ふたりいるだろ?

 10年前だから……中2ぐらいの時か。
 「エコーロケーション」って知ってるか?イルカとかコウモリが音を出して、反射した音でモノの位置を特定するという奴だ。実は訓練すれば人間でも出来る。目の見えない人は杖の音で障害物の位置を特定するそうだ。

 俺は世界まる見えだったかで見て、学校で話してたら山田のやつがソレ出来るっていってな。マジかって疑ってたらアイスとジュースを賭けてやることになった。
 学校の帰り道に丁度いい空き地があって、そこでやることになった。山田は目をつぶって手を叩く。それで俺の方向を指せば山田の勝ち。

 とりあえず真後ろに立った。山田がパンっと手を叩くと、三回ほどうなづいたみたいに頭を動かしてから俺の方に回って指をさした。薄目開けてるんじゃねぇの?っていったら次は腕だけでやるって。次は左側にたった。
 さっきと同じようにパンっと叩いたら、左腕が真っすぐ俺の方に向いた。マジで出来るんだと思ったが、でもジュースとアイスおごるのが悔しくて、もう一回って。
 今度はあえて同じ真後ろに立ち、更にしゃがんでみた。これでいけねぇかなぁと思ってたら、山田が手を叩いた後、首を捻った。二度、三度叩く。やっぱり首を捻る。これは上手く行ったかって思ったら山田は変なことをいいだした。

「ふたりいるだろ?」

 いねぇよっと返事をしたが、ハァ?っと返された。とりあえず指させよっていったら、右腕は俺のいる方向、しかもしゃがんでる俺を指すように斜めに刺しやがった。
 左腕は真っすぐ前を刺した。前には何もなかった。何もないぞっといっても、いると。そしたら目をつぶったまま、腕を前に出してゆっくり歩き始めた。

 8歩ぐらい歩いたら山田の動きが止まった。手が壁に着いたみたいにピッタリ止まった。何をしてるのかわからず、そのまま見てたら、急に震えだした。大丈夫か!って急いで近づいたんだが、山田の顔がおかしかった。

「ま、前に誰かいる?」

 聞き取るのが難しいほど震えた声だった。目をつぶった、というより目を開けないように必死に瞼に力をこめているような顔だった。ヤバイ、ここから離れたほうがいい。そう感じて山田を動かそうと肩をひいたが動かなかった。まるで金縛りにかかったみたいに。

 俺はとにかく引っ張った。体を後ろに倒す勢いで力いっぱい引っ張っても動かない。
 ふとすると気配を感じた。山田の手の先に何かいる。見てはいけない、本能的にそう感じた。俺は見ないように引っ張り続けたが、つい目線が気配の方にあってしまった。

 目だけでた覆面の男の首が浮いていた。

「イヤーッ!」

 目が合った途端大声で叫び、男の真っ黒な全身が露になった。そして飛んだ。空き地を跳び越し、そのままどこかに去った。
 俺たちは悲鳴すら上げれず全力で走った。
 次の日俺は学校を休んだ。だが何があったか知りたくてもう一度空き地に来てしまった。
 そこには体をスッポリ隠せそうなぐらい大きな黒い布が落ちていた。

 もしかしてアレはニンジャが術で透明化して、そこに隠れていたのかもしれない。とにかくニンジャの仕業ということにして俺はそれ以上考えないようにした。だが山田はあの日から、あの男が隠れているかもしれないとよく手を叩いてきょろきょろするようになった。

 これで俺の話は終わりだ。ところで実は俺もエコーロケーション出来るんだ。今日は何かいるような気がするんだが、手を叩いていいか?

コレは何?

 オチに困ったらニンジャを出す。そういうやつです。この話は元々一駅分の話に出そうと思っていましたが、うまくオチがつけれず放置されていました。この度ニンジャを出すという強力かつナンデモありなオチが似合うのではと思い、書き直しました。

 ところでこれはフィクションですが、ニンジャは現実のどこかに潜んでいるの可能性は十分あります。手を叩いて音の反射を確かめてみませんか。まずは僕がやります。

パンッ!

「イヤーッ!」

さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます