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「つながる力」が、一人で頑張る医師の「希望」になる【Antaa公式noteはじめました】

はじめまして!アンター株式会社です。私たちは「医療をつなぎ、いのちをつなぐ」をミッションに、医師同士の質問解決プラットフォーム「Antaa QA」などを運営する2016年創業のスタートアップです。

私たちの取り組みと思いを多くの方に知っていただきたいと思い、このたびnoteをはじめました。初投稿となる今回は、代表の中山とCOOの西山が2020年を振り返りながら、Antaaで大切にしていることを改めて話し合ってみました。

はじめましてのご挨拶にしてはちょっと長い記事ですが、よろしければご笑覧ください。

「医療をつなぎ、いのちをつなぐ」を手探りで模索した1年間

──この2020年を振り返って、どんな1年間でしたか?

中山 ちょうど1年前は八重洲にオフィスを構えていた頃ですね。社員も西山さんとエンジニアの伊藤さんだけで、その他に業務委託の方が10名弱ほどいるという状況でした。

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中山 俊(なかやま しゅん)
アンター株式会社 代表取締役/翠明会山王病院 整形外科医師

鹿児島県出身。鹿児島大学医学部を卒業後、東京医療センターで初期研修。2016年にアンター株式会社を創業。「医療をつなぎ、いのちをつなぐ」をミッションに医師同士がつながる場やサービスをSNSを用いて運営。Antaaサービスの登録医師数は23,000人を突破。趣味は、温泉・サウナ。
Twitter:@shun_nakayama_

Antaaのサービス開発の土台がやっと出来つつある、というフェーズだったかなと思います。メインプロダクトのAntaa QAというサービスはあるけれども、これをどのように良いものにしていこうかが試行錯誤でしたし、そもそもまず人が足りない。「道筋がまだ見えていない」というのが去年の今ぐらいでした

そしてちょうど、オンライン配信も手探りでやり始めた頃でしたね。

西山 今の日本橋オフィスにあるようなしっかりしたスタジオやカメラもなくスマホで撮影していたし、配信技術がある人もいなかったので、中山さんが撮影も配信もするという状況でしたね。

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西山 知恵子(にしやま ちえこ)
アンター株式会社 取締役COO

株式会社リクルート、デロイトトーマツ ベンチャーサポート株式会社などを経て、アンター株式会社取締役COOに就任。

中山 今振り返ると、この1年間は「Antaaのサービスを届けたい医師に、どうすればAntaaのことを認知してもらえるか」を試行錯誤した1年間だったなと思います。

西山 「どうしたらユーザーである医師の先生方とタッチポイントを作っていけるのか」「どうしたらそれをAntaa QAのサービスにつなげてゆけるのか」という課題に日々向き合って来ましたね。

サービスの特性上、いかにユーザー同士のコミュニケーションを促進するかを考えたときに、それをシステム開発でどうにかするのはなかなか難しい部分がありました。

そこで、情報をどのように発信していけばユーザー同士のインタラクションを生み出せるのか、もしかするとオンライン配信ならそれを実現できるのではないか、と。

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5月に開催した「つながるちからフェス」にて

「もっとコメントしてもらうために何か出来ないだろうか」「配信スレッドに入ったらまず参加表明として『着席!』と発言する文化を作れば、視聴者がアクションしやすくなるんじゃない?」――そんな地道なトライアンドエラーの繰り返しでした。(スマホのカレンダーを見ながら)毎日必死だったなっていうのを今振り返ってみて思い出しました。

Antaaの3つのプラットフォームに集まる「熱量」

──そうした試行錯誤の取り組みの中で、各サービスにはどのような変化がありましたか?

