荒野とタイヨウ

「タイヨウちゃん、その人死んでるよ」

タイヨウちゃんは、寂しそうな顔をして俺に振り向く。タイヨウちゃんは死んだ人と生きている人の区別がつかない。すぐに振り返り土を掘り始めた。

「おれがやるよ。」

スコップを取り出し穴を掘る。そして埋める。タイヨウちゃんはそこに輪っかの付いた十字架をさす。小さな祈りをささげる。
タイヨウちゃんがどこからともなく取り出すアレは、未だによくわからない。だがアレを受け取ったとき、おれは救われたと感じた。この埋まっている奴も救われたのだろうか。

タイヨウちゃんは急に走り出す。大男に駆け寄り、輪っかの付いた十字架を差し出す。相手はタイヨウちゃんも十字架も見てない。熱とクスリにやられた男の顔だ。
大男は突然ナイフを取り出し、振り下ろす。俺は冷静に手を撃ち、頭を撃ち抜く。
タイヨウちゃんはアレをまだ渡そうとしている。

「タイヨウちゃん、その人死んでるよ」

【続く】