★読書メモ……浜田寿美男『虚偽自白を読み解く』:まいにち100字【61日目】

・従来の虚偽自白モデル
取り調べ担当者が暴力(拷問・脅迫)などを用いて、被疑者に虚偽の自白をさせる、というもの(たとえば、刑事訴訟法319条)。
以下に述べるように、実際の虚偽自白は暴力などを使用せずとも生じるものである。

・証拠なき確信/刷り込み?
取り調べする側は、被疑者を有罪と決めてかかる。被疑者の否定は一切受け入れられない。たとえば、お前が犯人だ、という主張を「呪文のように言い続ける」(35頁)。
袴田事件では、取り調べ担当者は「[……]犯人は袴田に絶対間違いないということを強く袴田に印象づけることにつとめる」といった、刷り込みに近い方針をとっていた(79頁)。
(*インタビューや社会的調査、フィールドワーク等でも生じそうな心理。非体験者の思惑に、体験者が迎合してしまう。)

・基本的な虚偽自白の流れ
①社会的関係を絶たれ、孤独になる。
②取り調べでは、自分の主張は一切受け入れられず、無力感と絶望に襲われる。
③現在生じている取り調べによる苦痛(無力感・絶望)から逃れるために、虚偽の自白をしてしまう(現在性バイアスの一種?)。
(*メンタルが強い場合でも、仲の良い知り合いなどが取り調べ担当者にいると、心を許してしまう場合がある。ex.狭山事件の石川さん。)

犯人を演じる
いったん虚偽自白をすると、自分が犯人であればどうするか考えながら(犯人を演じながら)、体験していないことの証言を始める。
当然、証言はちぐはぐしたものになるため、取り調べ担当者と取調官によって、歪められた調書が裁判では証拠として扱われた(125頁)。
当然、取り調べ担当者も非体験者であるため、実質的には、非体験者同士で体験していない出来事を創作している、ということになる(231頁)。

・自白的関係/偽の人間関係
取り調べを終えても、取り調べ担当者との偽物の人間関係が存続する限り、自白を撤回することはできない。

・虚偽自白をした者は、自分は罪を犯していないので、刑罰への実感が薄く、重い罰を易々と受け入れてしまう。
(*現在の苦痛から逃れるために、未来の大きな苦痛を選んでしまう。)

逆行的構成
事件調査で得られた断片的な事実を、取り調べ担当者から知り、それをもとに、体験していないことについて証言を作っていくこと。

賢いハンス効果
本当の正解を知らないながらも、取り調べ担当者たちの顔色やリアクションを見ながら調整し、暫定的な正解にたどり着いてしまう現象(164頁)。
(*元ネタは、プフングスト『ウマはなぜ「計算」ができたのか』。)

おわり❗️

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