中山 そもそも最初は、Antaaに参加する先生方が「分からないことを一緒に学んで解決していく」という共有体験を作ることを目的に、UML(United Medical Leaders)といった、若手医師が集まるイベントを開催していました。

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第3回 UML@大阪(2017年11月)にて

そこからもう少し領域を広げて、インターネットで繋がる人たちの共有体験をつくるために始めたのがオンライン配信でした。この数ヶ月間はその配信回数を増やしていたのですが、次はそうした共有体験を作りつつ、コンテンツとしての価値をもっと高めていくフェーズに変わりつつあると考えています。

より具体的に言うと、「現場で困った時に必要となる情報」をコンテンツとしてしっかりと届けられているか、ということですね。

西山 普段から役立つ情報を提供できなければ、いざ先生方が臨床の現場で困ったときにAntaaのことを想起していただけない。そう思って、Antaaのオンライン配信を見れば課題が解決する、と思っていただけるコンテンツを先生方に協力いただきながら作っているところです。

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オンライン配信は、AntaaのFacebookグループとAntaaアプリにて配信

中山 サービスには大きく分けて「ストックして蓄積していくサービス」と「流れていくフローのサービス」の2つがあると思います。オンライン配信はこれまで、Antaaを盛り上げて行くために共有体験を提供してゆく、流れてゆくサービスでした。それがまさに今、オンライン配信でストック的な価値を作っていこうという流れに変わってきていますね。

──コンテンツという側面でいうと、Antaa SlideやAntaa QAの変化はいかがでしょうか?

中山 Antaa Slideはサービス立ち上げから3年ぐらいうまくいかない状況が続きましたが、少しずつコンテンツが集まり、サービスとして成長し始めてきているのを実感しています。

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医師・医学生のためスライド共有サービス「Antaa Slide」

Antaa QAには、モチベーションが高い先生たちがこれまで以上に参加してくださったように感じます。オンライン配信やAntaa Slideで生まれている熱量を、いかにAntaa QA上のコミュニケーションにつなげるサイクルを作ってゆけるか。それをまさに今、一つひとつ積み上げているところです。

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医師同士の質問解決プラットフォーム「Antaa QA」

西山 今までは、オンライン配信はオンライン配信、SlideはSlide、QAはQAといったように、それぞれのサービスが独立していました。例えば、A先生はAntaaと聞いたら「Antaa QA」を思い浮かべるかもしれないけど、B先生は「Antaa Slide」を思い浮かべるかもしれない、といった状況です。

でも私たちは、何かを相談したいとか知見を得たいと思ったときに「Antaa」を想起してもらいたいと考えています。そのために、今まで独立していた各サービスを統合し、それぞれで生まれた熱量や知識を循環させる施策を打っていっています。

サービス成長とともに、そのための体制を整えてきた1年間

中山 そういった施策が打てるようになってきたのも、色々なメンバーが集まってきたからですね。この1年間を振り返ったときにもうひとつ思うのは、「体制を整えてきた1年だったな」ということです。

2016年の創業から、今話してきたように課題を見つけながら試行錯誤を繰り返してきましたが、医師が使う実名サービスを提供するということで、サービスだけではなく僕らが掲げるビジョンが大事になってきます。そのコアビジョンにいかに共感してもらうかという課題に、西山さんと地道に向き合ってきて、ようやくその手応えが出てきた1年間でした。

Antaaでは、関係性が深い少数のメンバーで、会社に参加している人がそれぞれに自分自身の価値を感じながら、大きい何かを成し遂げたいという想いがあります。Antaaで働く人には、「自分はいなくても大丈夫だよね」とならないで欲しいと思っています。今後も、そういう人たちに入ってきてもらえると嬉しいですね。

すべての意思決定は、現場の医師とその先の患者さんのために

──人が集まってくる中で、組織における二人の役割にはどのような変化はありましたか?

