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救急外来で非典型例の重症疾患見逃しを防ぐためのスライド4選

避けようと思っても病気の見逃しは避けられないものです。明らかなST上昇を伴う心筋梗塞、突然強い頭痛が起こり頻回に吐く高血圧の既往歴があるくも膜下出血、発熱して意識障害がある首の硬い髄膜炎患者など。典型例の診断は難しくありません。

教科書的な症状がない非典型的な症状で来院し、第一印象が軽症そうな患者さんはどうでしょうか。救急で見逃された重症疾患で翌日患者さんが搬送され死亡する、というニュースを時々耳にします。

今回紹介するのは、特に救急外来で見逃しが問題となる重症疾患の非典型例を学ぶのにおすすめのAntaa Slideです。

CTでくも膜下出血の否定は難しい、疑ったらMRIや腰椎穿刺も検討

くも膜下出血の典型例は、突然の激しい頭痛です。「突然」「経験したことのない」というキーワードから、くも膜下出血を疑います。しかし軽い頭痛や首の痛み、肩こりで歩いて病院を受診したケースなどの軽症・非典型例となると、見逃しの可能性は高くなるでしょう。くも膜下出血は、死亡率が25-53%と高いにもかかわらず、誤診が少なくない病気のひとつです。

Oreo@脳神経外科のスライドでは、くも膜下出血の見逃しが多い背景から、問診時に使えるOttawa SAH ruleを紹介しています。6項目中すべて陰性で、感度100%でくも膜下出血の否定が可能です。軽い症状非典型例の症例において少しでもくも膜下出血を疑う場合には、Ottawa SAH ruleを使って積極的に否定しましょう。

また、CT撮影したが否定しきれない場合は、MRI腰椎穿刺を検討します。MRIと腰椎穿刺のどちらを選択すべきか、それぞれの検査のメリット・デメリットについて解説しています。

症状はめまいのみ、確実に中枢性めまいを鑑別

めまいは、外来受診の主訴として非常に多い症状のひとつです。めまいを起こす病気で特に見逃せないものとして、貧血低血糖心筋梗塞などの全身疾患に伴って起こるめまいや、小脳梗塞小脳出血による中枢性めまいなどです。末梢性めまいであっても、症状が強い場合には、患者さんも外来から帰宅できないこともありますよね。自信をもってめまい診療がおこなえるように、Takashi@耳鼻咽喉科のスライドを紹介します。

めまいの診療に最も重要なものは問診です。「回転性めまいなら末梢性」などと決めつけず、オープンクエスチョンで進めましょう。中枢性めまいと末梢性めまいの鑑別に使えるHINTS plusが紹介されています。Head Inpulse Test(HIT)と眼振、眼球偏倚、難聴の有無で、中枢性と末梢性の鑑別に感度・特異度ともに95%以上のチェックリストです。ぜひHINTS plusやHITを外来でのめまい診療に役立てていきましょう。

やはり怖い胸痛、ST上昇がなくても検査をくり返し、徹底的に疑う

心筋梗塞の非典型例ほど、外来での診断が難しいものはありませんよね。心電図もST上昇があればわかりやすいですが、わずかな変化しかないものなど、読影にテクニックを要します。採血結果もトロポニンが上昇する前の超急性期の場合など、心筋梗塞を見逃すさまざまな落とし穴があります。心筋梗塞は、見逃すと予後に大きくかかわります

胸痛患者さんの対応について、masa1019@救急科、内科のスライドを紹介します。少しでも心筋梗塞を疑った場合は、心電図検査はハードルを低くしておこないましょう。また1回の検査ですべて否定することは難しく、心筋梗塞を否定できない場合には、時間を置いて心電図トロポニンなどの検査をくり返しおこなうことも重要なポイントです。

診断エラーを起こす仕組みを知り、頻度を下げる

近年、医療訴訟のニュースを耳にしますよね。防ぎ得たものから、防ぐことが難しいものまで幅広く存在します。診断エラーは起こるものと自覚し、自分の見逃しパターンをよく知っておきましょう。また、どのような患者であっても必ず確認するチェックリストを決めておくなどの工夫で、できる限りミスを減らせます。

坂本壮先生のスライドは、ERで多い医療訴訟の内訳からエラーが起こる仕組みまで網羅的に説明しています。ERに限らず、すべての診療に当てはまる内容です。自分の陥りやすいエラーを認識し、知識だけに頼らずシステム作りも重要であるということがスライドからわかります。ミスをしてもチームで正しく修正することで、患者さんに悪影響が及ばないシステム作りは、とても大切ですね。

重症疾患の見逃しを防ぐために、自分の診療スタイルを確立しましょう

見逃しを防ぐためには、患者さんの来院時間や第一印象だけに頼らず、決まった診療スタイルで臨むとエラーを減らせます。また、自分一人で解決せずに、疑問に思ったことはすぐにきける環境作りも大切です。大前提として、医療知識が豊富にあることも重要です。Antaa Slideで知識をアップデートして、学び続けましょう。


執筆:すたば@救急医