポイントを絞って検査するPoint Of Care UltraSound(POCUS)は、救急患者の診察において必須です。救急外来で、研修医が積極的に超音波検査している姿をよく目にします。

腹部超音波検査や心臓超音波検査がポピュラーですが、初学者は勉強しやすい肺エコー検査からのスタートが意外におすすめです。

「救急エコーはまず肺より始めよ 簡単ですぐに使えて コスパ最高」

このスライドでは、肺エコー検査のやり方をざっくりと解説しています。正常な肺の所見は「A line」と「Lung Sliding」の存在に注目しましょう。異常所見としては、肺水腫で見られる「B line」と気胸で見られる「Lung Slidingの消失」は、見つけやすい上に診断に直結するので勉強に最適です。

明確に異常を言語化できなかったとしても、違和感を覚えさえすれば、追加検査の契機となったり上級医に助けを求めるキッカケになったりします。完璧でなくとも診療に役立つのが、超音波検査の心強いところです。

全人的な医療に興味がある研修医は素敵だ

重症患者が搬送されてきた時、患者背景によっては最良の治療方針について迷うことがあります。特に後期研修医になって、自分で治療方針を決定する機会が多くなると、悩む機会も増えるものです。

「入門 急性疾患の患者中心のケア 人工呼吸器は一度つけたら外せない?」

このスライドでは、急性期疾患で治療方針に迷った時のヒントを提示しています。

迷った時は「治療の医学的適応」「患者の意思」から考えていくのがおすすめです。患者が認知症であったり、具合が悪くて話せなかったりする時は「もう少し元気だった時の患者さんだったら、どんな治療を希望するだろうな?」ということを家族と一緒に想像してみます。希望する治療だけでなく、治療の先にある生活(ゴール)に関する希望についても話し合うとよりよいでしょう。

唯一解がないため、治療方針を決めるのは困難に感じやすいものです。困難な課題でありながら、医学面だけではなく、全人的に治療方針を検討しようとしている研修医は素晴らしいです。

患者に時間を使う研修医は成長する

私が作成した3つのスライドを題材に、がんばる研修医が輝く瞬間にフォーカスしました。

  • 映像が思い浮かぶくらい、病歴を「聞くこと」

  • 身体所見の延長として超音波検査をおこない、患者に「触ること」

  • 治療方針に悩んだら、患者が希望する生活はどのようなものかを「考えること」

以上のように「聞く」「触る」「考える」を重視する研修医は、成長するのだと思います。どれも電子カルテの前で検査をオーダーするよりも、時間も手間もかかる行為かもしれません。しかし、そのひと手間がとっても重要です。明日の臨床から、患者さんに使う時間をちょっと増やしてみませんか?

執筆:ゆっくり救急医