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中山 これまでは、基本的に何でも自分でやるしかありませんでした。それこそ、オンライン配信のサムネイル画像も自分で作るし、配信のオペレーションも自分でするという感じでした。医者が個人でどこに行っても活躍できる世界を作っていきたい。そういう想いを持ち続けて、毎日何かしら前に前に進もうと思って何でもやって来ました。

それが最近は「それって本当に自分がやることだっけ」と考えるようになっています。自分が作った道に人が集まってきたので、集まってきたエネルギーをどこに持って行くのかをしっかり考え抜く。そして自分よりも最適な人がいて、その人にしっかりとやってもらうことが大事になってきたと思います。

西山 この二人のコミュニケーションの質も変わりましたね。

中山 西山さんと今一緒に働き始めて2年を過ぎたところですが、最初の頃は医療現場の課題感や肌感を理解しているのが僕しかいないので、そこに関しての意思決定ができるのも僕しかいない状況でした。

少しずつAntaaに触れてくださる医師が増え、西山さんも先生方と接する機会が増えてくる中で、ユーザーである医師の肌感覚や、ユーザーと共有する世界観への理解がすり寄るようになってきたと感じています。もちろん、考え方や、お互いに見えているものは若干違うので、そこをすり合わせるためにコミュニケーションを取っている感じです。

僕はすぐに色々やりたくなってしまうんですよね。

西山 私自身は大企業が長かったこともあり、中山さんが何かをやりたいと思った時に 、どうしてもリスク先行で考えることが多くなりがちです。でも、私には見えていない世界が中山さんには見えているかもしれない。新しい試みを止めてしまうのは、チャンスを逃すことになるかもしれない。だからまずは1回やってみることにしています。

ただ「撤退ラインだな」と判断したときはそれを確実に伝えるようにしています。継続するべきか、コストを考えてやめるべきかはやり始めて少しすると見えてくるので、そのタイミングで笛を鳴らしています。

中山 その笛の出るタイミングがだんだん早く擦り合うようになってきているかなと思っていて(笑)、このスピード感が増せば増すほど、事業はもっと前に進むと思っています。時間、ヒト、モノ、そしてお金という有限なリソースの中で、撤退ラインをどこに設定するのかがこの2年間で鮮明になってきたなと思っています。

ともすると色々なことをやりがちですが、いたずらに仮説検証を繰り返しても止める人がいないと仮説検証が回りっぱなしになり、そこから何も生まれてきません。医者が目の前の患者さんを診療しているときに情報を得たり、他の医者とつながることによって助かる人がひとりでも増えていくという瞬間を作るために、しっかりと見極めていかなければいけないなと考えています。

医師が「個」として能力を発揮し、価値提供できる世界を

──昨今、オンライン診療の話題など医療ITを取り巻く世界は大きく変わり始めています。この世の中の流れについては、どう考えていますか?

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中山 もっと先の未来があると思っています。医療はもっと民主化されるはずです。今までは患者さんが病院に足を運び、医者が対面で診察することによって医療が提供されてきました。

コロナ禍によるオンライン診療の普及によって、病院に受診せずに診療を受けるケースも生まれました。しかし、医者が病院にいる状況は依然として変わっていません。これは、医者個人というよりも病院という組織・医療機関として患者さんを診ているということです。このように、これまで医者が良い医療を提供できるようにサポートをしていたのは医療機関でした。

もっと先の未来では医療機関という枠を超えて医者個人として医療を提供していく世界があると思っています。しかし現在は、医療機関のサポートがない状況で医師個人が患者さんに提供できるバリューには限界があります。Antaaがここをサポートすることによって、医師が「個」としてしっかりと能力を発揮し、患者さんにより大きなバリューを提供できるようにしていきたいですね。

西山 Antaaはこれから、一人の先生が患者さんに向き合っているその後ろで、何万人もの先生が診療科の垣根を越えて支えている、という状況を提供していきたいと思っています。

例えば、離島での医療や夜の当直。一人で診療にあたっている先生をAntaaを通して多くの先生方がサポートすることで、今まで抱えていた不安を軽減することができるかもしれませんし、それが患者さんに還元されていくかもしれません。そういう世界をAntaaはつくっていけると思っています。

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中山 あともう一つ。医師が個として活躍していくと言うと「医療機関や病院が必要ない」という誤解を与えてしまうかもしれません。そうではなく、病院は帰属意識の1つ、医師の心の拠り所として必要です。でも、病院に所属しているからといって医師が孤独感や不安を抱えていないかといえば、そんなことはありません。

