タコでもわかる?シンプルを貫いたスライドの極意|高野 哲史先生(公立昭和病院)
こんにちは、Antaa運営です。いつも素敵なスライドを投稿くださり、ありがとうございます! Antaa Slideに投稿いただいている先生方に、投稿のきっかけや投稿後の変化、今後の展望をインタビューするこちらの企画。
今回は、「タコでもわかる静注抗菌薬の話」「サルでもわかる経口抗菌薬の話」など、シンプルでわかりやすいスライドが人気の高野 哲史先生(公立昭和病院)にお話を伺いました。
発信だけでは終わらない、予想を上回る反響
ー高野先生がAntaa Slideに投稿されたきっかけを教えてください。
数年前、友人と試しに投稿してみようという話になって、スライドを上げたことがきっかけです。スライド共有サービスは、ジャンルを問わずに複数あったと記憶しているのですが、恐らく医師向けのサービスは当時アンタ―のみだったと思います。実際に投稿してみると、瞬く間にインターネットの大海原に自分のスライドが放流されていく様に、驚きを覚えました。
ー高野先生のスライドは、週間スライドランキングで1位になっていることがあります。投稿後の反響を伺えますか?
投稿後は、私のスライドを参考に院内講義をやりたいなどの問い合わせをさまざまな地域から頂きました。ネットの世界だから、エリアを超えた反響がありましたね。
スライドは、自分が学んだ知識を誰かに提供するのと同時に、敢えて言葉を選ばずに言うと、どれくらいの方へ影響を及ぼせたか自己満足の世界でもあると思います。ただ今回、自分が想定していたよりも圧倒的な反響があったことで、自己満足で終わらない大きなものが得られたと感じています。
ー具体的にどういった反響が嬉しいと感じましたか?
私のスライドは主に初期研修医に向けたものが多いため、彼らから反応があればもちろん嬉しいですし、それ以外の方に届けられたと感じた際もまた嬉しいですね。例えば「感染症診療のマテリアル」は、保存して下さっている先生方には医師歴十何年目のベテラン勢も多かったです。
ほかにも、Twitter経由でコメディカルの薬剤師の方やICN勤務看護師の方からご連絡を頂くこともあり、医師だけに限らず皆さまのお役に立てたことに驚きと嬉しさを感じます。
ーアンタ―運営には「このスライドを作成された先生に講義をお願いしたい」といったお問合せを頂くことがあるのですが、高野先生にもお声がけしてよろしいですか?
全然やりますよ。話下手ですけど、ありがたいお話なので。
自分と読み手の思考とシンクロさせ、理解を深める
ー高野先生のスライドはシンプルでわかりやすいです。工夫している点はどんなところですか?
結果としてシンプルになっただけで、特段意識していることは多くありません。人間が物事を理解する過程を”家に住む”ことに例えると、私はとりあえず住める”掘っ建て小屋”を造ることは得意だと思っています。その上でタイトルや表紙ページも私が作成したスライドとわかるように統一するのに、「高野」の表札を取り付ける、と。
ただ、その造った掘っ建て小屋でいかに快適に住むかということに関しては、また別の話になってくると思います。とにかくスライド作りで私が大切にしているのは、相手のレベルに合わせていかにシンプルでわかりやすい説明が出来るかどうかという点です。
ー先生のスライドは「サルでもわかる経口抗菌薬の話」のように、動物が登場しますね。これも何か意図があったのですか?
ないですね(笑)。「サルでもわかる」というのは慣用句的によく引用されるので使っただけで・・・サルのみだと区別できなくなると思って、他のスライドではタコとかを登場させています。
ー少し話がそれますが、先生のスライドは院内向け勉強会で使用したものをそのまま上げているのか、多少変更を加えているのかどちらでしょう?
大方同じです。ただ薬剤に関しては病院によって使われているものが異なるケースもあるため、商品名は省いています。院内講義では講義に緩急をつけるため若干トゲのある表現を含むスライドを出すことがありますが、公に出すものに関しては控えています。
ーたしかに受け手の印象に残りやすいかもしれません!あとスライドに出てくる吹き出しの言葉も印象的です。
吹き出しのコメントに関しては、自分と読者の思考がシンクロすれば良いと思い書いています。初期研修医の方は特に、勉強をはじめたばかりだとわからないことも多いと思います。私の思考の流れを敢えて吹き出しにしてお見せすることで、考え方のプロセスを一緒になぞるような感覚ですね。
「勉強」と「お勉強」は違うと思っています。「勉強」は自発的にしたいと思うものである一方、「お勉強」はやらなきゃいけないもの。人間は難しい・取っ付きにくいと思った時点で勉強の効率が著しく落ちるため、少なくとも私のスライドでは感染症診療に対する苦手意識をなるべく取り除いて、感染症診療が皆さんにとって「勉強」になって欲しいと思っています。今はまだ感染症診療の勉強が難しいと感じている方も、まずは私のスライドをゲームの攻略本をパラパラと読むような感覚で目を通してみて頂きたいです。
将来の夢はラーメン屋?高野先生が見据える将来の野望
ー高野先生が、将来こんなことをやってみたい!というのはございますか?
早めに退職をしてラーメン屋をやりたいです。退職しても大丈夫な状況になるように、後進を育てて40歳くらいでラーメン屋をやる。
ーそれは面白いですね!
冗談です(笑)。ただ後進はきちんと育てたいと思っています。感染症診療界隈は後進が少ない診療科の一つのため、まずは後進をきちんと育成する指導者になりたいです。とくに現代はワークライフバランスの時代なので、部下に優しい指導者でありたいですね。
また、いずれ感染症に関する本を執筆したいとも思っています。神戸大学教授で感染症専門内科医の岩田健太郎先生が出版された「抗菌薬の考え方,使い方 ver.5 コロナの時代の差異」という本があるのですが、非常にわかりやすい語り口調で書かれていて、どんな学習レベルの医師が読んでもある程度理解できる内容となっています。もちろん、編集者の書き方や相性などもありますが、岩田先生のように誰が見てもある程度理解できる本を書きたいですね。Antaa Slideで自分のスライドをネットの世界へ送り出す体験が出来たため、次はなにか手元に残る形の仕事がしたい、そんな風に思っています。
自分のスライドを世に送り出すのに、Antaa Slideは最適なサービス
ー最後に、Antaa Slideを見てくれている方、またはこれから投稿しようとしている方に向けてメッセージをお願いします!
Antaa Slideは、自分のスライドを世に送り出したい方にとって、とても優れたサービスです。一体どういう風に表現すれば読み手に伝わるか、どんな文献を引用すれば理解が深まるかなど、スライドの作成過程でこれらを考えることは非常に良い経験です。普段生活していると、自分の作成したものがどこかに掲載されるという経験はなかなかないと思います。まずは投稿してみることを目標に、トライすると良いのではないでしょうか?
すでに私のスライドをご覧いただいている方には、まず感謝の気持ちを伝えたいです。その上で、もし「こういう内容が見たい!」等のご要望があれば、ぜひ積極的にご意見を頂きたいですね。
ー貴重なお話、ありがとうございました!
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