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脳アミロイド血管症と1回の入院

脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy; CAA)とは、脳内の血管壁に生じるアミロイドーシスをいいます。アルツハイマー病(Alzheimer's disease; AD)の原因であるアミロイドβ(Aβ)蛋白が蓄積するAβ型CAAが一番多いです。そのほか、シスタチンC、トランスサイレチン、ゲルソリン、プリオン蛋白などが蓄積するCAAが報告されています。脳アミロイド血管症は、脳血管へのアミロイド沈着が主たる病態で、巨舌や末梢神経障害などを呈する全身型アミロイドーシスとの関連はありません。

Aβ型CAAは多彩な脳血管障害の原因となります。症候性の脳葉出血、微小出血、微小梗塞、脳表ヘモジデローシスなどの多くがCAAに起因します。大脳の皮質・皮質下出血は、進行した高血圧症例と比較してCAA症例に多いとの報告もあります。CAAは加齢により増加すると考えられていて、日本では高齢者の30~40%にCAAが認められたとの報告があります。一方CAAはAD患者の80~90%に認められる病理所見で、ADとCAAとの間に病態の重複が考えられています。

高血圧や高脂血症などによる全身動脈の粥状硬化との明確な関連性はないですが、以下のような多発微小出血による脳血管障害などを来します。

(1)脳葉型の大脳出血(特に前頭葉)    
(2)二次性くも膜下出血: 脳表ヘモジデリン沈着症を続発することもある
(3)小脳出血
(4)白質脳症
(5)皮質小梗塞や視床出血 
(6)一過性脳虚血発作
(7)症候性てんかん     

過日、支払査定の照会で脳アミロイド血管症についての照会がありました。本疾患は頭蓋内の多発微小出血により様々な疾患を併発することに注意が必要です。当初、てんかんや一過性脳虚血発作(TIA)で発症し、後に脳アミロイド血管症と確定診断されることもあります。医学上重要な関係にある一連の疾患と考えられることから、複数の入院が1つの入院とされることがあると思います。入院日数が通計されることから、入院給付金の1回の支払限度により制限を受ける可能性があります。

1回の入院とみなすとは、次のような場合をいいます。

入院を2回以上した場合で、入院を開始した原因が同一かまたは医学上重要な関係があると当社が認めたときは、それらの入院を1回の入院とみなします。ただし、退院日の翌日からその日を含めて180日を経過した後に開始した入院については、新たな入院とみなします。

生命保険普通保険約款

生命保険会社の保険種類によっては、入院を開始した原因の如何を問わずに1回の入院とみなすものもあります。また新たな入院についても、180日が60日という制限としている入院1時金支払の保険商品もあるようです。

脳梗塞再発予防薬として広く用いられている抗血小板薬「シロスタゾール」が認知症の進行予防にも有効であるとの報告があります。



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