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ホルモンとは、主に牛や豚の腸管を意味しているが、焼肉屋さんでは内臓全般をホルモンと呼んでいることが多いようです。内臓全般の焼肉をホルモン焼きといいます。ホルモンの語源には、内臓を食べると元気がでることから、医学用語のドイツ語のhormonまたは英語のhormoneから来ているとする説や、大阪弁で捨てることを意味する「ほおるもん」から来ているとする説があります。美味しそうな話ですが、医学用語としてのホルモンには別の意味があります。


ホルモンとは

ホルモン(hormone)とは、生体内で生成・分泌され、特定の臓器や細胞を刺激して活性化する化学物質の総称です。生体の内外の環境変化に対して、生体の働きを常に一定に保つ働きをしています。生体の内部環境を一定に保つおとを恒常性の維持(homeostasis)といいます。現在、ヒトに100種類以上のホルモンが見つかっています。ホルモンの種類をその構造から分類すると次の4つになります。

・ペプチドホルモン
・ステロイドホルモン
・アミノ酸誘導体ホルモン
・プロスタグランジン

ペプチド(peptide)ホルモンは、アミノ酸の短鎖(3個~200個)で構成され、細胞内でより大きな前駆体分子として合成された後、翻訳後修飾によって活性型に切断されます。標的細胞の膜受容体に結合して作用します。ステロイドホルモンは、脂質、特にコレステロール骨格に由来するホルモンです。副腎皮質ホルモン、性腺ホルモンなどがあります。アミン(アミノ酸誘導体)は、簡単な構造をしたアミノ基(-NH2)をもつ化合物をいいます。チロキシン、カテコールアミンなどがあります。ステロイドホルモンが結合する受容体は、標的細胞の細胞質に存在します。また、甲状腺ホルモンが結合する受容体は、核の中のDNA(デオキシリボ核酸)に存在します。

ホルモンは内分泌腺で合成され主に血流に分泌されます。ホルモンを合成・分泌する器官である内分泌腺には、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵臓、生殖腺(卵巣、精巣)、腎臓などが知られ、それぞれ作用の異なるホルモンが合成・分泌されています。

ホルモンの作用

ホルモンは血液中に放出され遠く離れた細胞まで運ばれ作用するものから、近くの細胞に直接作用するものがあります。前者を内分泌(endocrine)、後者をパラ分泌(paracrine)といいます。他に自己分泌(autocrine)  があります。隣接した細胞や分泌細胞自体に組織間液を介して作用するホルモンを局所ホルモンといいます。分泌細胞をその分泌様式から分けると次の3つになります。

・内分泌
・パラ分泌
・自己分泌

ホルモンを作る細胞を内分泌腺(endocrine gland)といい、ホルモンが作用する細胞を標的細胞(target cell)といいます。標的細胞にはホルモンと結合するホルモン受容体があります。受容体(receptor)がない細胞にはホルモンは作用しません。ペプチドホルモンの受容体は標的細胞の細胞膜にあり、ステロイドホルモンの受容体は標的細胞の核内にあります。

神経細胞には軸索と呼ばれる長い突起状の構造があり、細胞体で作られた神経伝達物資が、この軸索を流れてシナプス前膜に到達すると、そこからシナプス間隙に放出されます。シナプス間隙に放出された神経内分泌物質は、シナプス後膜にある受容体と結合することで、神経の電気的興奮が伝わる仕組みとなっています。神経細胞と神経細胞との間を神経伝達物資という化学物質が流れて直接作用しているという観点から、神経細胞は神経伝達物資を分泌するホルモン組織つまりパラ分泌細胞ということができるでしょう。

膵臓のランゲルハンス島には、α細胞、β細胞とδ細胞があり、それぞれグルカゴン、インスリンとソマトスタチンを分泌しています。代表的な膵臓ホルモンであるインスリンは、血糖値が上昇した際にこれを下げる作用があります。骨格筋や肝臓などの全身組織に働いて血中のブドウ糖の取り込みを促進します。組織に取り込まれたブドウ糖はグリコーゲンとして蓄積されます。一方、グルカゴンは、血糖値が低下した際に分泌され、血糖値を上昇させる働きがあります。ソマトスタチンは、食物摂取の刺激で分泌され、α細胞とβ細胞に働いて、それぞれのホルモン分泌を抑制する作用があります。膵島内にある3つの細胞は、近くの細胞に対しても直接作用しているパラ分泌細胞といえるでしょう。

脳下垂体は、脳の腹側に接し、視交叉の後方、間脳の視床下部に接した位置にあり、多種のホルモンを分泌する内分泌器官です。脳下垂体はトルコ鞍と呼ばれる頭蓋骨の窪みに存在しています。

内分泌疾患とは

ホルモンの異常によって起こる病気を総称して内分泌疾患といいます。多くはホルモン分泌量の多少により起こります。例えば、甲状腺ホルモンの分泌量が多い病気を甲状腺機能亢進症といい、分泌量が少ない病気を甲状腺機能低下症といいます。甲状腺機能亢進症はホルモン過剰症であり、甲状腺機能低下症はホルモン欠乏症です。その他にホルモンの働きが異常となる場合もあります。糖尿病のインスリン抵抗性のように、標的細胞の受容体に異常があってホルモンが作用しないこともあります。

血液中のホルモンは、極めて狭い範囲内でその分泌量が巧妙に調節されています。ホルモン量は多すぎても少なすぎても問題、つまり内分泌疾患を引き起こすわけです。

(参考)
日本内分泌学会 ホルモンについて


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