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生態系サービスとは何だろう

 こんにちは。
 
 先日、といってもだいぶ前になりますが、4月23日に「森と地球」というタイトルで記したnoteで、京都大学フィールド科学教育センターの伊勢武史先生が「森の生態系と私たちのかかわり-地球温暖化から人のこころまで」というテーマでお話になっているYoutube講義録を紹介しました。 森を地球の生態系の重要な要素と位置付けて大変興味深いお話をされているので、もし未だご覧になっていない方は、お時間おありの時に是非一度ご覧ください。

生態系サービスビジネスとは何だろう

 さて、今日は「生態系サービスビジネス」という言葉について触れたいと思います。

 先ずは、「生態系サービス」の定義ですが、名古屋大学環境学研究科の曹 穎先生は次のように述べておられます。

  生態系サービスとは、人々が生態系から享受する恵みを総称したもので、「生態系の公益的機能」とも呼ばれる(林2010)。生態系サービスには、供給サービス、調整サービス、文化サービス、そして基盤サービスが含まれる(MA 2005)。
 1990年代以降、市場メカニズムを活用した生物多様性の保全や生態系サービスの取引に関する議論が活発になっている。とくに2005年に国連が発表した『ミレニアム生態系評価』以降、「生態系サービスへの支払い」(Payment for Environmental Services:PES -太文字筆者)が極めて重要な理論的概念として注目されてきた。(以下略)

(出典:水資源・環境研究 Vol.28 No. 1 2015 曹 pp.75-81)


 「生態系サービス」の定義を上述のように理解した上で、「生態系サービスビジネス」を考えてみましょう。
 2019年7月31日に「美しい森林づくり全国推進会議、林業復活・地域創生を推進する国民会議」主催で実施された『森林×SDGsで拓く「森林イノベーション」シンポジウム』の基調報告で上智大学大学院地球環境学研究科の柴田晋吾先生が、お使いになっている資料をご覧ください。 この資料の1ページ目で「『(森林)生態系サービスビジネス』ベクトル」というタイトルの図があります。

 この図で柴田先生が仰ろうとしていることは、森林というと、つい、木材・バイオマス・ファイバーなどいわゆる林業を代表例とする森林ビジネスばかりに注目してしまいがちですが、森林には防災、水源保全、炭素固定・吸収、非木材森林産品、景観保全、レクリエーションツーリズム、野生生物生息地・生物多様性保全、環境教育など広範な価値を経済化できる可能性があるということだと思います。

 林業以外にこのように幅広い分野のことをビジネスとして取り込むと、森林はますます荒れるのではないかとの懸念も生まれそうですが、「(森林)生態系サービス」の論点は、異なります。私(筆者)は、このように森林を広い視野で見つめなおし森林をビジネスとして「経営」することにより、森林のみならず広く生態系全体を保全維持するための可能性が高まる、と理解しました。

 あきる野市の南沢あじさい山

 ビジネスというと何だか生臭い話となり、「自然と緑」から遠のくような感じがあるかもしれませんが、決してそのようなことはないと思います。 繰り返しになりますが、(森林)生態系サービスをビジネスとして捉えなおすことにより、自然環境、生態系の保全維持につながる可能性はかなり高まりそうです。
 一つだけ、生態系サービスビジネスの事例を挙げておきます。6月20日の東京新聞に掲載されたあきる野市にある南沢あじさい山のお話、林業が衰退する中で林業家の南沢さんという方がコツコツと山中にあじさいを植えて、多くのあじさい見物客が訪れるようになったそうです。

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 南沢あじさい山のホームページを見ると、「皆様からいただいた入山料は年間を通してあじさい山の維持・管理のための費用に使わせていただいておりますので、ご理解・ご協力をよろしくお願いいたします。」という記述があります。これは正に、生態系サービスビジネスのポイントだと思います。

 「明日も良い日に」で、今後もう少し生態系サービスビジネスについてみていきたいと思います。

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