見出し画像

日本酒のお話 〜 城南宮と都鶴(みやこつる)

これまで灘酒のレポートはいくつかしましたが、実は伏見の酒のレポートをしておりませんでした。世の中三大●●というのはよくありますが、日本酒もご多分に漏れず三大酒どころというのがある様で、その一角を占める伏見が無いのは私達としても
そーいや伏見の日本酒書いてないよな
と思ったこともあり、城南宮と伏見に行ってまいりました。
しかもこの日、訳あって兵庫県西宮市の廣田神社に行ったんですよ。過去にそうしてきた通り、普通なら灘酒、それも西宮郷の日本酒買うこと考えますよね。しかしこの日は木咲の発案で、伏見に行ってみようじゃないかということになった訳です。
という訳で伏見と言えば城南宮、ちょうど梅のシーズンで賑やかでした。人出が多かったので、写真はヘッダーの通りの1枚だけにしておきます。
城南宮は国常立神をお祀りし、厄除けや方除け、そして梅園でも知られる有名観光地でもあります。白河上皇などの院政の拠点になった鳥羽離宮に近接していたり、後の世でも手厚い保護と信仰を集めていたことで知られています。戊辰戦争の幕開けになった鳥羽・伏見の戦いにあっては、朝敵を討つという大義名分を得た薩長同盟軍が戦勝の御礼にお参りしたとか何とか。まあいつの時代も「勝ち馬に乗る」というのは変わらない様で。

お参りを済ませて向かった先は、伏見大手筋商店街です。蔵元の直営店巡りをするには情報が少なかった為、地酒が揃う販売店さんに行くことにしたという訳です。
で、今書いててふと思ったのですが、伏見と言えば月桂冠や松竹梅、黄桜といった大手酒造メーカーが並ぶ訳ですが、灘の白鶴や菊正宗、大関、日本盛、剣菱etc.同様に、地酒という言葉が似合わないメーカーと、地酒の蔵元との明確な違いってあるんでしょうかね?
そんな訳で調べてみたら、そう明確な違いがある訳では無さそうですが、一応の目安として灘と伏見以外の場所の酒を地酒と言うのだそうな。江戸に運ばれる下り酒を出せるのが灘と伏見の酒だったことから、その他の酒は江戸には来ない地元オンリーの酒で地酒、とどうやらそんな理屈の様ですが、合ってるのかどうかはよく分かりません。しかしまあ、そんな話は大したことではないでしょう。今や全国色々な大中小の蔵元の酒が手に入る時代ですから、伏見の地酒、みたいな銘柄があってもいい様に思います。

みやこつる 純米吟醸

ああでもないこうでもないと品定めして買ってきたのがコレ、都鶴酒造さんの純米吟醸酒です。決め手になったのは、
京都限定販売 で 甘口 
という表示です。

京都限定販売 甘口のお酒のラベル

なるほど確かに同社HPを見ていると、ラベルの表示は 都鶴 と漢字ですが、これは平仮名で みやこつる になっていて、HPには見当たりません。
都鶴さんの酒は江戸時代に下り酒の中に入っていて、当時の江戸の酒の番付表に名前があるそうです。(同社HPより)
つまりは地酒ではないということになりますが、京都限定販売なら地酒みたいなもんでしょ、程度の認識で買ってきた訳です。

みやこつる のスペック

これまでに買って飲んでみたら結果的に甘口だった日本酒というのはあります。
奈良県の猩々や滋賀県のねこ正宗あたりを思い出しますが、今回は敢えて甘口を狙って買ってみたのですが、まずひと口目
「おぉ、なるほど…これが伏見伝統の甘口というものか。」
という味わいです。明らかに甘い。それも甘口にこだわっている感…結果甘口ではなく、狙ってこの味にしている哲学とでも言いますか…を感じるとでも言いますか。だからスッと飲めてしまいます。何も考えずに飲んでから「あぁ、これは甘いね。」と感じるのではなく、最初から甘口と思って飲みながら感じることが案外違うのはよく分かります。それでいて日本酒の美味さをしっかり感じるあたりが、さすがの下り酒を許可されていた伝統と蔵元さんの矜持なのでしょう。
よくある灘酒派 vs 伏見派の様な好みの分かれ方が今更ながらよく分かりました。
辛口と言われながらもただ辛いだけでなく、実はそれほど辛くもないんじゃないの?と思わせる灘酒に対して、甘いですよ甘いですよ、ほらね、でもその中に日本酒の旨味を押し込んでますよ…と思わせる伏見正統の日本酒の違いと歴史の重みを教えてくれた良酒でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?