そういった小さな隙間を埋めていくことが、Antaaのビジョン「医療の境界をなくす」にあるような、なめらかな世界をつくっていくことにつながると思っています。みんなそれぞれに家はありますよね。同じように、所属する場所や帰る場所は必要だと思っています。僕らが目指すのは、家と家があって、お隣さんがいて、困ったときに助け合える世界です。

そういった、必要なときに必要な情報にアクセスできるネットワークであったり、人が集うことによって新しいコミュニケーションが生まれる場をつくろうとしています。

深夜1時「緊急の質問」に日本中の医師が知恵を寄せ合った瞬間

──Antaaがそうした場になるためには、今後どんな壁を越えてゆく必要があると考えていますか?

中山 誰かに会ったときに「この人いい人だな」って思うときがあると思います。Antaaの今のサービスは、まさにそういったが集まっているので「Antaaってなんかいいよね」という評価につながっていると思います。

西山 心地よさ、みたいなところですかね。

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中山 そうですね。でもそれは属人的なものではなく、Antaaのサービスそのものから発揮できないといけないと考えています。そこで必要になってくるのが、Antaaのコアになるサービスの熱量です。

先日、Antaa QAででが投稿されました。その質問に対して、お互いに会ったこともないであろう10人の先生が、深夜にも関わらずわずか1時間でたくさんのアドバイスを返答してくださいました。こういった共有体験が作れる瞬間は、Antaaのプラットフォームの力だと思っています。

あの瞬間を今後たくさん作っていくために、今後も1つずつ積み上げていきます。

西山 Antaaに参加してくださっている先生が挑戦している姿を見て、他の先生がその熱に感化されることがあると思っています。「同じ現場にいるわけではないけど、この先生が頑張っているから自分も頑張ろう」といったように、ある先生の熱が他の先生の熱を引っ張ってくる瞬間を、Antaaのサービスで作っていきたいですね。

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そして、Antaaのサービスに触れたときに、「医者でいてよかったな」と感じてもらえたらいいなと思っています。何かに挑戦したいとか、医療を前に進めたいと思っているからこそ、知りたいことが出てくるんだと思います。そういうときにAntaaが、常にそばにいる存在でありたいです。

中山 描く未来に向かって、必死に走っています。この世界はいつかは誰かが作るかもしれないけど、今は僕らが一番作れそう。だったら自分たちの手で作っていきたいなと思います。

「つながる力」が一人で頑張る医師の「希望」になると信じて

──最後に、Antaaのオンライン配信でも恒例の質問をお二人にも聞きたいと思います。中山さん、西山さんにとっての「つながりとは?」

西山 つながりとは、「可能性を広げるもの」だと思っています。オンライン配信などを通して、先生方がつながることによって、新しい可能性が広がる瞬間にこれまで幾度となく立ち会ってきました。つながりをつくることで、先生方の可能性を無限大に広げられると感じています。

村の診療所で、数少ない同僚医師とともに地域で暮らす人たちの健康をを守りたいと思っている先生がいらっしゃいました。その先生は、良い医療を提供するために学びたいと思いつつも、物理的にどこかに行って学ぶことができる状況ではありませんでした。そんな中で、Antaaを通じて遠く離れたところで研究に勤しむ、今までつながりのなかった先生に出会うことで、新しい可能性が生まれた瞬間に立ち会いました。

私たちが何かを発信していくことで、今後もそうした可能性が広がっていけばいいなと思っています。

中山 つながりとは、「希望」だと思います。つながりがあることによって「もっとやれるんじゃないか」「もっといい方法があるんじゃないか」と“あと一歩、もう一歩”を踏み出すことができると思います。

誰しもそこに希望があると知っていて、だからこそつながりを求めていると思うんです。自分一人しかいないと、そこに希望を感じることは難しいですよね。だから僕は、Antaaがそういった「希望」であったらいいなと思っています。

◇ ◇ ◇

最後までお読みいただきありがとうございました!引き続き、Antaa公式noteをよろしくお願いします。