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僕がハゲタカファンドでゴルフ場を買い漁った理由(後編)

あえて黒船に乗る!

外資ファンドは、汚れ役、悪役になると知っていてゴルフ場を買い取りました。ビジネスになるからです。

ゴルフ場会員と同じく僕の目にも、彼らガイジンにとって日本市場は単にカネを増やす「狩り場」に過ぎないのだ、と映っていました。
ガイジンたちは日本という国への敬意も愛情もなく、典型的なユダヤ商法で非情に金儲けをするだけの、屍肉に群がる非情なハゲタカなのだと。

僕だって日本人です。
美しい国土や、気高く礼儀正しく思いやりに溢れた日本人の心、勤勉で誠実で精緻さと正確さを尊ぶ文化、鋭敏で繊細な感性…まあ多少の欠点もなくはないけれど美点に溢れた国民性を誇りに思い、大切に受け継いでいきたいと思っています。

でも今は、過去のバブルの失敗を清算し、もう一度次世代の日本を再生するために、外国資本の力を借りねばならない時なのだと、僕はそんなふうに考えました。
不良債権処理の受け皿として、今は強欲な外資ファンドを利用する以外にない、その代償に彼らに入り込まれ、多額の利益がむさぼり食われてしまうけれど、それに耐え忍ばなければ、日本に再生はない、と。

大げさなことに聞こえるかもしれませんが、なんとか少しでも日本をよくしたい、膿を出すには痛みもあるけれど、再生のために痛みを与え、嫌われ者に誰かがならなければいけないのなら、僕がやってやろうと思いました。
うまくいくかどうかはわからないし、僕なんかのやれることはほんのちっぽけなことしかないだろう。
でも、1億2000万人の日本人が明るい未来を生きられる世の中に変えることに、ごくわずかでも力を尽くしたい。そんな思いを持っていました。

そんな折に、たまたま社会人になってから15年ほど在籍していた会社では海外部門でカリフォルニア州のゴルフ場運営のスーパーバイズをしていたことから、この外資ファンドに紹介を受けたのです。


従業員こそが企業の最大の財産

ゴルフ場M&Aを始めてから最も強く僕の心をとらえたのは、ゴルフ場の現場で働くスタッフの姿でした。夏は暑く冬は寒い苛酷な環境で、賃金が上がることもなく、会員からは預託金を返せと責め立てられ、そもそも職場が存続するかどうかもわからない、明日が見えない不安な中で苦しい思いをして働いてきた人たちです。

それでもお客様に喜んでもらおう、職場の仲間に迷惑をかけないようにがんばろう、家族のためにしっかり働かなくては…そんな気持ちで現場スタッフは歯を食いしばって苦境に耐えてきました。
このスタッフたちがこれからは安心して生き生きと働いていけるようにしたい、今までの苦労が報われなくてはならない!
そんな思いが僕の心に強く芽生えたのです。

ゴルフ場で働いていた人たちがどう感じていたか、僕の思いがどれほど現場に通じていたか、今となっては知ることもできません。思っていたことの1割も実現できませんでしたから、たぶん、何も伝わっていなかったかもしれません。(残念ですが)


その後、いくつかの会社で勤務してきましたが、常に思っていたのは「働く従業員が幸福であってほしい」ということでした。
投資ファンドで数字を弾き、法律を盾に右から左に金を(それも他人の金を!)転がしているだけでは現場で働く人の痛みは理解できない、いくら儲かったかでは現場スタッフの幸せは測れない、という思いが次第に強くなり、実際に人が事業を動かしている企業を選んで転職しました。

管理職や経営に関わる立場になっても、未熟ゆえに人のマネジメントのやり方もよくわからず、いくつもの失敗を重ねてきましたから、関わった人たちの幸せに貢献できたと自信を持って言うことはできません。
でも、自分なりに苦心しながら取り組んできた結果、部下や関連部署の人たちから、感謝の言葉をもらったこともありました。
僕の存在や僕なりに一生懸命やっていることを肯定し、評価し、受け入れて、彼らにとってプラスになっていることを伝えてくれたのです。涙が出るほど嬉しい瞬間でした。

人の輝く表情を見るのは本当にいいものです。こちらも勇気が出ます。
自分は人を大切にすることを仕事にしていきたい、と強く思いました。

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